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シリアルアントレプレナー×元PRのプロフェッショナルが導く、創業1年目スタートアップが失敗しないエコシステムを生み出す

デジタルとPRの力でブランドの新しい価値や魅力を支援している「株式会社OKPR」創業者の漆畑慶将さん。自身が企業から事業売却に至るまでの経験を踏まえて、創業期の企業が嵌まりやすい落とし穴を回避して、事業成長を支援する「スタートアップハンズオン合同会社」を設立。自身の経験だけではなく、漆畑さんがこれまでに多くのスタートアップ企業をPRの側面から支援し、知名度の向上に寄与してきた経験もこの新会社を通して提供しています。今回はその「スタートアップハンズオン合同会社」についてやこれからのメディアに求める取り組み、スタートアップ企業のパートナーとして目指しているものを伺いました。

企業の価値を再定義するPRのチカラ

——— まず、ご経歴とスタートアップハンズオンを立ち上げる経緯について伺ってよろしいですか。

漆畑さん:出身は兵庫県で、学生時代から個人事業主としてWeb制作やメディアの運営を行ってきました。元々は小学校6年生の頃に母が自治会長をやっていたこともあり自治会の会報誌をPCで作るお手伝いをしていたことがきっかけで、パソコンの扱いを覚えました。その後は近く商店街のお店屋さんのホームページを制作したり、そこから派生して高校時代には当時月間PVが4000万ほどあるメディアを運営していたりしていました。その後、大学時代には東京ディズニーランドやスターバックスを始めとする接客業のアルバイトを経験していたこともあります。

その後は在京テレビ局や上場直前期のベンチャー企業にも勤めましたが、退職して2016年に株式会社OKPRを起業したのが起業家人生の始まりです。メディアを作る側も経験しましたし、ベンチャー企業では広報をやっていたこともありメディア側に伝える側も経験し、メディアに関する双方に身を置いていたキャリアでしたので、そこにビジネスモデルを感じてOKPRとして創業しました。このOKPRも2020年2月にM&Aをされて株式会社VOYAGE GROUP(現 : 株式会社CARTA HOLDINGS)の傘下になりました。

現在は、東京都などのアクセラレータプログラムでメンターをしたり、ピッチコンテストの審査員を務めたり、他にもエンジェル投資家としての活動や、スタートアップのラジオ番組でパーソナリティーもやったりしています。

起業家ランチ会開催の様子

このスタートアップハンズオンを立ち上げたきっかけは、メンターや審査員をやっていく中で気付いたのは、スタートアップ企業が嵌まりやすい落とし穴が結構似たようなところにあるなというところです。ある意味、同じようなジャンルや部分でみんな陥るんだなと改めて感じました。それを未然に防ぐためには、やはりその道を通ったことのある経験者に聞くこと。名だたる有名企業を輩出しているシリコンバレーには、まさにこのスタートアップエコシステムが高度化しているため、起業がしやすく、成功確率をあげることができています。日本はまだまだエリアごとにヒト・モノ・カネ・情報の格差があるなと、実際に様々な地方へ赴き、スタートアップ事情を調べていく中で実感したことです。私はこのエコシステム作りに使命を感じたことで、スタートアップハンズオンが誕生しました。

審査員の様子

スタートアップが陥りやすい失敗から道筋を導く

——— スタートアップ企業が動き出すには、色々な落とし穴があると仰ってましたが、どのように課題を解決し立ち直らせているのですか。

漆畑さん:まずスタートアップ企業のサイクルは早いところです。最初に創業してからの1年間を上手く乗り越えられるかどうかで挫折することが多いです。本当は自社に合ったサイクルとして回せば良いのですが、迷走してしまったりで挫折する。

あくまで例に過ぎませんが、3つほど注意すべきポイントがあります。まず一つ目は、人の面です。起業することを純粋にサポートしてくれる方もいれば、口の上手い人に騙され、意図しない方向へ事業が向かってしまうこともあります。二つ目にお金の面。黒字倒産と言われるリスクを知ることです。事業を大きくすることだけに気を取られてしまうと、使うべきお金と入ってくるお金をコントロールできなくなるケースがあります。三つ目に
精神面
。起業することでアドレナリンが毎日出すぎて高ぶる気持ちを落ち着かせることです。自社や自身に起きている物事をちゃんと見据え、アクセルを踏み込むか否かを冷静に思考できるはずです。

このような部分に寄り添い、アクセルを踏むフェーズに来れば、次のステップをまた支援する。常にヒト・モノ・カネ・情報・精神の5つのバランスを取りながら、ガシガシと前に向けて進んでいく必要があります。

これらの課題を解決するには、必ずしも自分で全部をこなそうとする必要はないんです。自分の弱い部分を理解して、適材適所で頼れる人を知っているという引き出しを持つことが大事です。いわゆるマラソン型の自分で最後まで走り切る経営スタイルから、駅伝型のバトンを繋いでゴールする形での経営スタイルに時代は変わって来ています。もちろん自分でき、ちゃんと前提知識を持っておきながら、難しい部分はプロに頼める。そういう環境を作っておくことがさらなる飛躍へのポイントになると思います。

——— 漆畑さん自身も起業経験がありますが、そういう構想や発想はご自身の原体験から来ているのでしょうか。

漆畑さん:もちろんです。経歴だけを見ると「成功者」みたいなイメージで思われることもあるかと思いますが、その裏にはたくさんの失敗や経験があります。起業してすぐに悪い人に騙されてしまったり、お金を持ち逃げされてしまったり…などなど。さらにストレスで暴飲暴食に走り、3ヶ月で10kg太ったりなど。たまたま頼る人がいたから、その当時は助けられたなと、いま振り返ると思いますね。改めてヒト・モノ・カネ・情報・精神が良いサイクルで回るようにしていく必要があるなと思いますし、ここの格差を日本国内では無くしていく必要がありますね。

