レベッカ・ソルニット『災害ユートピア なぜそのときに特別な共同体が立ち上がるのか』2
「エリートは、自分たちの正当性に対する挑戦である社会秩序の混乱を恐れる。彼女はそれをエリートパニックと言う。」
「私自身の印象では、エリートパニックはすべての人間を自分自身と同じであると見る権力者たちのパニックである。競争を基盤にした社会では、最も利己的な人間が1番高い地位に上り詰める。その地位にとどまるために、彼らはクロポトキンがシベリアで発見した事実よりむしろ、社会ダーウィン主義者たちのシナリオに近いドラマを演じきる。権力者は、彼らの最大の恐怖である暴徒たちと同じ位、残酷にも利己的にもなれるのだ。彼らはまた、自ら罪を犯しながら自分たちが犯罪を防いでいると信じている。」
「市民を火事場泥棒だとして射殺させたファンストン准将は、どういうわけか、自分は街を救っているのだと信じていたし、ハリケンカトリーナでは、役人や自警団員たちが、民衆は手に負えない野獣であると思い込んでいたために、彼らに対する野蛮な攻撃を見逃した。
災害時には2つの集団がある。すなわち、利他主義と相互扶助の方向に向かう多数派と、冷酷さと私利優先がしばしば二次災害を引き起こす少数派。多数派はしばしば利己的で闘争的だと言う常識とは正反対の行動をとるが、少数派は自分たちのイデオロギーに固執する。」
「これは、なぜエリートがパニックを起こすかと言う、もう一つの理由を示唆する。彼らは最も苦手なことを、最も厳しくテストされ、突然、彼らの正当性とパワーの源である'"天命"が疑われるのだ。初期の災害学者たちは、自然災害においては、すべての関係者が同じ関心事と目標を共有すると想像する傾向にあったが、現代の社会学者たちは災害を、水面下の対立が表面化する瞬間だと捉えている。ティアニーは「エリートは社会的秩序の崩壊と、自分たちの正当性に対する挑戦を恐れる」と言ったが、災害はその両方を惜しげもなく提供する。」
エリートパニックというと、安倍政権が憲法改正で掲げる「緊急事態条項」のことが頭に浮かぶ。特定機密保護法がすでに成立し、緊急事態条項を創立を目指す安倍政権は、日本の来るべき「崩壊」を見据え、それに対応すべく準備を進めているように見える。それは、いまの日本のエリートと呼ばれる権力者たちが自らの恐れを国民、社会に投影し、あからさまに反応している姿だろう。しかし彼ら自らの恐れと私利と敵意の投影は、国民の中に恐れと敵意と怒りの反発を呼び起こす。
言動の「誠」が問われている。
本当の「和」とは何かが問われている。
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