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大脳基底核について、解剖学的分類と生理学的(機能的)分類の違い

大脳基底核について、解剖学的分類と生理学的(機能的)分類の違い

大脳基底核は解剖学と生理学で若干考え方がことなるので注意!!
大脳基底核について、解剖学的分類と生理学的(機能的)分類の違いや意義を整理した解説と、国家試験対策のための例題です。

大脳基底核とは

大脳基底核は、大脳半球の深部に存在する灰白質核(神経細胞体の集まり)で、運動調節や情動、認知機能に関わる重要な中枢です。分類には、解剖学的視点と生理学的(機能的)視点の2つがあり、それぞれで含まれる構造物や強調される機能が異なります。

解剖学的な大脳基底核の分類

大脳白質内に埋め込まれた灰白質のかたまり(構造・位置に基づく分類)

1. 尾状核 (caudate nucleus)
2. 被殻 (putamen)
3. 淡蒼球 (globus pallidus)
4. 扁桃体 (amygdala)
5. 前障 (claustrum)

この分類では、「大脳白質中の灰白質集合体」が大脳基底核とされ、扁桃体のように情動や本能行動に関わる辺縁系の要素も含まれます。また、前障は島皮質の深層が分離したものと考えられます。

線条体 (striatum):尾状核+被殻。発生的・構造的由来が同じため「縞状体」と呼ばれる。
レンズ核 (lenticular nucleus):被殻+淡蒼球。横断面でレンズ(レンズ状核)のような形態をとるため。

生理学的な大脳基底核の分類

大脳基底核は運動の調節に関与する(機能に基づく分類)

1. 尾状核 (caudate nucleus)
2. 被殻 (putamen)
3. 淡蒼球 (globus pallidus)
(以上3つが運動調節に関与)

この視点では、情動に大きく関わる扁桃体や前障は、運動制御の文脈ではあまり重視されません。代わりに、運動調節回路に密接に関与する以下の核群がしばしば機能的に「大脳基底核」に含められます。

視床下核 (subthalamic nucleus):視床下部に位置し、淡蒼球や黒質との間で運動制御に関与。
黒質 (substantia nigra):中脳に位置。特に黒質緻密部はドーパミンを線条体に投射し、運動・報酬系を調節。
赤核 (red nucleus):中脳に位置し、上肢の運動制御に関連し、機能的に大脳基底核ネットワークと関与する場合がある。

したがって、機能的な分類では「大脳基底核回路」として、視床下核や黒質(さらに場合によっては赤核)まで取り込んで運動調節のメカニズムを考えることが多くなります。

まとめ

解剖学的分類
尾状核・被殻・淡蒼球・前障・扁桃体が含まれ、形態・位置に基づく。
• 線条体=尾状核+被殻
• レンズ核=被殻+淡蒼球

生理学的(機能的)分類
運動調節を重視し、尾状核・被殻・淡蒼球を主軸とする。
機能的関連部位として視床下核・黒質など中脳・間脳領域が加わる。

この二つの視点を区別することで、形態的特徴と機能的役割を明確に理解できます。

国家試験対策のための例題

(問題1) 解剖学的な大脳基底核の分類に含まれる構造はどれか、正しい組み合わせを選べ。
A. 尾状核、被殻、淡蒼球、前障、扁桃体
B. 尾状核、被殻、淡蒼球、黒質、赤核
C. 被殻、淡蒼球、扁桃体、上丘、下丘
D. 尾状核、被殻、淡蒼球、丘腦、前障

解説:解剖学的分類では、尾状核、被殻、淡蒼球、前障、扁桃体が含まれる。
正解:A

(問題2) 生理学的な大脳基底核の分類(運動制御機能を重視)において、次のうちしばしば機能的に取り込まれる中脳・間脳領域はどれか。

1. 黒質、視床下核
2. 扁桃体、海馬
3. 前障、帯状回
4. 下丘、上丘

解説:生理学的分類では、運動調節に必要な核として黒質や視床下核を大脳基底核回路の一部に含める場合がある。
正解:1

このように解剖学的分類と生理学的分類を理解することで、大脳基底核の形態学的構造と運動調節における機能的役割の両面を把握することが可能になります。

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