日本ハムが獲得濃厚?「台湾のエース」古林睿煬
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※長文
※マニア向け
※主観的選手レポート
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「やっと出たか」これが率直な感想だった。
10月19日付の日刊スポーツで『【日本ハム】今オフ海外移籍の可能性がある「台湾のピッチャー」こと統一・古林睿煬を獲得調査』との記事が出た。
8月中旬台湾では、日本ハムファイターズが最も積極的に古林睿煬(グーリン・ルェヤン)の獲得を目指していることが報道されており、このことは早くから周知の事実だった。
今季シーズン中の6月上旬、古林睿煬には日米の10球団近くがスカウトを派遣したと言われており、8月中頃には日本ハムファイターズが最も興味を抱いていると報道された。9月上旬にはMLBからタイガースとパイレーツが、NPBからは日本ハムとソフトバンクがスカウトを派遣する中、日本ハムが最多4人の球団関係者を派遣し、古林睿煬のピッチングを確認した。
9月中旬、NPBでは日ハム以外にDeNAとソフトバンクが興味を示していると報道されている。
そして、10月26日に日本ハムが古林睿煬の所属チームである統一ライオンズと年初から話し合いを行っていたことが明らかになり、11月1日付の日刊スポーツで古林睿煬が海外移籍制度の申請をしたと報じ、現地では統一ライオンズのGMがNPBの3~4球団が興味を示していると発言した。
古林睿煬はCPBL(台湾プロ野球)統一ライオンズのエースであり、現時点で台湾No.1の投手であることに異存はないだろう。
今季の成績は21試合に先発し10勝2敗、防御率1.66、125イニングを投げて150奪三振と高卒6年目にして、いずれもキャリアハイの好成績を収めている。防御率1.66はリーグ唯一の1点台で1位、10勝はリーグ3位、防御率にいたってはCPBL歴代3位の記録だ。
身長184㎝、体重84㎏、右投げ右打ち、来年の6月に25歳を迎える投手である。因みに、日本ハムでは万波、田宮や野村らと同学年にあたる。
CPBLでは外国人投手が各球団の主力を務め、CPBLの外国人枠3人全員を良い外国人先発投手にすれば優勝できるとも言われており、台湾人投手との差が激しいリーグである。
今季の防御率と勝利投手のランキング・トップ10のうち9人は外国人投手である。その中、唯一の台湾人で両部門に入っているのが古林睿煬だ。
彼はCPBLの中でも頭一つ抜けた存在であり、今後も台湾を代表し続ける投手であることは間違いないだろう。
古林睿煬の投球スタイル
ここからは筆者が独自にまとめたデータや「Rebas 野球革命」で無料で閲覧できるデータを参考に投球スタイルを紹介していこう。
球種は主にストレート、フォークとカーブを操るが投球の7割近くを直球が占める。その直球は最速157㎞を誇り威力十分で空振りも取れる。
因みに、現在の台湾人CPBL最速記録は158㎞と1㎞及ばないだけである。
フォークの球速は130㎞半ばで、落差、キレ共にNPBでも通用するだろう。カーブは打者のタイミングを外すのに効果的だ。また、シーズン中はほとんど投げていないが右打者の内角に食い込む140㎞半ばのツーシームも持っている。
直球の平均球速は147㎞と150㎞を切るが、これには理由があると推測する。
古林睿煬はカウントを取る球や下位打線相手にはストレートを8割ほどの力で投じているように感じる。これが常時145㎞前後である。
しかし、強打者相手や三振を狙う直球は150㎞を超えてくる。ここぞという場面で全力投球する一面はクレバーであるが、頭一つ抜けた存在ゆえにできる横綱相撲の側面もある。
威力、ノビともに欠点のないストレートだが、唯一の心配は回転数である。台湾では回転数を表示する球場が少なく今季投じた全てのストレートの回転数を見ることはできないが、回転数が表示される球場で登板した際のストレートの回転数は基本的に2000回転から2200回転ほどであり、多くて2300代の回転数を記録している印象だ。NPBの平均は2200回転程といわれており、ストレートを武器とする投手は2500~2700回転を記録することは珍しくない。
