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<家庭医、総合診療医、救急医のための整形外科的トレーニング>症例21 34F 右足痛
はじめに
このnote記事は「フローチャート整形外科診断」を書き散らかしたふじたつが、外来で経験した典型的な症例を用いて、恐れ多くも家庭医、総合診療医、救急医のためにトレーニング形式でそのノウハウをシェアする場です。読者の方々と一緒に研鑽を積めたら嬉しいです。
アンカークリニック船堀では短期〜長期の整形外科外来研修を受け入れしています。興味ある医師の方はご一報ください!
◆ご覧いただきたい方
整形外科診療に携わるプライマリケア医
救急外来でWalk in症例を診る初期研修医
卒後3年目の駆け出し整形外科医
※3次救急というよりは地域の1次2次救急外来やER、クリニックなどを想定しています
※上記以外の専門医の方も「Advanced」の項目は是非見てみてください
◆解決する課題感
「肩痛や腰痛の患者さんを診る時にどのように対応してよいかわからない」
「膝痛を訴える患者さんで見逃しちゃいけない疾患はなんだろう」
などなど
このような課題を解決するために、冒頭紹介した書籍「フローチャート整形外科診断」に加え、本記事で追加の症例解説をしていきます!
なので、熟練の整形外科医にとっては当たり前の内容かと思いますが、
ただただ、わかりやすさを追求し、たとえ初めて整形外科疾患を診る医師でも「できる」内容として記載するように努めています!
ぜひこれから一緒に学べたら嬉しいです!
より短時間で確認したい方はこちら!
以下会話形式での解説です!
◆登場人物
R:アンカークリニックで研修する家庭医レジデント、医師5年目
O:アンカークリニックで指導する町の整形外科医
[症例21] 34歳女性 右足痛
1週間前からの右足痛。歩行時に痛く、2,3日休むと少しよくなるがまた歩くと痛くなる。悪化しているため夜間救急外来を受診した。
R:歩行時痛の足痛ですね。足底筋膜炎でしょうか。
O:鑑別にはなるね。フローに沿ってやっていこう(スナップ診断好きだけどダメ)。
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R:まずは非外傷ですね。次は感染や炎症かどうかですが、特にそういった状況はなかったです。発熱もなしです。
O:ok。小児でもないから痛いところ勝負だね。
R:内側ですね。
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O:なるほど。じゃあ鑑別はこんな感じかな
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R:途中で除外した化膿性関節炎や骨髄炎ももう一度考えるんですね。
O:そうだね。ここに残したのは”上5つの疾患で診断がつかなかった時に考え落としをなくすため”と思っていてくれればいいかな。
R:なるほど。現時点で病歴上感染を疑わせる部分や既往歴はないけれど残しておく、という意味合いですね。
O:そうだね。それで病歴はどう?
R:歩行時痛ですね。特に最近トレーニング開始したりとかはないようです。踵部分は痛くなくて、しびれもないです。
O:ok。ちなみに痛くなり始めるちょっと前に遠出したりして長い距離歩いたりは?
R:聞いたら、ネズミーランドに行って30000歩歩いたって言ってました。
O:それだね!笑
R:でも先生、これだと絞り込めないですね。
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O:そうだね。疼痛部位をうちょっと詳細に診ていこうか
R:舟状骨周辺ですね。少し内果よりです。
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O:なるほど。外脛骨障害が有力だね。ひどいと足関節背屈でも痛み訴える人がいるけど、どう?
R:特に背屈での痛みの悪化はなかったです。
O:あ、そう。痛みを訴えているところって出っぱっている印象ある?
R:昔から出っぱってるって言ってました。
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O:なるほど。そうしたらまずはレントゲンからかな。
R:外脛骨を確認ってことですよね。足部2方向であってますか?
O:そうだね。
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R:外脛骨ありますね。
O:Veitch type Ⅱってやつだね。
R:分類あるんですね
O:何のための分類かは知らんけど、外脛骨がない人でも後脛骨筋の舟状骨付着部で炎症起こすことはあるよね。
R:そうなんですね。炎症の確認はエコーですか?
O:そうだね。あててみよう。
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R:治療はNSAIDs、安静ですか?
O:安静は炎症の程度次第かな。休んで治すとけっこう後脛骨筋が拘縮するから足関節背側のストレッチも指導しておいて
R:わかりました!
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▶︎Advanced もし自分が外来で診るなら〜外脛骨障害〜
保存治療が基本で運動強度の調節やNSAIDs、ステロイド注射を行う。扁平足があればインソールも適応となる。スポーツレベルにおいては10%で治療がうまくいかず手術治療適応もあるが一般外来ではほとんど経験しない。
<初期治療>
NSAIDs、アセトアミノフェン、PPI
ステロイド注射
運動強度抑制
<オプション>
扁平足があればインソール
PMID: 33852436
PMID: 30838083
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