モデルを介して (世界に) 触る
アクタ・エンジニアリングを紹介する前に, アナキテクチャにおける「モデル」について説明します.
「モデル」(model) という用語は, さまざまな領域ごとに, さまざまな使われ方をするので, その使い方については慎重でなければなりませんが.
アナキテクチャ (anarchitecture) では「モデル」を次のように定義して使います.
わたしたちは, モデルを通して, 世界に触れます.今までのアーキテクチャも, 実際には何らかのモデルを通して世界に触れています.ただ, そのモデルは唯一の自明のものとして暗黙のうちに与えられたものであったり (例えば「科学的思考」), 明示化されないままに前提となる文脈として共有されているものであったり (例えば西洋文明のような, 特定の思考様式) しています.
アナキテクチャでは, ある具体的なアナキテクチャとそれを実現するモデルをいつも必ずペアとして提示するようにしようと思います.その代わり, モデルは変化するものであってもよいし, 複数のモデルであってもよいものとします.
モデルはどれも不完全で, 未完成です. 完全で完成したモデルはありません.
アナキテクチャが発達するに連れて, それを実現するモデルも発達するでしょう. モデルが変化すれば, それに基づいて実現されているアナキテクチャの意味も変化するでしょう.
すべてのモデルとモデルの間に整合性があるとは限りません. 部分的な整合性がある場合もありますが, 整合性がないのが普通です. 整合性がないとしても, それらのモデル同士を比較することはできるでしょう.
これが, アナキテクチャの多声性 (polyphony) の基礎です.
モデルは文節化された識に過ぎませんが, その背景には文節化され得ない識があることもわたしたちは知っています.
これが, アナキテクチャのニ層性 (dualamina, 深層と表層) です.
では続いて, モデルの一つの例としてのアクタ・エンジニアリング (actor engineering) という考え方を紹介します.