サイエンズメソッドとは

AIと来るべき社会についてサイエンス、テクノロジー、経済学、政治学、芸術など幅広い分野においてエヴァンジェリトとして活躍されているIさんからサイエンズメソッドについて質問をもらいました。

ケインズが予想していたように、富の再分配さえ適切に行えれば、不労社会に移行できそうになってきました貧富の差がなくなっても、モチベーション格差は拡大するでしょう。
自分で生きがいを見つけ、人生を楽しむ心構えを育てる必要があります。
その分野にサイエンズメソッドはどう切り込むのでしょうか?
医療のような後手では防ぎ切れないのが実感です。

まさに時代の先を走っているIさんの問いかけですね。

上記の問い対しては、まず産業社会という人間性よりもお金儲け優先になっている現在の社会的構造によって、人にそもそも備わっている自然な人らしさが阻害されているという観点が必要だとおもいます。
もちろん、自分の好きなことを生業として生きてこられた少数の優秀なIさんのような人は、現在の社会の中でも自分らしさを発揮して、楽しく働き、暮らし、さらに社会に貢献しようと活躍されるでしょうが、モーチベーション格差云々の前に、多くの人は、現在の産業・格差社会の構造の中で自分らしさを発揮できずに消耗しているという現実を観る必要があると思います。
モーチベーションは、単純な労働時間、労働量との相関よりも、現在の社会の社会構造、労働状況、環境とより相関があると考えた方が妥当だと思います。そして社会構造、労働状況、環境とは、煎じ詰めれば人間関係です。
だから端的に言えば、現在の人間関係の中で、多くの人が生きるモーチベーションを失っていると考えると問題が明確になると思います。

そして人間関係とは煎じ詰めれば、言葉のやりとり、言葉による関係です。

サイエンズメソッドは、一定の手順で出されて行く問いかけを、参加者全員のグループでオープンにどこまでも自由に対話し、検討することで、社会によって植えつけられた自分の中の言葉の固定化に気づき、それらの言葉をあたかもリアルなものと思い込むことで、自らが自分の人間らしさを制限していることに気づくことで、自分の人間らしさを自然に取り戻すというプロセスだと言えると思います。

つまり本来は言語という人間が作った道具に過ぎないものを、どこかで固定化し、自明なもとして当然なものとしてしまっていることで、みんなが固定化した言葉の網の中に自らを閉じ込め、身動きが取れない状態になり、またそれをお互いに繰り返すことで強化しているパターンが社会と言えますが、言葉の網の固定化に気づくことで自分も社会も緩んで、広がって、自由度を高めて行くような感じです。

具体的には「正しい/間違っている」「よい/悪い」などから始まり、「約束」「義務」「責任」「自由」「所有」などの社会的な言葉から「知る」「見る」などの普段の言葉についてまで、みんなで検討し、またそれらの言葉を固定化し、自明としていることで、自分の中でどのように作用しているかを自分で調べていきます。

サイエンズメソッドのよいところは、引き算なところです。何か新しいもの、知識や技術を学んで、身につけたり、獲得するという現代の「学ぶ」という通念とは逆に、知らぬ間にそれはそうだと決めつけてしまっていることを本当にそうなのだろうかと問い、こころを自然状態、いわば0の状態へどこまでも留まることなくリセットして行くところです。

そのようにして各自が、自らの自然状態を阻害していた自分の思い込みに気づき、自然に解放されることで、元々備わっている本源的な生きる意欲や喜び、好奇心、人への深い関心、思いやり、やさしさを再発見していきます。

その方法論自身が、一切のドグマや固定化から絶えず自由になっていくプロセスと言えるので、原理的に安全、安心なこころへのアプローチであることも非常に大切な部分です。

往往にしてこころを扱うアプローチは、人を今現在の思い込み、偏りから解放しながら、同時に別の思い込み、偏りへと、意図的であるか意図的でないかにかかわらずコントロールしてしまいがちだからです。


そのような方向で何かわかりやすい方法はないでしょうか?認知行動療法、瞑想法、ポジティブ心理学、トランスパーソナル心理学などの展開と、サイエンズメソッドはどう関わっているのでしょうか?

