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今月のひと駅-2024年12月

折居(山陰本線)

おりい駅 島根県浜田市
大正13年開業

海だけを前に仲直り「い」

 周布を過ぎると、旅人には待ちかねた車窓が戻ってくる。ありのままの美しい海岸線をたどって走る場面は、沿線では出雲国境の田儀(たぎ)界隈以来。大田市以降の石見地方では、幾度となく接近する場面はあっても、なかなか日本海の澄んだ青さを目前には眺められなかった。時折、トンネルに視界を阻まれてやきもきするけれども、特に夕刻の岩礁を伝う景観は見事。この辺りは、山手の国道9号も「ゆうひライン」と呼ばれ、道の駅から見下ろす山陰本線越しの海岸風景は撮影名所になっていて、列車通過の時刻表も設置されている。

 そんな絶景区間の途中にあるのが、折居駅。ホームに降り立つと、名所案内の看板には、ひと言ずばり「折居海水浴場―駅前」とある。特急は通過してしまう小さな駅だけれども、令和に入って古い木造駅舎をきれいにリフォームしたカフェがオープンした。公民館でない店舗利用は、石見以西の無人駅舎では、まだ数少ない。

 駅周辺では、ハートマークだけのシンプルなプロモーションポスターが目立つ。そこに書かれたコピーが、どれだけ人気を集めるか、今後に期待をかけたいところだ。
「なかな『おりい』したい時は折居駅」

海側からの駅舎遠望
ホーム側より
リフォームされた駅舎内
なかな「おりい」(笑)

【2020(令和2)年取材】

『駅路VISION第30巻・山陰本線Ⅲ』より抜粋