おはなし茶屋 第6話 桜色のひなあられ
上巳の節句という言葉が好き。
上巳の節句は3月3日、おひなさまのことだけど、おひなさまとかひなまつりだと女の子のお祭りといった響きだけれども、上巳の節句となるといつまでも祝っていい感じがする。
上巳の節句のお菓子といえばみなさんは何を思い浮かべるだろうか?
ひなあられ、菱餅、金平糖……
私は真っ先にひなあられを思い浮かべる。いつもだってスーパーにもどこにでもたくさんあられは売っているのに、この時期のあられはなぜかキラキラして見えた。
優しい印象の桃色、やわらかな全てを包み込むような白に似た生成、そして自然から作られた緑色。特別なあられのように見えて毎年この季節になる度に母親に買ってほしいとねだったのが懐かしい。根比べに負けた母親に買ってもらったひなあられはこれといって特段変わった味はせず、私としては普通のあられの方がおいしいまであった。
けれど、その見た目に惹かれていた私は見ているだけで嬉しくて、せっかく買ってもらったひなあられをしけらせて怒られたのもいい思い出だ。
普段あまり桃色、ピンクのような女の人を象徴するような色は選ばない。けれど、こうやって昔の自分を思い出していると、ピンクが好きなんだなと感じるのである。同じピンクにもいろいろ種類があって、はっきりと存在を発揮してくるピンク、梅の花のような少し濃いめのピンク、赤ちゃんの肌のようなピンク。
私はその中で自然のピンクが好きだ。もう少ししたら日本に春を告げてくれる桜のような。淡いフワフワとした軽いピンク色。そうだな、お菓子でいうと……
どうやら、私は小さい頃から何も変わっていないようだ。
お菓子でいうとひなあられの桃色なのだから。
今月のお話はこれで。ではまた来月🌸