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ある日突然剣持刀也にハマった話【たった3時間で人間は狂える】

剣持刀也

剣持 刀也(けんもち とうや)は、ANYCOLOR株式会社が運営するバーチャルライバーのグループ「にじさんじ」に所属する日本のバーチャルライバー、インフルエンサーである。

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

私は、剣持刀也にたった一晩で狂わされた。時間としては3時間程度だったろうか。どれだけ狂ったかというと、その日以来空き時間すべてを彼のアーカイブ閲覧の時間に捧げ、配信はできるだけリアタイし、グッズを買い漁る生活をもう一か月送っている。人生で初めて『脳が焼ける音』を感じた。
こんな経験は人生を歩む中で何回もすることはないだろうと思い、この記事を書く経緯に至った。

それは、私自身がこの経験を忘れたくない、という思いからでもあり、あわよくばこの記事を見た誰かが剣持刀也を見るきっかけになってくれれば、という思いもある。またこの記事を見つけてくれた剣持リスナー様がいたらぜひ私にあなたの好きな配信・動画を教えてほしい。


すべての始まり

事前にお話しすると、私は完全初見だったわけではない。にじさんじ自体は見ていた方だし、剣持刀也も切り抜きや公式番組で目にすることは多かった。「ロリロリローリロリローリ」「今日は配信なし祭り」くらいのネタは知っていたし、マシュマロ斬りやリスナーとプロレスのようなやり取りをしている切り抜きも見たことがある。ではなぜ突然狂ったのか。すべての始まりはこの動画だ。

『臨界ダイバー/covered by 剣持刀也』

ある日、YouTubeを開いたら一番上にこの動画がオススメ表示されていた。2時間前に投稿されたばかりの歌ってみた動画だった。「そういや剣持さんの歌みたとか聞いたことないな~」と思い何気なしに再生してみた。

感想は.….…正直な話「まあまあかっこいいね?」くらいのものだった。剣持刀也がROF-MAOにいることも、そのROF-MAOが音楽ライブをやっていることも知っていたので、こういう路線の人なんだろうなあと、特に盛大な感情を抱くことはなかった。

ただ、コメント欄の盛り上がり方が、私の想像と大きく違った。VTuberの歌ってみたのコメントは、私が知っている中では「ここの歌い方が良い」だとか「MVの顔が良い」とか、そういう、純粋に歌とMVの感想で埋められているイメージがあった。しかし、この動画のコメント欄は「歌ってみたに込められた要素、その解釈や考察」で埋められていた。

  • 最後に出てくる数字がマリアナ海溝のチャレンジャー海淵の深さ

  • 小4の剣持刀也の前に現れたもう一人の「剣持刀也」がいる(2:23~)

  • MVのメイン色が青→黄→赤と信号のように進んでいく

  • 『僕が望んだ世界が海底にあるなら』 の"海"っていう歌詞を、"電子の海"つまりインターネットって解釈することで~

などなど….…X(Twitter)も軽く見てみたところ同じように、剣持リスナーたちが各々解釈を広げていきながら盛り上がっていた。
そこで初めて私は、このMVに込められた様々な仕掛けに気づいた。数字、色、服装、フェンスの表現・・・
そして、「これ、剣持刀也が意図して詰め込んでいるのか?」と思い始めた時、私の中でこの歌ってみた動画を、剣持刀也を見る目が大きく変わった。

さまざまなコメントの中で、特に目を引かれたものがあった。

ソロ歌ってみたが公開されるたびに 剣持の「剣持刀也像」が少しずつ明らかになっていくの最高すぎる。

@amaho-jj1tx様のコメントより

.……もしかして剣持刀也にはしっかりと確立された、明確に本人が「こうありたい」と掲げているキャラクター像があるのか?剣持刀也像とはいったいなんだ。なにせ、私は剣持刀也に対し、「ただのおもしろマシュマロ芸人ついでにロリコン」くらいにしか思っていなかったのだ。でも、もしかして、それだけじゃない側面もあるのか。
私はこの男についてもう少し知りたくなった。


少しづつ狂わされていく

とりあえず、上記のコメントが気になったため他のソロ歌ってみたを聴こうと思い、歌の再生リストを探してみた。再生リストは見つかったのだが.….…総動画数40本越え?!さすが6年選手。やっぱROF-MAOだなあ、と感じた。

ここまでで分かるかもしれないが、私は剣持刀也に対してもROF-MAOに対しても知識はそこまで深くない。ROF-MAOに対しては、なんかアイドルみたいなことをやっている集団、くらいの偏見の塊だったので、やっぱ剣持刀也もそういうキラキラした感じなんかなあ、と勝手に思った。

しかし再生リストを見てみると.….…え、43本のうちソロの動画4本しかない?!しかも投稿されたの随分最近に固まってるな?!と驚いた。
そんな驚きを抱えつつ、まあ見てみるか、と、目に入った動画を再生してみた。

