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JAZZと料理

このところ子育てが一段落して映画を観る余裕ができた。先週『マイルス・ディヴィス〜coolの誕生』を観た。


遡ること四十数年
中学生の私は大人の世界を垣間見たくて背伸びして自主上映のグループに参加していたことがある。訳もわからずシュールレアリズムやニューシネマ、ヌーベルバーグ系の映画をみることがカッコいいと思っていた。
そんな中で出逢ったのが『死刑台のエレベーター』

映像美と音楽と俳優の粋なことといったら、それはもう辺境の地に住む田舎臭い中学生が観るにはあまりにも刺激的な作品だった。 そのときに耳にした音、それが初めて聴いたマイルス・ディヴィスの演奏だったと思う。

クラシック音楽以外聴くことを許されていなかった我が家、なんとも不思議な気持ちになったことを覚えている。
今まで聞いたことのない気怠い感じの音。これがジャズなのか。
高校生になり、級友からロックのLPを紹介されて私の音楽世界が少しずつ広がっていった。
しかし、JAZZに関しては周りに聴く人がいなかったのと、難しそうな印象があって遠ざかってしまった。でも耳の奥底にマイルス・ディヴィスの音はずっと残っていたのだと思う


今回映画を観て、音楽を続けることの過酷さと美しさについて考えさせられた。
マイルス自身が人種差別を受けて傷付いているのに、私生活ではパートナーに辛く当たってしまう心情。
性差別を受けたことはあまりないはずの私でも女性を辞めたくなる瞬間は確かにある。
それが何なのか、はっきりしないけれど。


去年『ビル・エヴァンス』のドキュメンタリー映画を観たときも、感動と同時に人間の業のようなものを感じて苦しくなった。
身も心も削って最高の境地を模索する厳しさと歓喜。それを観たくて凡人の私は様々なライブに足を運ぶ。


おっと
テーマは『JAZZと料理』だった。
私が得意とする分野は『そこにあるもので作る』思いつき料理。
残り物がうまくハマった時の喜びはかなり大きい。
更に食べてくれる人の反応やおしゃべりで喜びが倍増する。跡形もなく平らげられたお皿を見る喜び。
これって、ジャズの即興演奏と同じなのかも?と気がついた。一期一会の場と食材と人。
ということは、私も料理という音楽を演奏しているのと同じなんだ。ずいぶんお気楽に演奏しているけど。

そんな凡人でも作るからには『So cool‼️』と言われる一皿を仕上げてみたい。
そんなことを考えながら今日も台所に立つ。

今度の週末『死刑台のエレベーター』もう一回観てみよう。

食べもの探検家 浦木 明子




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