専門性よりも親しみやすさをアピールするべき

——— スタートアップハンズオンを立ち上げて、漆畑さんの手応えはありますか。

漆畑さん:まずまずですね。まだまだ人によっては「スタートアップは多産多死」と言う方もいらっしゃいますが、そういう概念を無くしたい。そして成功率をもっと上げたい。全ての企業に言えることですが、自分たちの事業領域を既存の中で決めて社外に発信することがほとんどですが、これも落とし穴に嵌っているなと。1つの側面で見ると1個のカテゴリーではありますけど、多面的に見ると実は違う属性に振り分けられていることもあります。専門分野、難しい領域だから凄いのではなく、もっと簡単に誰にでも説明して理解できるところまで、その事業の本質を見出してあげることが重要です。

これはカタカナ語で説明しがちみたいなところに似ていて、その言葉、日本語で表現すれば誰でも分かりやすいはずなのに、みんながカタカナ語で話す。次のカンファレンスのアジェンダをレジュメに落としてみたいな。会合の議題をメモに書いて、といえば良いだけなのに(笑)。

——— 今後はどのような形でスタートアップ支援を強化舵取りをしていくことをお考えですか。

漆畑さん:強化していきたいのは、より個社の意向に沿うようなサポートをしていきたい部分もありますが、もっと大きな力で支援の形を広げていきたいと考えています。個別課題の部分に強い焦点を当てると、結局は自分が変えていきたい「日本全体のエコシステム」からは少し遠くなってしまうな、というところと、木を見て森を見ずみたいなことになってしまいかねないからです。ランチェスター戦略のような差別化も必要ではありますが、ダイナミズムやインパクト性も重要ですからね。

まずはエリア単位で活動を推進し、スタートアップ支援の座組として広げていきたいと思います。さらにテレビ局やラジオ局、新聞社やメディアなどと組んで、共にスタートアップを支援するエコシステムを形成していきたいとも思っています。たくさんの人を巻き込みながら進めていきたいですね。

メディアを巻き込んだイベント会場

情報発信したい側と発信する側のミスマッチが日本の課題

——— そのメディアと組んでスタートアップを支援するエコシステムを構築する、という中長期的な構想・イメージをもう少し具体的に伺っていいですか。

漆畑さん:テレビやネット記事等、あらゆるメディアと組むことで企業は認知拡大を促進させることができます。それは今も昔も変わりません。さらに、SNSは拡散・即効性がありますが、情報の発信力、信頼性ではまだまだテレビ等のメディアの力も大きいところがあります。

その中で最近強く感じているのは、情報を出したい企業側と、取り上げるメディア側で上手くマッチングが出来ていないということです。時代の流れと共に双方の取り巻く要因は変化していますが、マッチングやコミュニケーションの手段そのものが変化していないことに誰も気付いていない。外部から仲介して、条件を擦り合わせたり、補足してあげる必要があるからです。これはD2Cの流れが促進され、よりダイレクトに人々が繋がろうとしている反対側で、仲介者が必要なビジネス領域が拡大しているところにも代表されることだと思います。例えば、転職市場や婚活市場などのエージェントと呼ばれる人たちがいる領域などもそうですが、家を借りるときも近いのかなと思います。多くの人が借りたい理想の家は「安くて、良い物件」なはずですが、なかなか存在しません。背伸びするのではなく、現状を開示した上で、理想と現実をチューニングしてあげる仲介者が必要です。ここの部分って色々な業界でも通用する現象だと思い、このあたりを上手く改革していこうかなという感じです。ちょっとざっくりとしすぎかもしれませんが。

自分の会社を持つことが当たり前になれば日本は世界と闘える

——— 漆畑さんの中でスタートアップハンズオンが目指していく世界観とか、ミッション、実現していきたい世界というものはどのようなものなのか最後に伺ってもよろしいですか。

漆畑さん:スタートアップ企業がチャレンジしている以上、それがきちんと報われる社会にしていきたいというのが一つです。日本の人口はこれから減少していく方向だと言われていています。そのため、今までのような高度経済成長時代と同じようなビジネス構造で進めていてはダメで、新しい産業をやっていかないと日本の競争力はどんどん下がっていきます。1990年代の全世界の企業の時価総額ランキングではほとんどが日本企業だったのに、近年ではベスト40にようやく入るぐらいまでになってしまいました。そういった意味で、世界から見ると日本のイノベーションはまだまだこれからなので、そこをもっと加速していきたいところです。

それと日本をもっと誇れる国にしていきたいという想いもあります。世界に向けた競争力向上という観点では起業のハードルが心理的にも社会的にも下がって、当たり前になっていくべきです。そのためには私達のようなシリアルアントレプレナーを増やし、複数回起業することが当たり前の世の中になるといいなと考えます。

最近だと、国としても新しい施策に取り組みはじめていて、経済産業省では「大企業人材等新規事業創造支援事業」という大手企業に勤めたままで起業できますという制度は、ハードルが取り払われる仕組みですし、少しずつ動きはじめているなと感じます。もっともっとこのような動きが加速されることを願います。もちろん起業後のサポートも大切です。

私が思うに、人間の振れ幅って楽しいことや辛いことを経験することで大きくなっていくと考えています。自分自身の体験として紆余曲折ありましたが、心から起業してよかったなと思っているのでぜひ多くの人にも経験してもらいたいですね。

——— 本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。今後もAND ON SHINAGAWAを一緒に盛り上げてください!

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