入院しました
鼓動
久しぶりにふとお腹が痛くなってきたと感じたのは、日本がオーストラリア戦の勝利に沸いたほんの1時間後だった。
常にお腹の調子が悪い私は、少し冷えると腹痛。少しストレスがかかると下痢と、常時お腹の調子がよくない。お腹を抱え込みながら歩むのが癖になってしまうほどだ。
そんな自分も大人になって数々のお腹戦争を戦ってきた経験からか、それともやさしさを補給する整腸薬のお陰か、ここ最近は急な腹痛が訪れるということはついぞなかったのだが、そいつは見えないだけでいつも私の影に潜んでいるのである。
此奴が普段と違うなと感じたのは、戦争開始から2時間ほど経ってからだった。今回の敵は痛くなったり、なくなったりと波が強く、
強い時はお腹がぎゅっと締め付けられるように痛くなってくるやつだ。
新手だった。
呼吸も荒くなり、痛みに合わせて吐き気も出てくるというこれまでにない豪胆なやつであったのだが、こういった剛気な猛者にも慣れというのは恐ろしく「いつも通り、トイレでうずくまって正露丸で一発やろ⭐️」と思ってた。そして甘かった。
それから5時間ほど経って、痛みに耐え切れなくなった私はついに禁断の救急相談センターに電話するに至ったのだった。
救急車
といいつつ、切羽詰まっているとは言えいきなり119コールができるほど勇者でない私は、ネットを元に救急相談センターというものを見つけ出した。時はすでに深夜になり、ここから朝までこの猛者と一騎討ちするというドM行為に走るか、救急車を呼ぶかの二択である。
最初に電話を取ってくれた担当の方を経由して、看護師さんに息も絶え絶え症状を説明すると、流石に数時間も痛みが治らないようであれば「救急車を呼んでみてはいかがですか?」という光明のようだが不安にもなるご提案があった。
そこで「わかりました。持ち帰って検討させていただいてから、こちらからまたご連絡させて頂きます、ガチャ。」
とならないのがこの電話の良いところ。
「私が連絡しますので、繋いだら直接話してください。」
うーん、なんとも話が早い。優柔不断さを挟ませない対応が超弱りまくっている今の自分には輝かしく見えてしまう。
いざ、「救急車が来る」という初めての一大事が訪れることになろうとは思いもよらなかったので、とりあえず病院で待たされるであろう暇つぶしの文庫本、保険証が入ったお財布のみを持って、救急車に乗り込むこととなったのだった。
サイレンが聴こえる間も、時折訪れるキリキリとした痛さに耐えながらも。
(続く)
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