D13 ロックダウンのNZで日本政府の取り組みの法的な裏付けを追ってみたらやっぱりの結果が出た

東京をはじめとするいくつかの都府県が「緊急事態宣言下」に入るようだ。

これで、ウイルスの感染拡大を食い止めるために必要な指示を都道府県知事が、やっと「法的に」出せることになる。政府や自治体のリーダーにとって「法律に基づいて」というエクスキューズがつけられるのは、罰則のあるなしに関わらず大きな助けになることだろう。

さて、「法的に」と自分で書いて、今までの日本政府のCOVID-19に対する取り組みは、どのような法律に基づいて行われてきたのだろう、と率直な疑問が湧いたので調べてみると、「やっぱり」なことがわかった。

以下、説明のための画像がたくさんありますが、クリックで拡大します。ただし、スマホの人はタップで拡大しないものもあるので、特に横長の画像を見るときは、画面を横向きにして見てくだい。パソコンでの閲覧を推奨します。

日本政府の対応を振り返る

COVID-19に対する日本の対応を、Johns Hopkins Universityのグラフ(感染者数は対数)を元にまとめてみた。

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赤い「X」はキーになる施策、黄色い「!」は緊急事態宣言、緑の「レ」は経済政策だ。これをみると、なんとなく、まぁまぁよくやっているように見える。「X」のイベントを日付で追うと、こうだ。

1月28日 新型コロナウイルスを指定感染症に指定(施行は2月7日)
2月25日 クラスター対策班の設置
3月14日 新型インフル等特措法改正(施行)
3月26日 特措法の適用政府対策本部の設置)

このグラフは片対数グラフと言って、縦のメモリに細工がある。このグラフ上で一直線に増えていると、それはすなわち「指数関数的に」増えていることを表す。まぁそこはいい。だいたいの国で、感染者数は多かれ少なかれ、倍々で増えていっているものだ。私が疑問なのは、感染者数が2月からじゃんじゃん増えているのに、なぜ「対策本部の設置」が3月26日なのかだ。

「対策本部」が出てくるニュースは2月中にもあった。例えば、これは2月16日付の記事で「対策本部」が出てくる。対策本部の設置はつい最近なのに、それ以前に「対策本部」がニュースに出てくる。この矛盾は、どういうことだ。

最初は、感染症予防法だった

ここで重要なのは、政府がどの法律に基づいてこの間の対応を行ってきたかだ。もう一度グラフに戻ろう。

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青い四角で囲まれたところに注目してほしい。よく、「新型コロナウイルスは指定感染症だから、たくさんPCR検査すると病院がパンクする」などとニュースで聞くが、指定感染症を規定している法律は、感染予防法である。

調べるとわかるが、感染症予防法は、ペストや結核、マラリアや麻疹といった伝染病の流行に厚生労働省や医療機関がどのように対処するかを定めた法律だ。新型インフルエンザ等も含まれる。つまり、青い四角で囲まれた期間中、新型コロナ対策の根拠となった法律は感染症予防法であり、その対策本部は、厚生労働省の中に設置された。上記の2月16日の毎日新聞記事にある「対策本部」とは「厚労省対策本部」の意だったのだ。

この厚労省対策本部は、特措法が適用になるまで日本の対新型コロナウイルス戦略の頭だったわけだ。有名な「クラスター対策班」も、厚労省対策本部の直轄機関として設置されている。

①_02251430大臣レク用_クラスター班設置プレス

新型インフル等特措法は「対感染症イージスシステム」

では、新型インフル等特措法をわざわざ適用するのはなぜか。感染症予防法で対処できるなら、そのまま厚労省対策本部でいいではないか。

一言でいれば、それだけじゃ足りないと過去に学んだためだ。

感染症予防法では、主に予防や治療に関する具体的なことが規定されているものの、爆発的に広がっていく新型インフルエンザや、今回のCOVID-19のような感染症には対応が十分にできない。

それは、これらの感染症が単なる医療問題では無く、社会問題だからだ。医療(厚労省)が大きな役割を担うことは当然だが、国境を閉めたり(外務省)人々の生活に制限を加えたり(政府・地方自治体)、経済への打撃を緩和したり(財務省・経産省)と、日本の中枢が一体となって動かなければ、パンデミックは乗り切れない。

先日の記事で、厚労省のホームページがわかりづらい、と言う話をした。

新型コロナウイルス感染症について-6-2

わかりづらくて当たり前だ。異なる法律に基づいて、政府と厚労省が同じような名前で「対策の基本方針」を決めていたのだから。

青枠内の厚労省対策本部による「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」(2月25日)を実際に見てみると、最後のページには以下のように、厚生労働省が主導する旨が明記されている。ちなみに、この「2月25日」はあとで出てくるのでちょっと頭の片隅に入れておいて欲しい。

画像5

一方で、赤枠内の政府対策本部による「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(3月28日)を見てみると、政府をはじめとして、各対策の行動主体がしっかりと明示されている。

000614803_pdf(4___13ページ)

政府は、2009年の新型インフルエンザの流行で後手後手に回った経験を踏まえて、伝染病の拡大を阻止するために公的機関を効率的に一体運用するための法的根拠を整理する必要があった。それが、新型インフル等特措法だ。手強い感染症に対して様々な武器を連べ打ちにするための、いわばイージス艦のような存在だ。では、この「イージス艦」には、どんなすごい武器が装備されているのだろうか。具体的に見てみよう。

すごい武器その1:政府の行動計画

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