認知行動療法
ほとんど何も知らないのですが、ググってみました。
http://mh.cbtjp.net/cbt/
自動思考が人間の感情、行動などに深い影響を与えるという点は、サイエンズメソッドと共通していると思います。
ただしこのページでの説明だけを前提の話でいうと、認知行動療法は、自動思考を意識的に練習して変えようとするようですが、ぼくの経験でいうとそれには限界があると思います。俗っぽくいえばポジティブ思考のようなものだと思いますが、それは対症療法の感じがします。サイエンズメソッドでは、自動思考を変えることを目標としません。自動思考は単なる症状でしかないからです。サイエンズメソッドでは、自動思考が自動的に起きてしまう原因である自覚的できていない思い込みを探求していきます。しかし同時にその思い込みを変えることを目的にしているわけではありません。変えるということ自体が思い込みだからです。そして美しいのは、その思い込みに気づけば、その自覚によって自動的にその自動思考は起こらなくなっていきます。

瞑想法
これはぼくも30年以上実践をしています。瞑想にはさまざまな定義、やり方があると思いますが、例えば、僕は、瞑想とは、思考を観察し、思考に気づき続けることで思考による催眠状態から覚醒し、思考の制限から意識が解放され、悟るという方法だと長く捉えていました。しかしサイエンズメソッドによる探求、検討することで、その「瞑想」によって思考の制限から解放されることはできないという理解、自覚へと導かれました。
最近話題のマインドフルネスも、思考に気づき、感情に気づき、行動に気づくことで、思考によって生み出されるノイズに影響されずに不安なく幸せに創造的に生きることをめざす瞑想法の一つでしょうが、「思考のノイズ」という症状に働きかけてはいるものの、その真の原因に関心が向いていない気がします。


ポジティブ心理学
これもほとんど知らないのでググってみました。
https://www.jppanetwork.org/what-is-positivepsychology
「ポジティブ心理学では、個人や組織、地域社会、国家の繁栄度(flourish)の向上、具体的には、ウェルビーイングの構成要素である「PERMA」の向上による繁栄度の向上を目標としています。個人の人生・職業形成や、組織・地域開発、そして国家の政策において、「PERMA」のそれぞれのレベルを引き上げることで、繁栄度を全体的に向上させることを主眼としています。
PERMA
P=Positive Emotion(ポジティブ感情)
E=Engagement(エンゲージメント、またはフロー状態を生み出す活動への従事)
R=Relationship(関係性)
M=Meaning and Purpose(人生の意味や仕事の意義、及び目的の追求)
A=Achievement(何かを成し遂げること。ただし「達成のための達成」をも含むため、必ずしも社会的成功は伴わなくてもよい)」

これを読んだ範囲での印象に過ぎないのですが、サイエンズエソッドが引き算をして人間の自然な本質に戻る感じであるとすれば(Iさんの好きな老荘思想の方法論を伴った現代版ともいえるなと思います)、ポジティブ心理学は、足し算すること、つまり獲得して行くことで、何か良きもの、理想的なものへと至ろうとする道であるように感じました。力が入っている分、人間の考えに左右されやすい部分があるような気がします。サイエンズメソッドは老荘的な道、自然の摂理へと戻って行く、ただただ自然に穏やかに和やかに広がって行く世界への扉なような気がします。

トランスパーソナル心理学
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AB%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6
これも学問としてはほとんど知らないのですが、トランスパーソナルな体験(身体の中に制限された意識から解放される体験)はこれまでいっぱいしてきました。しかしトランズパーソナルな体験だけではいかんともし難いなあというのが、長年の個人的実感です。
トランスパーソナル心理学は、トランスパーソナルな体験を元にそれを説明する理論を立てようとする学問的努力だと思っているのですが、理論によっては、人はトランスパーソナルな気にはなっても、トランスパーソナルにはならないというのが率直な感想です。
サイエンズメソッドは、禅の公案のような、しかしあくまでも日常的な生活に直結した問いを順番にみんなで考え、検討し、自らの中のトランスパーソナル性を阻害している心の中の決めつけ、考え違い、思い込みに気づき、自覚していく実践的道というような感じでしょうか。

Iさんの問いかけでいろいろと自分でも整理することができました。
面白かったです。
ありがとうござます!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?