レベッカ・ソルニット『災害ユートピア なぜそのときに特別な共同体が立ち上がるのか』3

「つまり、共同体意識が存在していたのです。共に大災害を生き延びたと言う感覚は、人々を強力に結びつけるのです。隣人たちを違った目で見始めるんです。なぜなら、あれほど凄いこと(ニカラグア大地震)を体験すれば、それまでとは全く異なる現実に着地するからなんです。
生活は元通りになったけれど、それがまた革命を起こす力を増幅させました。なぜなら、私たちが、何が重要かと言う感覚を身に付けたからです。重要なのは自由であり、自分の人生や活動を自ら決定できること。地震直後から数日間、私達には、自分たちで何かを決定して実行できると言う感覚がありました。2日後にはあの暴君(ソモサ・ニカラグア大統領)に戒厳令やら夜間外出禁止令やらを発令させてしまった。大惨事の上に、そういった抑圧はとても耐えられるものではありません。それに、自分の人生が、たった一夜、地球が揺れただけで大きく変わってしまうことを悟ったならば、「だからどうだっていうの? 私はいい人生を送りたいし、そのためなら命を危険にさらしても構わない。所詮、一夜のうちに失いかねない命ならば」と思ってしまうのです。いい人生を送らなければ、生きている価値はないと。それは大惨事の間に誰もが体験した、深いところで起きた変化でした。
臨死体験のようですが、この場合、多くの人が同時に体験しました。それは人々の行動に大きな違いを生み出します。そういった体験は、人々の中で1番良い物を引き出すんです。人々が自分のことだけを考えるのをやめる場面を、私は何度も目撃しました。何かがきっかけとなり、人間は突然、仲間のことや、集団のことを考え始める。それが人生を意義深いものにしてくれるのでしょうね。」

その昔、「中米に平和を」という平和行進に参加して、ニカラグアを歩いた時に出会った、サンディニスタ革命の熱冷めやらずの熱気と喜びと自信を体中から溢れ出していた人々を思い出す。それとともに、ホンジュラスとの国境地帯の小学校跡で野宿していた僕たちを警備してくれた眠たそうなホームシックの13歳の少年兵の表情や、ニカラグア最後の夜、大地震によってまだ廃墟の広がる首都マナグアで、家に泊めてくれた女の人、そした彼女の銃弾の跡が残る居間に飾られていた米軍に入隊した息子の写真のことも思い出す。

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