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今月のひと駅-2023年1月
宇田郷 (山陰本線)
うたごう駅 山口県阿武郡阿武町
昭和6年開業
波が洗う造形の美学
その空中遊覧はあまりに唐突で、しかも儚い。
須佐から次の宇田郷にかけては、海岸沿いの崖の上を辿る山陰本線最後の開通区間。行く手は切り通しやトンネルが連続するので、もどかしい車窓が続く。そんな中で、いきなり視界が開け、大海原の圧倒的な迫力はもちろん、波が真下まで打ち寄せる、ほかでは体験できない瞬間が訪れる。
小さな川の河口に当たる絶壁の切れ目、深い谷の地形になっている所を、列車は芸術的な意匠のコンクリート橋でするりと渡る。そこが、沿線でも屈指の撮影名所として知られる惣郷川(そうごうがわ)橋梁。観光列車だと徐行のサービスがあるものの、ほかはみなスピードを落とさず、ほんの数秒で200メートルの跳躍を終えてしまう。シャッターチャンスを待っていた人々からは、一様にため息が漏れる。
橋梁を渡り切った後、ようやく日本海をゆったりと見晴らす車窓が広がり、眼下の集落を過ぎると国道が乗り越してきて宇田郷駅に着く。簡易な待合室のみに差し替えられた駅前は、波除けの鋼板が立ちはだかり、周りに1軒の民家もない殺風景さ。それでも、今や惣郷川橋梁にはインスタ映えスポットとして若い女性グループも目立つ。駅からのアクセスも、本格的に講じてよさそうに思える。
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(駅路VISION第30巻・山陰本線Ⅲより抜粋)
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