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1/100人のコーラス隊

振り返ればきりがないし、きっと全てを書き尽くせないと思っていたけれど、このままただ記憶が薄れていくには余りにも勿体ないと思って結局だらだらと書きネットの海に垂れ流してみることにした。

読ませる文ではないと思う。しかも長い。こんなに自分のことを書くのは珍しいので恥ずかしくなって突然消すかもしれない。うっかり全部読んでしまった人はこっそりでいいから後で教えてほしい。笑

そしてこれはあくまでも私からの目線なので、これが全てではないしこれが正解でもない。

というわけで、ここからは「音楽堂のピクニック 小西遼×100人のコーラス隊×象眠舎」コーラス出演者募集の投稿を見かけて飛びついた私の備忘録のようなもの。

https://metapicnic.space/ongakudo2024/chorus/
きっかけはこの募集だった。こんな夢みたいな企画あるの!と勢いよく日程と平日練習の到着見込み時間を調べて即応募していた。とにかく通ってほしくて、パート希望は複数チェックし、音楽経歴に大してできないT.Saxまで書いた。お願いだから通って。


しばらくして、出演決定のメールが届く。
しかも応募者全員と。平和!!
嬉しくてその時美術館にいたのにずっとソワソワしてしまった。迷惑。


そして楽譜と参考音源が届く。SNSで総譜が24ページになったと書かれていた。この辺の小西さんあまりにも忙しそうだし夜中にデータクラッシュしたとか呟かれてるし普通に心配してた。お願いだから健康でいてください……。
でも小西さんの書いた楽譜が見られるってだけで楽しすぎて興奮状態で開いた。

わはははは!すご!難しそう!すごい!

どうも私はすごすぎるものを見ると笑いが止まらなくなる癖がある。すごいライブでずっと笑ってしまったりする。迷惑。
一旦落ち着いてメールの文を読もうとしたけれど、全然落ち着かなかったので震えながら10回くらい読み返した。興奮しすぎである。



そしてそこで知ったのが詩人・榎本櫻湖さんの存在と、もう会うことはできない彼女への想いだった。
すごく想いの強い作品を託されていると思った。まだ会ったこともない、見知らぬ100人に。
知りたくなった。どんな人なのか。この、全然読めない言葉たちはどこから生み出されたのか。他に何を書いてきたのか。

密着したYouTubeを見た。以前象眠舎と榎本さんが共演した時の情報を探した。更にはその時にピアノを弾いていた魚返さんの演奏を聴きに行った。その前から気になってたのもあったけど、この曲が決定打になった。この曲を演奏するなんてことはないのに、どんな音で弾く人と一緒に作ったのか知りたかった。


榎本櫻湖「Röntgen、それは沈める植木鉢」



9月16日。ついにコーラス隊が集まった。
静けさの中でスタッフの挨拶から始まる。
小西さん、みんなを見渡した一言目が「来ちゃいましたね……」なのは笑った。

ラジオ体操、そして声出し。
ちょっと衝撃を受けた。とりあえず人数さえ集めればこんな綺麗な声になるんだっけ?違うよね?これが普通でいいんだっけ?みんな上手くない??

明らかに合唱やってきてる人の声もするのは予想してたけど、さすがあの募集記事から引き寄せられた人たち……。学生以来の合唱なので私の感覚が違うだけかもとは思いつつ、皆さんの声に度々にやにやした。

ラジオ体操。今見ると知ってる背中がたくさんで嬉しい。



練習は全て小西さんの主導で進む。
書き変わる譜面。表現の仕方。リズムの取り方。作曲した本人が教えてくれる贅沢さよ……。丁寧に一つずつさらい、譜面が音になり、声になり、曲の姿が見えてくる感動。

ここは増4度だから、とか、この響きが好きで無限に聴ける、とか、スケールの話とか純正律とか相対音感とかの話がぽんぽん出てくる。面白い。楽しすぎる。
「ここのぶつかる感覚覚えて」一音ずつパート毎に声に出す。リズムの難しい所を手拍子と足も使って確認していく。

やると決めたからには最善の一手を。
周辺視野を持って。分からなければ聞いて、不安なまま進むのはやめよう。
音楽を進める時の考え方、尊敬する。話の内容が全部面白い。やっぱり楽しすぎる。

経験も年代もバラバラな100人に対して、妥協せず全員に伝わるように話してくれる。一方で厳しい空気は全くなく、否定する言葉が一切出てこない。参加者から意見があると必ず「ありがとう」と返す。すごい。簡単なようでなかなかできることではない。無理矢理ではないのに、全員が引っ張り上げられていく感覚。付いてこられない人を作らない。みんなで上昇しようとする。

だから小西さんの音楽に惹かれるのか。
だからあの多幸感溢れる音になっていたのか。
音楽性と人間性は別物だという意見もあるけれど、音を聴けば考えも気持ちも全てバレてしまう気がしている。全く偉そうに言えるような立場の人じゃないけれど。

練習は進む。
楽譜の音が曲になっていく過程に参加できる感動。

募集段階で「個人練習もしていただきます」と書かれていたので、もちろんそのつもりで、よしやるかと意気込む。

……遠い。あまりにも遠い。
ラッキーなことに楽譜は読める。ピアノも多少弾ける。音楽をやりたくてやりたくて仕方ないと幼い頃からずっと思っていたけれど、曲の難しさだけではない圧倒的な遠さを感じた。
海の向こう。私がいるのは砂浜。
いいな。潜りたい、私も。