『ANTI-HERO/covered by 剣持刀也』

少し、恐怖を感じた。

このあたりから、脳が興奮していく感覚がしてきていた。恐怖と興奮は共存するのか。
一体何だ、こんなにも底知れない雰囲気が漂う歌ってみたは。ただ英語の曲を歌っていてかっこいい、では済ませられない「何か」があった。私は勝手に剣持刀也の「剣持」くらいは知っている気がしていたが、「k」の部分すら知らないんじゃないか、と思わされる。ギャップだなんて軽い感想を言いたくないと思うほどの衝撃を感じたのだ。

私の見たことのある、トークが上手くてリスナーとプロレスしてて、というのはこの男のほんの一部でしかなかったのか?
だんだんと、おもしろ芸人から、得体の知れない不気味な人感を覚えるようになってきた。

このダークな曲を、教祖衣装でも軍服衣装でもなく「いつも通りの制服」で歌うの最高に剣持刀也してて良い(@user-jp3es4qq6w様)

他のライバーさんと比べたら、黒髪制服という言ってしまえば無個性なキャラデザなのに、他の誰よりも強キャラ感が滲み出てるのがエグい。(@che221B様)

配信だと割とフランクなのにずっと底知れない感じがするの好きすぎる。 どれだけ剣持刀也を知ってもそれは剣持刀也の1部だけ。
これが我らの教祖様(@user-br9de1pe2n様)

コメント欄より

私の拙い語彙よりコメント欄の皆様のほうが的確過ぎる意見を書いていたのでそのまま引用させて頂く。剣持リスナー様は表現が分かりやすくて助かる。本当にその通りなのだ。曲調に合わせたそれっぽい服を着たMVだって良かったはずなのに、通常衣装の制服でここまでの強者感。何者なんだ。

そして、コメントでちらほら見かける「教祖」という言葉が引っ掛かった。ついでに「虚空教典を読んだらさらに解釈が~」というコメントも見かけた。

虚空教典って、なに.….…?


頭を殴られたような感覚がした

「虚空教典」という単語を見た私は、すぐにググった。どうやら剣持刀也が書いたエッセイ本らしい。そんなものも出していたのか。それとざっと調べたところ、「虚空教」とは、剣持刀也が作った架空の宗教だそうだ。どういうことなんだ。

『虚空教とは何か。剣持刀也とは何者なのか。』という一文に誘われて、とりあえず試し読みで公開されている範囲を見てみることにした。

『虚空教典』

「剣持刀也はエンタメコンテンツである」

虚空教典|剣持刀也


頭を殴られたような感覚がした。

本文冒頭の第一文目。大文字で書かれたこの文。なんて男なのだろう。

そうか、剣持刀也は「エンタメコンテンツ」なんだ。私が知っていたロリコンでリスナーとプロレスをしている姿も、その真逆と感じた歌ってみたの姿も、彼のエンタメなのだ。

私は、キャラクターの世界観を強く持ち、それを突き通しているVTuberが好きだ。もちろん設定から外れた素をポロっと見せてしまったり、ありのままの自分をそのまま見せてくれるVTuberもよいと思う。それはそれで親近感や安心感が生まれるからだ。
ただ、設定や世界観を忠実に守って我々にはそれに沿ったものしか見せない、というスタイルのVTuberのほうが私は好きだ。(これは本当に一個人の好みの話である)

だから、この文は私にクリティカルヒットした。

剣持刀也は決して軽い気持ちで自分をエンタメコンテンツと言っているわけではない。
この一文の後からは、『僕は、”エンタメ”というものを深く愛している。』という語り始めとともに、自分の中でエンタメとは何か、どれだけエンタメが好きなのかを語っている。とにかく、この男はエンタメを愛しているんだ、そして自分の中のエンタメを貫こうと今までやってきていたのだ、ということをたった数ページで実感させられるくらい語られている。

そこまでエンタメを愛している人間が『自分自身がエンタメコンテンツだ』と言い切っている。すごい自信だと思う。

剣持刀也の中でのエンタメは、多少の「演出」を含む娯楽であるとされている。そしてこの本では『VTuberの剣持刀也というコンテンツには演出が施されており、あなたが捉えている姿は実像ではない』と語っている。

剣持刀也のデビューは2018年。この本の出版は2023年。5年間活動をしてきた人間があなたたちに見せている姿には全て演出を含んでいると、エンタメで塗り固めていると、言い切れるのだ。
つまり素を見せようとしたことがない、活動してきた中で思いっきり素を見せてしまったこともない、すべて「VTuberの剣持刀也」というキャラクターを突き通した姿だと言っている。

.….…すごい男だ。

完全に剣持刀也の沼へと

試し読みの部分を終え呆然としていた私だったが、とりあえずもっとこの男のコンテンツに触れたいと思い、YouTubeを開き直した。
YouTubeでは、先ほどのANTI-HEROを再生し終えたままになっており、関連動画にてまた違うソロ歌みたがオススメ表示されていた。

すでにこの時点で興奮が止まらぬ状態で、サムネだけで動悸を感じていたが、そのまま再生してみることにした。

『セカイ再信仰特区/covered by 剣持刀也』

気づけば奇声を上げていた。

いや、ほんとに、なに???????

