高次脳機能障害支援者セミナーに参加しました。

こんにちは、andoです。

先日、神奈川リハビリテーション病院の「オンライン 高次脳機能障害セミナー 就労支援編」(主催:神奈川総合リハビリテーション事業団)に参加しました。
高次脳機能障害は人によって症状がさまざまということもあり、私は特に支援が難しいと感じています。セミナーでは医療サイドからの情報を知ることができて勉強になりました。資料の参考はこちらこちら

今回使用した資料ではないですが、神奈川リハビリテーション支援センターが作成した「高次脳機能障害がある人と一緒に働くために」という資料がこちらからダウンロードできます。こちらもすごくわかりやすくて、ためになりました。ありがたい・・・。

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害は、ケガや病気によって脳に損傷を受けて起きる障害で、言葉が出てこない、注意力がなくなる、感情のコントロールができなくなる、などの症状があります。外見では判断しにくく、「見えない障害・隠れた障害」とも言われています。

脳は前頭葉・側頭葉・後頭葉・頭頂葉の4つに分かれていて、どこに損傷を受けたかによって、症状はさまざまです。上で書いた「見えない障害・隠れた障害」であることを含めて、とても難しく、理解を得られにくい障害だと思います。

芸能人だと女優の吉田日出子さん、若手男性俳優集団D-BOYS元メンバーの柳浩太郎さんなどが、高次脳機能障害であると公言されているようですね。

高次脳機能障害者が就労を目指すためのアセスメントと支援

前半のセミナーでお話されたことは、大まかに次の3つです。
①働くための準備と確認
②就労までの計画を立てる
③大切なことは客観視とポジティブ

①働くための準備と確認
退院後、「仕事ができるか?」ということに意識がいきがちですが、前準備のほうが大切だと、お話されていました。

たとえば、「生活リズムが安定している」「通勤することができる」「仕事をする体力がある」「自分のできること・苦手なことがわかる」「人間関係を円滑に保てる」「本人に仕事をする意欲がある(家族ではない)」など、実際に就労が可能かどうか。

労災保険、失業保険・傷病手当(雇用保険)、傷病手当金(健康保険)、自賠責保険、生命保険、自立支援医療、休職期間(企業によって異なる)といった所得補償や制度の確認も大切です。(ちなみに、障害年金は申請後受理されてから一年半経たないと支給されないそうです)

②就労までの計画を立てる
「医療面」「生活」「制度活用」を踏まえたうえで現状のアセスメントをして、1~3年先までのプランニングをおこないます。その際は、原因・症状、目的や時期も考えます。高次脳機能障害者本人が60歳以上である場合は、認知症と混同しやすいなどの注意も必要だそうです。

本人や家族に説明する時には、可視化できるように紙に書くなどわかりやすい情報提供が望ましいとのことです。また、金銭面や生活面の問題はソーシャルワーカーに相談するのがよいそうです。

また、先ほども少し書きましたが、高次脳機能障害は脳が損傷を受けた場所によって障害が変わってきます。身体の麻痺・言語・視野の障害は身体障害者手帳、記憶・注意機能・社会的行動上の障害があるときは精神保健福祉手帳の対象となります。

たとえば、言語障害と記憶障害がある場合は、身体障害者と精神保健福祉の、両方の手帳が対象となることがあります。失語障害の場合は、合併認定と総合認定があるそうです。(参考

大切なことは客観視とポジティブ

高次脳機能障害の方は、「以前できていたことができなくなった」と自己肯定感が低くなりがちです。また、感情のコントロールが難しかったり依存傾向がある場合、家族は「以前と性格が違う」と悩んでしまうこともあります。

本人は障害への気づきが難しいことも多く、障害を客観視できる家族支援がとても重要になってきます。本人と家族、双方がポジティブになれる支援を心掛けることが大切です。
リハビリから就労までのステップは、次の通りです。

「人の名前を忘れる」「集中力が持続しない」「些細なことでイライラする」などの症状と、失敗体験を結びつけることができない人に対しては、チェックシートを使用するなどして、症状を顕在化させて説明します。その際、本人が「腑に落ちる」かたちで説明することがポイントです。

そのほか、半年から一年の間で面談を繰り返しながら症状を語り、本人が障害を客観視し、対処方法を学んでいく心理療法(ナラティブ・アプローチ)も有効とのことです。

神奈川リハビリテーション病院 職能科の取り組み

後半は、就労へのリハビリについてお話されました。病院のリハビリテーション部には理学療法科・作業療法科・言語科・心理科・体育科・職能科・リハビリテーション工学科があるそうです。さすが、リハビリに特化された病院!めちゃくちゃ手厚いな!って感じました。

職能科は担当医(処方医)の処方下での訓練らしく、5名の就労支援員(うち1名は作業療法士)3名の社会参加支援員(うち1名は作業療法士)で、それぞれ就労と福祉サービス利用に向けた支援をおこなっているそうです。

高次脳機能障害者本人の仕事に対する「価値観」「考え方」は個別性が高く、信頼関係を築くことを最優先に、就労支援をスタートしているそうです。一人ひとりの思いを大切にするという、すごく素敵な考え方ですね。

本人は「会社に迷惑をかけるのではないか・・・」との思いから、仕事が「できるか」「できないか」の二択で考えがちになるそうですが、職能科の方がいつも助言していることは「早急に退職の結論をださないようにする」ことらしいです。理由としては、「職場復帰はリハビリの最大のモチベーション」「今後の生活・仕事をじっくり考える時間が必要」ということです。

リハビリのプログラムには「心理教育系(気づき)」「ソーシャルスキル系(ストラテジー)」「アクティビティ系(適度な活動)」のほか、「模擬職場訓練(集団訓練)」もあるそうです。注文受付から、作業、データ・売上管理、補充作業、メンバーの出退勤データ入力までやっているそうです。すごいですね。一度、見学に行ってみたいです・・・。

セミナー感想

今まで「高次脳機能障害者本人」に焦点を当てて考えてしまうことが多かったのですが、本人がより自分らしい働き方をするためには、家族や医師など周囲の人たちとの連携が大切なんだなと感じました。

印象に残ったことは、セミナー後に参加者から「高次脳機能障害者が不機嫌になったり、言うことを聞いてくれない場合はどう対応したらいいですか」という質問が出たのですが、回答が「あなた自身や、あなたの支援方法が間違っているというわけではない。繰り返し伝えるしかないと思う」だったことですね。やはり・・・みなさん苦労されているんだなと思いました。信頼関係やコミュニケーションが大切ですね。

難しい・理解されにくい障害だからこそ、本人も、家族も、支援者も、みんなで諦めずに取り組んでいくことが大切だなと、気づかされました。高次脳機能障害がもう少し、世の中に広まって、理解してくれる人が増えたらいいですね。

今回は、つっきーさんの画像を使用させていただきました。ありがとうございました!

いいなと思ったら応援しよう!