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凍土の共和国――北朝鮮幻滅紀行 金元祚

元朝鮮総連幹部が“活動家家族"の一員として“帰国同胞"を訪ねてみたら、そこには思いもよらない硬直した社会が展開されていた。金日成・正日父子の指導下にある民衆がいかに心貧しく抑圧されているか、自己の体験をもとに民衆自身が万感の思いを込めて描く痛根の紀行。

  1982年秋
 40日間 共和国に滞在した、著者 在日朝鮮人の日記。

総連(在日朝鮮人総合会)


 共和国にいる家族に訪問するのに持っていくお土産リスト
1,作業服、革および布製のジャンパー、純毛のセーター、下着類
2,各種の運動靴
3,万年筆、ボールペン、シャープペンシル、鉛筆、大学ノート、小・中学生用ノート、便箋などの事務・学用品
4,鹿茸(漢方薬)、肝臓薬、抗生物質、胃薬、ビタミンその他薬品
5,サッカリン(調味料、薬用の双方を兼ねる)
6,石鹸、タオル、女性用ネッカチーフ
7,時計(セイコーの自動巻き、防水)、安全カミソリの刃
8,自転車

 これらの品物はいずれも共和国では貨幣の役割を果たす、その内、特に女性用ネッカチーフと時計、安全カミソリの刃は重宝される。
 ヤミで飛ぶように売れるからだ。
 これを売ることで、帰国同胞はかれらの生活に不可欠な消費物を手に入れることができるからだ。

 

闇ルート
 


 日本で買った
 30万円のネッカチーフ
 75万円の時計
 合計105万円

 共和国のヤミ値で日本円に換算すれば

 1885万円になる。

 
 そしてヤミ屋、仲介人は在朝中国人が多い。
 大物のヤミ屋、仲介人のほとんどは中国人で大いに儲かっている。

お辞儀事業


 権威主義的な共和国の体質をむき出しにして、在日同胞を``‘首領さま``である金日成主席を頂点とする官僚たちに無条件拝跪させるための政治的ショー。

 

学習の国


 在日の方たちの共和国は「学習の国」だ。
全人民が一丸となって学んでいると宣伝されている「主体の国」だ。
それゆえ「学習がなければ」などという考え方は許されない。 
 実際在日の方たちが共和国を訪問されている誰一人、学習を好んでいなかったにもかかわらず「嫌だ」と共和国指導員に言えなかった。
「頭が痛い」「腹が痛い」と訴えても、薬を飲まされるか、注射を打たれるかして、結局‘‘苦行修業‘‘に連れいていかれるからだ。

 

朝鮮人民軍


 人民軍が南朝鮮を占領した時に働いた少なくない残虐行為が耳に入るらしい。
‘‘口コミ情報‘‘によると、米軍の仁川上陸にてあわてた人民軍は、北へ逃走する前に「反動分子」狩りを強行、多くの無辜の人民大衆を殺害したり、または駐屯地の村の青年たちに逃亡の水先案内人を務めさせて後、彼らを生かしておけば逃走コースが発見されるという口実の下に、全員銃殺したという。
 こういう類の話は数え上げればきりがない。

 

国際親善展覧館(お中元センター)


 
 国際親善展覧館とは、偉大なる首領さまの高い国際的権威と、共和国の人民と世界の革命的人民の間に結ばれた親善と団結を示すための殿堂。

 要するに金日成あてに送られた品物が、一階から6階まである
数十の部屋、広間に展示されている、お中元センターである。

 中には日本参議院議員、宇都宮徳間氏。同議員は、精巧に作られた黒檀製法隆寺五重の塔を金日成にプレゼントしている。
 衆議院の久野忠治議員は、薬師寺東塔を送っている。
 他にも日本の政党、社会団体、主体思想研究会、金日成主義研究会など団体、個人名で送られた贈り物が置いてある。

 

主体思想塔


 その塔の基礎部分にはめ込まれた石材に、日本人士のものがある。
 この石材は「主体思想」に共鳴し、金日成主席を尊敬し、あがめ奉っている世界格国の指導者や人民大衆が共和国に送ったものである。
 世界格国の政治家や文化人にならんで
「日本キム・イルソン主義研究会常任委員会」
「日本教職員チュチュ思想研究会連絡協議会」
「日本青年チュチュ思想研究連絡協議会」
「チュチュ思想研究兵庫連絡協議会」

 元日朝社会科学連帯委員会議長の故安井郁夫の夫人、安井鶴子氏のそれもある。 亡き夫の‘‘名代‘‘としてである。

 

短期訪問事業で稼ぐ外貨


 共和国が稼ぐ短期訪問外貨はどれくらいになるのか?
 一人の短期訪問が12人の身内に幸運に会えたと仮定して。
 金剛山(訪問同胞がいなければ帰国同法は死ぬまで行けない旅行)
10万円ぐらいは必要とされている。
このほか、日本円で50万円ぐらいのお土産の贈り物。 
したがって、宿泊費、食費36万円、外貨商店で買い物35万円、3家族に握らせた現金60万円。
 娘夫婦家族宇野金剛山旅行費10万円、日本で購入のお土産50万円、
  合計 191万円使ったとされる。

 そして「三池淵号」乗船大なども納めているはずだから、少なく見積っても、祖国訪問費用は2百数十万円かけたとみなされる。

 訪問団員の中には1千万円単位を使う人もいる。

  

「三池淵号」が稼ぐ外貨


 一人200万円で、短期祖国訪問団員100人と計算すると、2億円となる。
 これまで7000人が共和国が訪れているから、この事業で140億円の「日本円」を稼いだことになる・

 これとは別に、自働車、器具機などを持ち込む商工人が多い。
三池淵号だけでもその金額は、少なく見積っても1億ドル、230億円。

 三池淵号は在日同胞から、370億円搾り取ったことになる。

 総連同胞は三池淵号を新しい‘‘涙の連絡船‘‘ ‘‘収奪の連絡船‘‘と名付け、憤懣やるかたない心情を現している。

  
  悲しい日記です。
読んでいて、何時になったら兄に、姉に、従兄に会えるのか、ムカムカしました。
 会えてからも指導員と言う名の下の監視員に見張られ、何時まで経っても身内の真の言葉を引き出せない。
 お互いの歯がゆい時間が、狂った国の世界を、まざまざと見せつけられる。
 
 こんな国に産まれなくてよかった。
 こんな国に関わりたくない。
 こんな国は狂っている。
 
 ありきたりの言葉でしか表現できない。
今なお続く地獄の日々を、拉致された同胞がいると思うと、涙が出ます。
 やはり、一日でも早く横田めぐみさん他、早く早く帰って来てもらわねばならない。
 日本政府には何をしているのか!!

早くしろ!!!

 他にも、お金の話がとてもリアルで、現実の残酷さに打ちのめされました。

 読んでいて、辛かったです。
でも、この本はおすすめです。


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