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今月のひと駅-2023年3月
鶴岡 (羽越本線)
つるおか駅 山形県鶴岡市
大正8年開業
致道の品格が伝わる駅に
人口では沿線途中最大の12万を擁する鶴岡市。あつみ温泉から複線の羽越本線が、市の中心駅の前後だけ単線になるとは、どうしたものだろう。両隣の駅との間には、わざわざ行き違い用の信号場があるくらいなので、いっそ複線にすれば酒田市まで含め、庄内地方の交通体系も改善できるはず。だが、今のところ、そのような計画はない。鶴岡市内の近距離輸送は、1日10本余りの気動車が行き来するだけ。特急の混雑ぶりとは対照的な、ローカル線の表情に終始する。鶴岡駅自体も市街のはずれに位置して、やはり新潟方面との長距離利用が中心とあり、乗客の少ない気動車で訪れるこの駅は、思いのほか寂しい印象を受ける。
鶴岡駅の正面には、いかにも再開発と思わせるビルが並び、裏側には工業団地が広がるばかり。庄内藩鶴ヶ岡という、伝統と格式に彩られた歴史観光の城下町には到底見えない。昭和50年代の改築になるコンクリート駅舎も、当時は駅前の複合ビルを含めて新しいまちのランドマークとなっていたが、今はそのビル群からもテナントが撤退するなど、全国の地方都市に共通の空洞化が起きている。
駅に人の賑わいがなければ、駅前も活気づかないのが道理。駅と市街地が似たような位置関係にある米沢市では、新幹線が通って駅も観光施設化し、人々をまちなかへ導く幟が並ぶなど、活発な情報発信で集客に努めている。それに比べると、鶴岡駅には大都市圏との連絡にハンディがあるとはいえ、やはりビジネスユースのドライさが勝る。存在を否定するのではないが、駅ナカのテナントが観光物産館ではなく、チェーン居酒屋というのは、その象徴だろう。前出の新発田と同様に、観光キャンペーンに合わせて駅舎の外装をマイナーチェンジしたものの、どうも中途半端な印象を免れない。
「庄内論語」を教えとする旧藩校の致道館はじめ、城下町の史跡が集まる鶴岡公園へは、駅から南へ2キロほど。歴史小説家・藤沢周平の記念館や名歌「雪の降るまちを」発祥の碑など、様々な文化を発信する観光エリアは、地元の人々による清掃も行き届き、姿勢を正して歩きたい品格に満ちる。駅からそこに行き着く間にも、蔵や洋館が混在する和洋折衷の商店街、石橋から見下ろす内川の清らかさなど、このまちには時間をかけて巡るだけの価値がある。
要は、文教都市としてのあり方を、どこまで観光に昇華すべきか。その点での地元の合意形成が、まだ十分でないように見受けられる。このことが、今回の駅の改装にも表れているといえないだろうか。駅界隈の静けさを惜しむ立場からは、再開発ビルの「再活用」も含めて、あり余る魅力の発揮で駅からの道をときめかせてもらいたい。
【2014(平成26)年取材】
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(駅路VISION第20巻・白新/羽越線より抜粋)
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