それと比較すると回転数が少なく、いわゆるホップ成分が少なく空振りを取りにくい球質の可能性がある。
しかし、奪三振割合(K%)約30%、奪三振率10.80と各数値は非常に高く、確実に三振を奪えることを証明している。今季パ・リーグの奪三振王で2位に26個もの差をつけた西武の今井達也の奪三振率9.71、奪三振割合約26%と比較すればその高さは明白だろう。
では、なぜあまり高くない回転数でここまで空振りを取れるのだろうか。これは古林睿煬のフォームに秘密があるのではないかと考える。
走者の有無にかかわらず、セットポジションのオーバースローから放たれるストレートはシュート回転などのクセがなく綺麗な縦回転でミットに納まる。その時の手首の角度は、真っ直ぐであり少しの傾きもなく真上から投げ下ろされる。そのフォームから生み出されるストレートの回転軸と球威が速球派にしては低い回転数を、補って余りあるのではないだろうか。あくまでもTV中継でしか投球を確認できておらず、いち野球ファンの推測の域を出ない点はご容赦願いたい。
コントロールは悪くなく、しっかりコーナーをついてくる。今季のストライク率は67%を記録し、これはCPBLの先発投手の中でも上位に位置づく。与四球(BB/9)は2.02は規定投球回達成者の中で2位だ。与四球割合(BB%)は5.39%と四球で自滅することはない。しかし、球威があるので高めのボール球のストレートで空振りが奪えたり、多少甘くともストライクゾーンで勝負ができたりと、針の穴を通すコントロールほどではないと言えそうだ。
1番心配なのはスタミナ面だ。今季は21試合に先発し125イニングを投げたが、これがキャリアハイだ。過去に100イニング以上投げのは3年前の2021年まで遡る。これは怪我体質の影響や、逸材ゆえに球数やイニング数の管理を球団から厳格にされているためだ。
今季も全ての試合を100球前後で降板しており、投げたイニングも最長で7回2/3であり、8回を投げ切った試合は1度もない。直近3年間では46試合に先発し100球以上投げたのは6試合のみだ(今季は4試合)。8回を投げ切ったのは2023年に2回あるが、9回を完投したことはキャリアで1度もない。また、今季の125イニングをNPBで比較するとセ・パ両リーグ共に18番目に多いイニング数にあたる。
以上のことから、1年間先発ローテーションを任せることは難しいのではないかと考える。また、NPBの年間143試合に対しCPBLは年間120試合と少なく、1年間を戦い抜く体力もより必要になってくる。それに加え、日本の生活環境並びにレベルの高い日本野球への適応や外国人枠での競争といったハードルの高い問題が存在してくる。
前述した、下位打線やカウントを稼ぐために投げる8割程度のストレートもレベルの高いNPBでは投げられなくなり、常に全力投球を余儀なくされ、球数だけでは判別できないスタミナ切れを起こす可能性もある。
しかし、それだけ酷使をされておらず肩も消耗されていないのが大きなメリットだ。来年25歳という年齢を考慮しても、これから投手としてのピークを迎えることは間違いないだろう。獲得後1年目は先発登板をするたびに一軍選手登録抹消をする、いわゆる「投げ抹消」で日本球界への適応と調整を行い、2年目には徐々に登板間隔を短くしていき、3年目に先発ローテーションを中5日ないしは6日で回るというような段階的な育成が必要になってくることが予測される。
先日行われた、台湾シリーズでは背中の張りを訴え3回で降板し、選出されていたプレミア12の代表も辞退するという不本意な形で今季を終えてしまったが、評価自体には影響しないと報道されている。
「台湾のエース」が来季はNPBのマウンドに立っていることを楽しみにして、筆をおきたい。
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参考資料
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冒頭写真はCPBL公式サイトより
11/8加筆