たまに受ける質問「英語を習わせていいですか?」
神経発達症/発達障害のお子さん(未診断含む)を対象に評価や療育、相談の仕事をしています。
ご家族からたま~に受ける質問を紹介し、自分なりの考えを書いていきます。自分なりなので、参考までにとどめてください。
言語発達がゆっくりめの子どもの親から…
「(日本語の獲得がゆっくりなのに)英語を習わせていいですか?」
「お~習い事ですね♪楽しみですね♪……週にどのくらい通われるんですか?」
そう、私は頻度を確認します。
1時間の英語を週1~2回習う分には、日本語獲得にそう影響はないと思うので、「本人が楽しく学べるのであれば、良いんじゃないですか!」と答えます。
どのくらいの頻度であれば日本語獲得に影響を及ぼすかどうかは、知らないのですが、英語でエンジョイ程度であれば支障は来さないでしょう。
子どもが赤色を「レッド!」と発音し、それを聞いた大人が「おお~英語知ってるんだ!」と反応すると、大抵の子どもは誇らしい気分に満ちた表情をしている。英語をしゃべれるのはスゴイんだという共通認識があるのだろう。言語発達ゆっくりな子が大人の喜ぶ反応を引き出すために、英語であれことばを覚えて実生活場面で使ってみようと思うきっかけになるのであれば、良いことだと思う。
私はネイティブな英語を習ったことがないので想像でしかないが、外国人と接することも経験値アップだと思う。普段接することがないような人とかかわる機会を持つことにデメリットはないと思う。警戒心や不安が強かったりする子にとっては、日本人と単に見た目が異なるという理由だけで、外国人に対して漠然と不安や恐怖という気持ちを抱くことがある。子どもの英語の先生をしてくれる方なので、きっとテンション高くフレンドリーにジェスチャーや表情、声色といった表現を多用して会話をしてくれるのだろうから、子どもにとっては対日本人より相手が何を伝えようとしているか分かりやすい可能性だってある。
自閉スペクトラム症の特性を有するお子さんの中には、母国語の日本語よりYouTubeで見聞きした英語の方が早く獲得できる子がいる。私が担当してきた子のなかにも数十人はいる。そのような子は、いっその事、英語を獲得してから日本語に変換しても良いのではないかと思うことがある。
バイリンガル(2か国語を母語として話す)の子は、大人が話しかけてきた時の言語に合わせて対応する言語を決定するが、上記の自閉スペクトラム症の子は相手に合わせる時もあれば合わせないこともある。対人意識の問題だと思うが、そもそも日本語と英語を区別していない可能性もある。区別できている場合は、会話相手に合わせるより、今は英語モードで話そう♬といったその時の自分の気分を優先したりする。また、動物は英語で、その他は日本語で答えるといった自分ルール(日替わり)の場合もあったりする。
ちなみに、定型発達のバイリンガルの子は、3歳~就学前までの間に、2か国語を意識的に区別する力が身に着くと言われている。私の実経験で会ったバイリンガルの子どもたちも3~4歳で、2か国語を使い分けることができていた。
言語発達がゆっくりさんで英語を習うことに支障があると思われるのは、家族の主要言語が日本語で、海外に転居予定がなくインターナショナルスクールやプリスクール(未就学対象)に通わせているケースだ。(あくまでも個人的な見解です)
私が言うインターナショナルスクールは、授業はもちろんスクール内での生活は英語のみ使用する環境のこと。
上記のケースであっても、対応できる子どもは沢山いる。
だが、言語発達ゆっくりさんには荷が重いと思う。
言語発達にかなりの遅れがある場合は、1言語習得にしぼった方が良いだろうと私は内心思っている。
例えば4歳で会話レベル1歳代だったり、簡単な質問に対してとんちんかんな返答ばかりだったり、5歳で単語数語のみ獲得だったりとケースバイケースだが…。
子にバイリンガルの環境を与えるか悩んでいる方に、下記の情報を参考にしてほしい。
0歳代の赤ちゃんは、母国語を獲得して生きるために、どの言語の母音も聞き分ける力を有している時期がある。(←だからこそ、早期英語教育を施して英語特有の発音を聞き取る耳を育てようとする方がいる)
その時期を過ぎると、母国語を優先して獲得するために、聞き分ける力は母国語の発音に絞るようになる。生きていくうえで不要である音(母国語に含まれない音)をカットすることで、スピーディーに母国語を獲得できるのだと思う。
さぁ、言語発達の遅れがある子に、どんな環境を提供しましょうか。
私は反対だー!と言っているわけではない。
子の言語発達が遅れていることを理解しているがバイリンガルとして育てたいと望んでいる親に以下のような覚悟や対応ができる場合は、応援したいと思っている。
●子の言語能力や使う言語に合わせて、親もその都度日本語と英語を使い分ける。
●親の動機がぶれない。親が自分で下した決断(英語を習得させること)に対して常に不安を抱いていると、不安感が子どもに連鎖していくことがあり、子の情緒不安定さにつながる可能性がある。
●子どもの障害や特性の程度に合った環境設定や支援サービスを受けられるよう、親が関係機関にはたらきかけることができる。
●子どもが2か国語生活に苦しさや辛さを感じていないか、把握できる親。
親の勘が優れているとまでは言わないが、適度な直感があり、子どもの心情に気付ける親。
ちなみに、3歳以前のバイリンガルの子どもの発話能力は、母国語のみを使う(モノリンガル)子どもより、2~3か月遅れることはあると言われている。なので、バイリンガルに育てようと環境を与えて、日本語の獲得が僅かに遅れている程度であれば、慌てなくて良い。
まぁ3歳以前の言語発達2~3か月遅れを、支援者である私が行動観察で気づけるかと言われると全く自信ないのだが。
追加で、言語発達がゆっくりさんな子であっても、家族も英語を話せて近々海外へ転居する予定があるから早いうちに英語に慣れてほしいという目的でインターナショナルスクールに通わせるケースは賛成派だ。
そんなわけで、インターナショナルスクール通園中のかなり言語発達がゆっくりさんな子をどう導いていこうか悩む。
一般的な保育園や子ども園に転園してもらったところで急激に日本語発達がのびる確証はない。言語発達遅滞の要因が環境だけではない可能性だってある。生まれつき言語発達がゆっくりなのであれば、どこの園に所属していてもゆっくりであっただろう。ただ、わざわざ脳を混乱させることはないので、今後日本で過ごしていくのであれば、日本語を頻繁に聴いたり言ったりする環境に身を置いた方が日本語の経験値は上がると私は思う。私はね。