いや、気圧されてる暇はない。やると決めたからにはやるしかない。何度も自分に言い聞かせる。食らいつけ。掴め。


最後の2回の練習で楽器隊が加わる。曲の全体像が見えてくる。衣装を纏う。カラフルでぱっと華やかさが増す。小西さんが楽器を吹いた瞬間、明らかに空気が変わる。みんな聴き入っちゃった。ちょっと面白かった。
前日は実際にホールで練習。響く。いいホールだな。

練習期間はずっと背中を見ていたコーラス隊の人たち。ホールの行き来ですれ違うと「お疲れさまです」と声を掛け合う。初日の静けさが嘘のような、ほわっと柔らかくなった空気。

初めて声で合わせた時に感じた美しさ。全然合わなかった部分が次の練習日では合う。会話しなくても共感しあってるのが分かる。練習日が空いた期間に進化している。やっぱり只者じゃなかった。話してみたらプロの方も音大卒の方もシンガーの方もゴロゴロいたけど、まずあの募集ページに辿り着いていて、応募して、集まった人たち。ここに来ただけで行動を起こした人なんだから、みたいなことを誰かが言っていた。生半可ではない気持ちにお互いが触れて、混ざり合って熱を持った感触。
来られてよかった。

当然のように音楽の好みが似ていて、素敵な感性を持っていて、ちょっと面白かったりもして。
(唐突なカラオケクイズでマツケンサンバとか言った人誰ですか、全然正解する気ないしめっちゃ笑った)
始まる前から一期一会と分かっていたけれど、本番を終えたら集まれないのが寂しい。
さすがに全員とはお話できなかったけれど、構ってくれた方ありがとう。最高な人たちだな。


本番は快晴。10月に入ってから雨続きで、こんなに青い空を久々に見た。

円陣を組むには多すぎて、みんなで歌いながらラジオ体操をした。所々で笑いがこぼれた。穏やか。
いつものホワイエに陽の光が入り込んで美しかった。

本番直前にリハーサル室で声出し。初めてみんなの顔を見ながら歌うのは新鮮だった。
(中心になって進めてくれた方、直接お話できていませんがありがとうございました!SNSでご活躍を拝見しました。)

象眠舎の演奏を楽屋のスピーカーで聴きながら待つ。そわそわ。

本番がくる。
当然なんだけどここに立つために練習してきたわけで、でも歌ってしまったら最後なわけで。
ステージにいられて本当に幸せだけど、分身して客席でも聴いてみたかった。ステージでもビリビリしたからきっとすごいエネルギーだっただろうな。

楽器隊の音。すごい。誰かが名付けていた「禁ずるシスターズ」、本番すごく良かった。心に響いた。「αντιφωνα II」の最後は音源を聴いた時に心が洗われるようで、初めて声で聴いた時には神々しくて天に召されるかと思った。
曼珠沙華が好きな花になった。小西さんが「綺麗な旋律書いちゃった」と仰っていた部分、私も歌いたい所No.1だった。自分のパートじゃないけど。
「あのうたがきこえる」元々好きなのに更に大事な曲になった。歌詞が気持ちを代弁しすぎている。


観客の中には榎本櫻湖さんに近しい人も来ていたと聞いた。言葉を操る人たちが綴る感想の表現に感銘した。触発されてこんなものを書いてしまった。

心に刺さるような感性の鋭さは、死の隣にあるのかもしれないと時々思う。

春の陽の煌めきの中で出会った人を思い出した。
その一日が最初で最後の日になってしまった。

あの日見上げた十五夜の月は、いつの間にか次の満月に向かって丸くなっていくところだった。


練習日に発案されてから驚きの速さで打ち上げ幹事チームが立ち上がり、出欠を集計しお礼のサプライズまで準備され、この人数がお店に向かった。すごすぎる。なんて人たちなんだ。

私を知ってる人は簡単に想像するだろうが、案の定賑やかに打ち上がってしまいずっと笑っていた。絶対うるさかった。迷惑。すいません。ありがとう。超楽しかった。最高な人たちだった。すごく刺激をもらった。

歌いながら泣いてしまうかもと思っていたけれど、ステージの上なら大丈夫だった。全部声にしちゃえばいい。
家に着いた途端どばどば泣いた。

自分でもびっくりするほど、しばらく動けなくなった。
余韻と呼ぶには持て余す程どっしりとしていて、余韻なのか喪失感なのか寂しさなのか分からなかった。
でも私だけじゃなさそうで、ちょっと安心した。

楽しかったな。幸せだった。


最後に色んな人への感謝をつらつら書こうとしたがやめた。どこか別で。
でも感謝だらけ。ありがとうございました。


また次回があれば参加できますように!
お願い!どうしても行きたい!!


急勾配で大変だったけど、もはや愛しの坂
音楽堂のホール、美しい響きだった
この写真とても好き


さて、この辺で。
うっかりここまで読んでしまった方すみません、お付き合いありがとうございました。


※練習時の写真はイベント製作スタッフさんからSNS公開可といただいたものです。(ありがとうございます!)

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