今月のひと駅-2024年7月
板東(高徳線)
ばんどう駅 徳島県鳴門市
昭和2年開業
栄えある一番札所の門前
板野郡の東方にあるから板東。板野駅の旧称「板西」と対になる駅名だったわけだが、現在この一帯は板野郡ではなく、鳴門市に組み込まれている。ただ、ある意味で近隣の自治体よりも知名度が高いのは、ここが四国八十八箇所霊場の栄えある1番札所、霊山寺(りょうぜんじ)の門前町であるからだ。
駅舎はリフォームではなく、原形と全く違う改築の姿で、小さいながらも観光色の際立つものだ。ただ、ややまちの特性と合ってなく感じられる。外観からは、同じ徳島県の脇町(現・阿波市)が有名な、うだつのまち並みを想起させる。しかし、板東駅で強調されたいのは、なんといっても霊山寺の存在にしくはない。
そのはずだが、一方で構内では、霊山寺より、県の総鎮守で阿波一之宮である大麻比古神社の下車駅という案内の方が目立つ。霊山寺より、さらに北へ歩かねばならないが、正月には臨時列車が運行されるほど、駅は初詣客で賑わうという。板東駅には、誘客を促す愛称を設けたいところだが、霊山寺をとるか、阿波一之宮をとるか、あるいはどちらも。こう考えると、JRにとっても自治体にとっても、ポテンシャルに富んだ存在ということになるまいか。
【2011(平成23)年取材】
『駅路VISION第17巻・高徳/予讃線Ⅰ』より抜粋
あかつき舎MOOK「RED SHOES KITA-Qクロニクル」もよろしくお願いします。