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セラピーとしてのペットプレイ

ペットプレイはヒューマン・アニマル・ロールプレイと呼ばれるBDSMの一種で、主人と奴隷といった支配・服従の関係を飼い主とペットに置き換えたもので、パートナーを愛玩動物として扱うプレイのことです。

ここではSMを「総論」としてではなく「個人の物語」としてナラティブにアプローチすることで、SMを多角的に読み解いていくことを目標とします。


檻の中での暮らしは静かで穏やかでした。

その頃の私は、躁鬱病と拒食症と持病を急速に悪化させ、日常的に行き倒れていた。比喩ではなくて、色々な駅の救護室に運ばれたり、会社の保健室の常連でした。

今、思えば躁転していた時期だったので、そんなコンディションにもかかわらず、SM出会い系掲示板でフィーリングが合う人をひたすら探していたのです。その時はペットプレイがマイブームだったので、そういう系の募集投稿に返信をしていたのだと思います。

飼い主様とはそんな中で出会いました。

家に大型犬用の檻があると聞いて惹かれたのだ。その時は、心の底から人間ではない存在になりたかったのです。でも、奴隷のようにご奉仕に喜びを感じる余裕もエネルギーもありませんでした。

ちょっとした紆余曲折があって2週間ほど檻で飼ってもらえることになりました。飼い主様は仕事が変わるタイミングで1ヶ月ほど仕事が休みで、私はすべてが限界でクビを覚悟で会社から2週間の休暇をもらったのです。

大型犬用の檻は座っても頭がつかないくらいの小柄な私には少しゆとりがあるサイズで、横になって丸まるように寝ることもできました。マットレスと毛布があったので少し狭い以外は快適な空間でした。

季節はちょうど春先、檻の中での暮らしは静かで穏やかでした。
風が通るように開けた窓からは近くの公園の子供の声が聞こえてきて、飼い主様が仕事をしている時は檻の中でじっとしていました。
たまに檻から出されて、ペットトイレで排泄をして、玩具で快楽責めをされて遊んでもらいます。恥じらいもいらないし、言葉をしゃべることも求められません。ただ、ペットとして愛玩されるだけの存在でした。

『愛玩動物』という役割があって、愛玩されることで役割が果たせる。そして、犬だからそれでいいんだよと承認してもらえる。檻の中でじっと横たわっていてもいい。だってそれが犬としての在り方だから。それは人間から解放された幸せな時間でした。飼い主に玩具で遊ばれても快楽に塗れた嬌声を上げていればよいのです。遊んでもらって喜んだ鳴き声をあげているだけですから。

SMの形も、主従の形も様々ですが、信頼関係を築けていれば、こんなセラピーのようなペットプレイもあるのです。

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