寅さんって本当はモテモテなの?
依頼者からコンシェルジュへの希望
依頼者プロフィール
正直者さん 日曜哲学者 40代男性 寅さん鑑賞経験あり(第17,38,45作)
寅さんシネマコンシェルジュ2回目です。1度目に、香港映画のウォンカーウァイ監督のような、「付かず離れずの距離感の男女」が見られる作品を希望しました。そこで観た3作は、寅さんが相手の女性から好意をもたれていて、とても驚きました。寅さんって振られるんじゃないんですか。そして、相手の好意に気づいてるんですか。色々気になることが出てきたので、他の作品も観てみたいです。今回は、寅さんが振られる作品、そして恋愛以外にテーマがおかれる作品があれば、それも希望します。
正直者さんの1回目のコンシェルジュ記事はこちら
偶然に、寅次郎がモテる回を連続鑑賞された
正直者さんは、1度目のコンシェルジュでは、17作・38作・45作をご覧になりました。3本とも、寅次郎がマドンナから好意を寄せられている作品だったので、「寅さんって失恋すると思ってたけど、モテモテやん!」と驚かれたようです。やはり、「男はつらいよ」と言えば失恋ですよね。正直者さんはシリーズの中で、いくつかある「失恋するとは言えない作品」に偶然巡り合われたということです。失恋する作品、ぜひご覧いただきましょう。その他にもいろいろ気になる点があるようで、希望いただいたモテない寅さんと、恋愛以外にテーマがある作品をご紹介します。
やっぱりモテモテではなかった
※以下、作品の内容を記述します。
① 第6作 「男はつらいよ 純情篇」
公開:1971年
マドンナ:若尾文子
ロケ地:長崎県五島
あらすじ: とらやに住み込む美人で夫と別居中の人妻、夕子に寅次郎は一目惚れします。しかし、夕子の前でだけいい格好をしたがる、都合の良い寅次郎に家族は辟易。夕子は夫への不満もあるようですが、寅次郎に勝ち目はあるのでしょうか。また、さくらの夫・博は、独立をめぐってタコ社長といざこざに・・・。
この作品では、モテない寅次郎を見届けてください。夕子は、遠回しに寅次郎へ気持ちを伝えますが、寅次郎はどう解釈するのか注目です。美人の前で空回りする寅次郎像の典型とも言える作品です。また、脇役ではありますが、森繁久彌さんが登場します。静かな態度に秘められた親心を表現した演技は最高です。
② 第19作 「男はつらいよ 寅次郎と殿様」
公開:1977年
マドンナ:真野響子
ロケ地:愛媛県大洲市
あらすじ: 愛媛県大洲で出会った老人は、世が世なら伊予の殿様であった大人物(嵐寛壽郎)でした。殿様に気に入られた寅次郎は、殿様に無理難題の頼みごとをされ、引き受けてしまいます。その頼み事を寅次郎は果たせるのでしょうか。そして、大洲で出会った美人(真野響子)との再会もあり、寅次郎の恋愛が始まります。
この作品では、恋愛以外のテーマに注目です。恋愛も描かれますが、殿様に気に入られ、振り回される寅次郎も物語の大きな軸となります。寅次郎と殿様の不思議なコンビのやりとりは質の高い喜劇です。ラムネを飲んで「甘露な味」と表現する、時代遅れの殿様にご注目ください。
③ 第41作 「男はつらいよ 寅次郎心の旅路」
公開:1989年
マドンナ:竹下景子
ロケ地:オーストリア ウィーン
あらすじ:仕事で行きづまり、自殺しようとしたサラリーマン・阪口(柄本明)に気に入られた寅次郎は、彼にオーストリアのウィーン旅行に誘われます。行きたくない寅次郎は、なんとか行くまいと策を練りますが、結局ウィーンにたどり着きます。ウィーンで迷子になった寅次郎は、ツアーガイドとして働く日本人、久美子(竹下景子)と出会います。久美子は寅次郎にうながされ、日本に帰ることを決意しますが、オーストリア人の恋人が引き止めに来てしまい・・・。
この作品では、恋愛以外のテーマに注目です。日本のサラリーマンの辛さや、異国で孤独に働く日本人の姿が描かれます。それぞれの人物は社会の中で悩みながら真面目に生きていますが、なぜか社会から逸脱した寅次郎に惹かれます。社会を一歩離れて生きる生き様がそうさせるのでしょうか。また、寅次郎の恋愛が終わる瞬間にもご注目ください。
コンシェルジュを終えて
正直者さんの2度目コンシェルジュとなりました。1度目のコンシェルジュでは、偶然にも寅次郎が好意を持たれる3作品のご案内となり、寅さんはモテモテだと思われたとのこと。私も後から気がつきました。寅さんは、モテモテだけではありません。今回は、分かりやすく失恋をする作品ですので、男としては三枚目の寅次郎をぜひご覧ください。ただし、人間としてはまさかの人物から好かれることが多いので、別の視点で寅次郎を分析してみてください。「寅さんは相手の好意に気づいてるんですか」との質問、答えは、「あまり気づいていない」です。そして、好意に気づいた瞬間、怖気づいてしまいます。寅さんも好きなはずだったのに、観ていてもどかしくなりますね。
正直者さん、ありがとうございました!