「DJは事前にセットリストを組むべきか否か」を考える。
Anchill Japaneseといいます。
DJをしています。現在は「Anchill Japanese 《weekly DJ》」というYouTubeチャンネルを運営しながら、イベント企画を中心に活動しています。
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今回は、これまでに何度もDJ同士で語られてきたであろう議題に触れたいと思います。
DJは事前にセットリストを組むべきか否か
「DJは事前にセットリストを組むべきか否か」。
始めたての初心者DJさんからよくいただく質問です。
私の答えは、「事前に組むべき」です。
もっと言うと、組める「ようになるべき」です。
これ、「組むべきではない」派のほうが、おそらく多いですよね。DJ教則系のYouTube動画で、そういう話をいくつか見たことありますし、実際にこれまで知り合った身の回りのDJさんでもそう言う人のほうが多いです。
そういう人の論調は、
「その場の雰囲気とお客様に合わせて臨機応変に対応すべきだ。
事前に組むとそれができなくなる。」
というのがほとんどです。
前半は賛成です。
しかし、後半は違うと思うんです。
セットリストを組んだうえで、臨機応変に対応したほうが絶対にいいんです。そのメリットもたくさんあります。
事前にセットリストを組むメリット
事前にセット組むメリットは大きく3つあります。
1.プレイの振り返りができる
セットを組んでいくと、あとでその日のプレイを振り返ることができます。
「ここで失敗したな」
「ここらへんでお客様が逃げたな」
「ここから徐々に踊り始めたな」
「ここのmixが上手くいったな」
という感じ。家に帰ったあと、セットリストを眺めたときに、成功も失敗も思い出せます。
セットを組んでなかったらどうでしょうか?
上手くいったところはかろうじて覚えてるかもしれません。
でも、徐々に雰囲気とズレていったところなど、失敗をニュアンスでしか覚えられず、振り返りは難しくなるのではないでしょうか。
さらにいうと、そもそも失敗は、恥ずかしくて早く忘れてしまいたいものです。
こんなとき、だいたいが、
「選曲よかったよー」
「マニアックだったねー」
「繋ぎ上手いねー」
などという、DJ同士のあるある褒め言葉でお友達に優しくしてもらいながら、お酒を喉に流し込んで傷の舐め合いタイムに突入するのみです。
本来、DJは快楽主義の方がとても多く、特にローカルなエリアでは「楽しければそれでいいじゃん」が合言葉です。
そういうのを否定しませんし、在り方の一つだと思いますが、
早く上達したいのなら、そこを見直したほうがいいかな、と思います。
なあなあにDJをしてしまい後悔してる人達にこそ、セットをしっかり組むことをおすすめします。
しっかり反省点を見出して、復習ができる環境を整えるために、予習としてセットを組んで欲しい。メモして残しておくのもいいでしょう。
その方が上達が早いと思いますので。
2.軌道修正しやすい
セットを組むのは、仕事のスケジュール管理に似ています。
例えば、ある営業マンの1日。
午前中に資料を作成、お昼休憩を挟んで、午後は会議の後に外回り1件、夜はプライベートの食事会、という日があったとします。
セットを組まないというのは、この仕事を事前に把握せず、当日思いついた順に片付けていく、というイメージです。
また、仕事というのは外的要因などにより計画通りにはいかないものですよね。午後の会議が午前中に変更になったりして。
おそらくですが、この人はお昼が取れず、適当な外回りをして、食事会に遅れて参加するでしょう。
しかし、なにをすべきか事前に準備している人にとって、多少のイレギュラーは大したことのない問題です。
これ以上は、特に書く必要がないと思うので省略しますね。この営業マンをDJに置き換えて、イメージを補完してくださいませ。
このブロックをまとめると、計画は立てておいたほうがイレギュラーにも対応できる、というごくごく当たり前のお話でした。
(偉そうに言うてますが、計画的に仕事するってムズい。私もよく壁にブチあたります。)
3.想像力が鍛えられる
ここが私の思う、一番大事なポイントです。
これは、投資の神様と言われるウォーレン・バフェット先生の言葉をサンプリングして作りました。手前味噌恐縮です。
(投資は詳しくないので、本来の意味合いとは全然違うと思います。どうかお許しください…)
要するに、私がお伝えしたいのは、
明日がどうなるか予測できるのなら、曲も事前に準備しといたほうが良くない?
というお話です。
例えば、明日の持ち時間は60分、ジャンルにもよりますが、実際にかける曲数は15-20曲くらい。っていうときがあったとします。
A:ノープランで多めに100曲持っていって全アドリブ選曲のDJ
B:ドンピシャで予測、20曲のセットを持っていくDJ
DJとしてどっちが能力高いかと言ったら、後者だと思いませんか?
「明日がどういう日か」を予測するのは、DJのイメージトレーニングにとても役立ちます。
もちろん、持ち時間ピッタリの曲数だけ持っていくってのはリスクがエグ過ぎですし、さすがに極端ではありますが、
それくらいのつもりで準備するにこしたことはないと思います。
そして、これらのトレーニングを重ねたDJは、アドリブ選曲も難なくこなせるようになります。
明日がどうなるかイメージできる人には、当日プレイしながら10分後をイメージすることなんて容易い、ということです。この努力はしっかり実になります。
最後に一つだけ。
また、この話をする際に、押さえて置かないといけないポイントがあります。
「アドリブ選曲こそがDJのアイデンティティである」と考えてる人が意外と多い、という事実です。
アドリブ選曲は、DJにとって大事なやりがいの一つだとは思います。
でも、DJはそれだけじゃない。
もっと奥が深いし、他にもやらなければいけないことがたくさんあります。
そして、選曲において最優先はアドリブではなく、品質です。
だから、これからDJを始める若いDJさん達には、アドリブ選曲に固執してしまわないように、
まず「セットを組むべきではない」という固定概念を取っ払ってほしいと思い、この記事を書きました。
DJのやり方は人それぞれですので、いろんな考え方があると思います。
「いや、僕はそうは思わない!」などあったら、ぜひコメントで教えてください。
すみません、これが本当に最後。
もちろん、全アドリブ選曲でスゴイDJは芸術的だし、憧れる。そういう人も実際にいるし、かっこいいと思います。
しかしながら、キャリアの長いローカルおじさんDJ達がキャリア1〜2年目の子たちに、
「DJはアドリブ選曲できてこそだ!」
とマウント取りにいくのはいかがなものかなと思った、というお話でした。
やる気のある才能に溢れた若い子達を、おじさんが寄ってたかって上から抑えつけるようなことはしちゃいかんのです。
※※※
余談ですが、私がDJを始めた1990年代は、
「その日にかける曲数の5倍の音源を持って行く」というのが定説でした。(私もそうしてました。)
これはもちろん、アナログレコードという、今と比べれば圧倒的に利便性の低いアイテムで臨機応変に対応するため、なのですが、
これが時間経過とともにズレて解釈されて、「セットは組むべきではない」となったんじゃないかなーと、私は踏んでいます。
以上、ローカルおじさんDJ、Anchill Japaneseでした。
それでは、次回の更新まで。
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