牡羊座の女の子
起業家という道を経て、今は作家を夢見て執筆活動に明け暮れる橋本なずなです。
一つのnoteにするまでもない、でも書いておきたい、そんな短編集です。
( 過去の短編集はこちらから )
秋風が心地良い9月の鴨川、私と友人は等間隔に座る男女らに紛れて川辺に腰を下ろした。
私は親戚について話をしていた。
お酒に酔って暴力を振るった父、性的虐待の事実を知らなかった母、小5にして家出をし行方知らずの兄、橋本家の闇はこの程度ではないのだと。
真の闇は母方の家系 善利家 にあるのだと、話をした。
私の名の 橋本 は父の姓で、旧姓は 善利 という。
両親が離婚した時に名字を変えるかと尋ねられたが、父の存在を残しておきたくて橋本のままにすることを選んだ。
それに「善利なずな」なんて珍しい名前のオンパレードで、キャラ強すぎるじゃない?
私は 橋本なずな というマイルドな名を気に入っている。
「 どうしてその話書かなかったの?本に 」善利家の闇を聞いた友人が穏やかな声で尋ねる。
『 書いたよ、修正前の原稿にはね 』
『 でもその闇が深すぎて、この本で伝えたい本来の内容が霞んでしまうからってカットになったの 』
「 えぇ、書いてほしかったなぁそれも 」
友人は残念そうに、優しく笑った。
私の心が自己肯定感を持ち合わせず不健全に育ったのは、幼少期に見た大人たちが皆、酷いものだったから。
その最たる例が私の祖父母、善利家の二人だ。
いつか書けたら良いと思っている。noteか、次に出版できる機会にでも。
アルバイト先のバーで一緒の男の子は、牡羊座だった。
「 なんか橋本さんって色っぽいですよね 」
「 品があって、僕めっちゃタイプです 」
「 彼氏とかいるんですか? 」
惜しげもなく並べられる甘い言葉にタジタジになるが、彼には30歳の彼女がいる。意味が分からなかった。
それだけ言っておいて、彼女いるの?と訊くと はい と答えたのだから。
「 いや、僕嘘付けなくて 」
「 でもホントに、もっと早く出会ってたかったです 」
つぶらな瞳でこちらを真っ直ぐ見つめる彼は、一つ年下の男の子。
店が落ち着いていたこともあって、初対面にもかかわらず私たちはかれこれ2時間近く話をしていた。
普段何をしているかとか好きなこと、これまでの恋愛についてなど。
そして誕生日の話になった時に、
「 僕3月26日生まれで… 」
『 えっ!私22!3月22日! 』
まさかのバースデーご近所に驚いた。
同じ3月生まれの人にあまり出会ったことがない私は、嬉しさと、妙な納得感を得た。
牡羊座の諸突猛進、ガンガンに積極的な肉食獣っぷり。
血液型は当てにしないし、他の星座のことはよく知らないないけれど、牡羊座だけは星座占いで語られる通りの人間ばかりだなと思っている。
私も例に漏れず典型的だし、彼の言動も、二つの角ともこもこした羊毛が見えてくるような気がするほど、牡羊座らしかった。
牡羊座が故に、そのスピード感や積極性で圧倒させてしまい引かれることが多々あるのだが、同士と分れば遠慮が要らない。
私はそこに居心地の良さを感じるのだった。
「 建築家になりたいと思ってて・・・国立会館とか好きですね、凄いです、あの建物は 」
そう語る彼は、私が最近一目惚れした男の人。
友人に紹介してもらった京都の飲み屋さんで働いていて、初めてお邪魔したのは1週間と少し前のこと。
その時に私は息を呑んだ。
( えっ・・・カッコよ… )
満島真之介っぽい顔で、雰囲気は菅田将暉を感じさせる。
ほら、どこかの作品に出ている役者の菅田将暉ではなくて、トーク番組などに出ている菅田将暉って、天才肌な芸術家っぽい雰囲気あるじゃない。
その感じが彼にもあった。
初めて見た日から、寝ても覚めても彼のことが頭から離れなくて、どんな人なんだろうとかパートナーいるのかなとか。
気になって落ち着かなかった私は、もう一度会いに行くことにした。
「 あっ…!先日はどうも 」
『 どうも 』
軽く頭を下げて微笑む。今日もやっぱりカッコ良く、爽やかに笑う彼がそこには居た。
これは以前に働いていたカフェの同僚に言われた言葉なのだけれど、
「なずなちゃんって好きな人と話してる時、目がハートになってるよね」と。
分かりやすいし嘘が付けない、これも牡羊座が故だろうか。
この時も私の目はハートになっていたのかもしれない。優しい店長さんが私が彼と話せるようにとアシストしてくれた気がする。
「 こないだ「大阪で飲むことあったらぜひ」って言ってくださったじゃないですか 」
「 でもあの後、あ、連絡先知らないなと思って(笑) 」
『 そ、そうですよね 』
『 私も何でそこまで言っておいて、ふわっと終わらせちゃんたんだろうって思ってました(笑) 』
「 だから次いらっしゃったら、連絡先聞こうと思ってました 」
(キ、キ、キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!)
心のオーディエンスは大盛り上がり。
きっと目はハートになっていたし、頬もここぞとばかりに紅潮してただろうな。恥ずかしい。・・・好き。(早い)
私と友人らでの俗語なのだけれど、「 CHE.R.RYが流れる 」というスラングがあって。
Yui の CHE.R.RY って「恋しちゃったんだ多分、気づいてないでしょう」って曲。恋に落ちた、好きになっちゃった時を表す言葉なのだけれど、この時はもちろんCHE.R.RY流れたよね。
それからLINEを交換して、食事の約束までした。
店を後にしても私は胸の高鳴りが止まらなかった。どこかに吐き出したくてXにポストする。
いや、いつも2,3件しかいいね付かないのに、なんでこれは反応良いんだよ(笑)
なんて思いながら、私は眠るまでずーっと浮足立っていた。
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