実家へ帰省中で本当に良かったと思う。周りに何もない一軒家であることにこれほど感謝したことはない。

屋上のフェンスからこちらを見下ろしている表情や、地球をサッカーボールのように扱う部分がANTI-HEROで感じた得体のしれない人感を助長させている。
そのくせ、ラスサビ前で雑に扱っていた地球を愛おしそうに抱きしめ、『もうどんな音が聞こえても嬉しいのさ』と。リスナーとプロレスのようなやり取りをしているのは知っていたからこそ、にわかでもここの歌詞・演出は刺さった。

サビで何度も出てくる『最高だ』という歌詞の歌い方から本当にこの世界を愛している、心から楽しんでいると、ひしひしと伝わってくる。また、『誰も邪魔しないでね』という部分が虚空教典を読んだ後だと尚更刺さり、「剣持刀也というコンテンツ」を邪魔しないでね、と訴えかけているかのように感じた。(ただのオタクの妄言と思ってくれて構わない)

そしてラスサビ。

屋上から飛び降りる剣持刀也。その瞬間今までモノクロだったのにパッと色付く世界。楽しそうな剣持刀也の表情。そしてこの歌一番の力強い声で『この素晴らしい世界が最高なんだから、誰も邪魔しないでね、誰も触らないでよ』と。そのあと屋上から飛び降りたくせに平然と着地をして、まるでそれも演出だったかのような笑みで歌い終える。

ああ、これが剣持刀也が思う「VTuberの剣持刀也」なんだ。これが、あなたの表現したいものなんだ。そうか、最高だ、なんて最高なのだろう。

表現したいもの、こうありたいという意思の塊をぶつけられて、にわかでも「どうかあなたの思う”剣持刀也”であり続けてほしい、思う存分好きなように”剣持刀也”をしてほしい」と思った。

トドメを刺される

さて、剣持刀也がとてもとても魅力にあふれたVTuberだということは分かった。こうなると配信も見てみたい、と思うわけだ。なにしろ、剣持刀也の配信をちゃんと見たことが私は一度もない。いったいどんな感じなのだろう、と気になった。
しかし、さすがに6年選手。アーカイブは膨大だ。なにから見ればいいかな~だれかオススメ教えてくれないかな~と考えつつ一旦落ち着こう、まずは本人のXでもフォローしようかなとXを開いた。

Xのオススメ欄は様々な人による臨界ダイバーの考察ポストで埋まっていた。数件いいねしただけでTLがすぐ埋まったので、Xはすごいな~と思いつつ、なんとなく目に付いた考察ポストの方のプロフィールに飛んでみた。

単純にそのポストの語彙力をいいなと思い、臨界ダイバーについての考察ポストをほかにも追加で見てみたいな~と思ったからだ。そしたらその方の固定ポストにてこんなものを発見した。

私が今まさに求めていたものじゃないか!!!

天才、助かる。新参者にはこういうものが一番効く。
ということで、短時間かつ、名前を知っているゲームだったのでこの中からつぐのひ実況を見てみることにした。

『ホラゲー?かかってこいよ【つぐのひ 昭和からの呼び声】』

……いやめっちゃ面白いな。

実は、私は配信のアーカイブを見ることがあまり得意ではない。配信ならではのまったりとしたテンポ感が、リアタイでならまだしもアーカイブとなると途中で飽きてしまい、最後まで見れないことがほとんどだった。

なので、まあ雰囲気だけ分かればいいかな〜と、全て見るつもりはまったく無かった。

でも結果としては、全て見れてしまった。スマホを弄りながらとかでもなく、単純に配信だけを見れた。1時間半という時間をそれだけに集中することが出来たのだ。

なぜ集中して見れたのかと言うと、とにかくトークが濃くて面白いのだ。先程の紹介ポストにもある通り「コイツは一体いつ黙るんだ?」と思う程のマシンガントーク。一歩一歩進む度に得られた情報量に対して倍のトークで返している。語彙が豊富で出てくる例えも面白くて……全然退屈しない。

赤くなってしまったゲーム背景に対して「赤を今すぐクロマキーで抜いてキラッキラにしてやってもいいんだからな」と謎の脅しをし、本当にクロマキーで抜こうとするところはとても好きだった。遊び心がいい。

ゲームを単純にも楽しみつつ、そういう別の遊び方もしていて、ツッコミも絶えず、全てが面白かった。

始めの方に自分とファミマコラボのコーヒー牛乳を奇声を上げながらがぶ飲みし、溺れたところも困惑はしたが面白すぎて声を出して笑った。

なるほど、これは確かに存在自体がエンタメコンテンツだ。虚空教典に書かれていた通り楽しませようとする側面しか見せてない。

脳を焼かれた音を感じながら、私はもうこの沼から抜け出せないのだろうな、と痛感した。


以上が、私が剣持刀也に脳を焼かれた3時間の流れである。
これ以来、剣持刀也に狂わされた生活を送っているがそれはそれは楽しい。剣持刀也のおかげで人生がとても楽しいと心から思う。

これを読んだ誰かが剣持刀也に少しでも興味を持って頂けることを願って。

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