おめざブログ

おめざブログ 2019年8月28日

以前、美術館の楽しみ方について書いた。今回は自分の好きな作品をすみずみまで鑑賞した時の文章が残っていたので、紹介しようと思う。

2017年に豊田市美術館で奈良美智の個展が開催した時に鑑賞した『M.I.A』という作品だ。20分くらいはぼーっと眺めていたと思う。家に帰ってから、自分がなぜその作品に「惹かれた」のかをまとめた。(ポストカードを撮影していますが、反射してちょっと見づらいです。スミマセン。)

 奈良美智のこの絵からは、不器用さと、そこから感じる個人的な親近感を感じる。
まずは目。猫のように左右に切り開かれような目は、間が大きく空いている。さらに顔の歪みのせいだろうか、右目の方が多少崩れてみえる。正面を向いていることはわかるが、何かを見つめようとしているのか、考えごとをしているために焦点がぼやけているかはわからない。
 上のまぶたのラインは濃く強い。瞳には淡いブルーの中に黄色やピンクなど、さまざまな色が宿っており、そのために意思の強さを感じる。
 鼻と口には幼さを感じる。目と同じように、少し間を開けて、点々と小さな穴がある鼻。その下に、本当に軽く凸でカーブを描いてまっすぐ横に赤い口が閉じられている。口はすぐには開きそうもない。何かをじっと待っているよな、耐えているような感じも受ける。
 髪と顔の輪郭の線は丸く柔らかい。強い目と口を包んでいるみたいだ。神にはいろんな色が灯っている。反射しているんだろうか。もとの髪の毛の色だろうか。わからない。
 体は、顔と同じくらいの胴体があり、反対に腕は細い。紅葉したもみじみたいな、黒を含んだ深みを持った赤色をしている。肩に力が入っていて、顔と体つきの幼さとは対照的だ。ここにも、何かに耐えているような強さを感じることができる。
 そして、この女の子を包む濃いもやのような黄緑色。色は一定してなくて、だからこそどこにも焦点を合わせられず、しかしどれだけ見つめていても飽きることはない。
 女の子の輪郭は少しだけぼやけて、この黄緑に溶けている。どこにいるのかわからない不思議な空間の中で、女の子と、黄緑色はバランスよく共存している感じを受ける。
全体として、黄緑色のもやに包まれながら、じっとこちら側を見ている女の子からは、「負けないぞ」と言っていそうな意思の強さを感じる。けれども同時に肩に力が入って口を固く結んでいるところから、力の抜き加減のわからないもろさを感じるのだ。

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