今月のひと駅-2023年6月
桑川(羽越本線)
くわがわ駅 新潟県村上市
大正13年開業
夕日の駅へ鉄道でも車でも
笹川流れの最寄り駅である桑川までは、まだそれほど地形の険しさを実感することはなく、車窓からは、鄙びた小さな漁港が点在する海岸風景を楽しめる。途中の間島も越後早川も、観光化はされてなく、沿岸を走る国道345号から1本奥まった旧道沿いに、ポツンと小さな無人駅舎を構えるだけ。グルメの観点でも、もう少し活性化が画策できそうなのだが、いまだ機は熟さずといったところか。
その意味では、桑川駅の変身ぶりは大胆である。道の駅と鉄道駅を合体させた「本当の駅」としても話題になった。物産館やレストランを備える駅ビル「夕日会館」の2階からは、海岸に直接出られるデッキも架けられ、夕景の名所を特徴づける。駐車場はもちろん無料なので、パーク・アンド・ライドでの利用も可能だ。もとより、日常の通勤需要が多いはずはないけれど、観光客目当てでも、この駅を基点に車窓観覧の往復便など、企画してもよさそう。
ここでは幸いというべきか、桑川から笹川流れの区間を挟んで越後寒川までは、単線のまま。上下線のどちらからも、迫力ある絶景が楽しめる。長距離運転の「きらきらうえつ」のみならず、海路や陸路の組み合わせも踏まえて、周遊のバリエーションを増やしたいところだ。
【2013(平成25)年取材】
(駅路VISION第20巻・白新/羽越線より抜粋)
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