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今月のひと駅-2023年10月
篠目(山口線)
しのめ駅 山口市
大正6年開業
高原にてSLの一服
山に阻まれた仁保駅を出ると、すぐさまトンネルに入るけれども、約1キロの暗闇を抜けてもまだ上り坂の峠道は続く。森の切り通しに潜ったり、中腹から谷を見下ろしてみたりと、変化に富んだ地勢は、それこそSLの力の見せ所。一方で、途中にいくつか現れる口径の小さなトンネルでは、黒煙に包まれて機関士にとっても乗客にとっても泣き所だ。
最も長いトンネルを最後に抜けると、周囲は峠を「越えた」というより「登りきった」という観で、高原の穏やかな農村が広がる。そこはまだ山口市内だが、瀬戸内海と日本海の分水嶺は越えている。辺りにはキラキラと輝く赤茶色の石州瓦を葺いた家が多い。明らかに山陰の文化圏である。
レンガ造りの古い給水塔が建つ篠目駅には、SLやまぐち号も停まり、やはり仁保駅と並ぶ撮影名所になっている。給水塔自体は過去の遺産で、現在では補給は行われないが、かつては機関車のオアシスだったところ。作業員も多かったので、元の駅舎は長屋のように大きかったが、すでに減築されて久しい無人駅となっている。国道からは離れ、静寂ばかりが漂う中、それでもSLが到着する時間帯になると、多くの車が乗り入れてくる。給水塔の前に立つ「志乃め」と書かれた駅名標が、独特の求心力を発しているかのようだ。
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【2020(令和2)年取材】
(駅路VISION第29巻・陰陽Ⅴより抜粋)
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