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「無理ゲー社会」橘 玲 を読んだ


「才能ある者にとってはユートピア、それ以外にとってはディストピア」


「才能」は努力を継続した結果?それとも遺伝?
この問いをずっと持ち続けていた。

橘玲氏の著書は、何冊か読んでいる。
この本を手に取ったきっかけは、ずいぶん前に読んだ「亜玖夢博士の経済入門」だった。
大衆には、あえて寄り添わない。身も蓋もなくバッサリ切り捨てる。徹底的にクールで、偽善的でないのがいい。

筆者は

「最近の若者は人生を無理ゲーのようにとらえている」

という。

ここのところ「親ガチャ」というワードが聞かれるようになった。現実の厳しさはわかってはいるものの、人生が「親」だけで決まってしまうとは信じたくないのが人間というもの。
 日本人は判官びいきが大好きだ。どんな生い立ちでも、がんばれば必ず報われる、社会的に弱い立場であっても努力次第で一発逆転も可能だという希望に支えられる。しかし、この本を読み進めるうちに、そのほのかな望みは、あっけなく打ち砕かれることになる。

この本では

「上級国民」

=「自分らしく生きるという特権を享受(きょうじゅ)できる人たち」

「下級国民」

=「自分らしく生きるべきだという社会からの強い圧力を受けながら、そうできない人たち」


と定義される。その分かれ道となるのは、さまざまな要素があるというが

・全ては遺伝的要素が大きい。貧困、階層、格差の連鎖は教育によって解消されるとはいえ、教育の機会を得られて階層の移動ができる人間はほんの一握り。

筆者は、これが「現実」だという。


無差別大量殺人犯

・社会の中で見えづらい生きづらさを抱えている人

の心理メカニズムについても書かれている。社会の中で見えづらい生きづらさを抱えた彼らはなぜそのような困った行動をするのか、どうしてそうなってしまうのか。階層を移動するのに必要な教育を、なぜ受けられなかったのか。すべて生まれであり遺伝、つまり「親ガチャ」なのか。

正直、これでは救われないと感じる箇所もある。
しかしネガティヴ要因を正しく理解し、解消策につなげることは、誰もが幸福で満たされた生活を追求することに繋がるはずだ。

だが、さらにあとがきまで読み進めると、アッパーカットを食らうことになる。

あなたが今の生活に満足しているとしたら素晴らしいことだが、その幸運は自分らしく生きる特権を奪われた人たちの、犠牲の上に成り立っているのだ。


読後に後味の悪さが残る。それでも、これを知っていて意識しているか、そうでないかで世間を見る目が変わってくる。

問題行動をする「困った人」は「自分らしく生きる特権を奪われた」「困っている人」なのだ。


「暗闇でしか見えぬものがある。暗闇でしか聞こえぬ音がある」

NHK 「カムカムエヴリバディ」

朝ドラで印象的だったセリフ。
まさに「闇」でしか見えてこない、聞こえてこない姿や声がある。インターネットは、これまで異なる階層にいる人たちの生き様を可視化した。「闇」や「暗部」を正しく理解し、考え続けることで、未来の何かが変わると信じたい。



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