![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/35201291/rectangle_large_type_2_f35ab2c8335fb25f307f10e0eb547c81.png?width=1200)
凱旋MC Battle vol.1の記録
トーナメント表
概要
伝説はここから始まった――。
自身もバトルMCとして戦極が主催するイベントに出場するほか、戦極の大きな大会では裏方のスタッフとして、また小さな大会ではMCバトルの司会としてかかわっていた怨念JAPが、2017年9月16日にイベントを主催した。
それが今やZepp DiverCityなど2000人規模の会場をチケット即完売させるほどの人気を持つまでに至った【凱旋MC Battle】である。その第1回は、収容人数(キャパシティ)100人ほどの渋谷FAMILYで開催された。
これに先んじて8月にはMC派遣社員が【MRJ Mr.日本語ラップ】を主催、また凱旋vol.1の翌日には17歳の女性ラッパーCESIAが【SLAVE vol.1】を、同じ渋谷FAMILYで開催している。それまでもその後も、戦極のイベントや若いオーガナイザーがイベントを初主催するときなどによく使われ、MCバトルヘッズの現場への入り口となっている会場である。
客の入りは出場MCが80名近くいたこともあるが、僕を含め見に来た客も数十人いて、会場は埋まっていた。
バトルのブレイクDJはSIONが一人で務め、現在も凱旋や戦極のアー写を手がける山崎奏太郎が写真を撮影した。
私がかかわることになった経緯
そして2017年夏に怨念JAPが凱旋vol.1の告知・宣伝をする際、「動画を撮影する人を募集している」と付け加えていた。バトルイベントをよく見に行っていた私は、おそらく観客の中にカメラマンや映像クリエイター志望の若者がいて、その中で意欲のある人がすぐ手を挙げるだろうと思っていた。
私はといえば、その1年ほど前からMCバトルイベントを見に行くようになり、せっかくスマホにカメラがついてるから、みんなが撮ってるから、YouTubeがあるから…という漠然としたきっかけで動画を投稿するようになっていたが、戦極主催のMC正社員さんから注意を受けたりしながら、公式がアップしない1回戦に出場したバトル初心者の映像を残し、YouTubeにダイジェスト動画を投稿しつつ、ご本人からツイッターのDMに連絡が来れば個別にその人のバトル動画をお送りするということを続けていた。こうしたやり取りをしていたMCの方が、半年後にバトルで優勝する姿を見て、それなりの意義を感じていた。
8月のMRJでもカメラを回させてもらったし、凱旋でも1回戦の出場全MCを紹介するダイジェスト動画をアップさせてもらえたら、という心づもりでいたので、怨念さんに「YouTubeチャンネルを作って配信するならちゃんとしたカメラマンを雇った方がいいけど、僕もたぶん撮らせていただくので記録としては残るから保険のように思ってもらっていいですよ」という話をしておいた。
しかし結局正式な撮影係は見つからなかったようで、僕がスマホで撮った動画がYouTubeに配信された。しかも凱旋の公式チャンネルの準備も間に合わず、僕のチャンネルからアップしてよいと怨念さんがおっしゃってくれた。これには、僕がこれまで1回戦ダイジェストの動画をイベント当日か翌日にはアップしていたことが、怨念さんのバトル動画への考え方と合致したことが大きいだろう。映像をちゃんとした業者に外部委託すると、当然のことだが編集・アップまでに数か月の時間を要する。それよりも視聴者からの需要を考え、イベント開催日から間をおかずに動画を配信することを怨念さんは選んだのだ。vol.1から約1年後に凱旋公式チャンネルとShota Tsujiさんというプロのカメラマンがそろってからも、他のイベントよりタイムラグを短くしてバトル動画がアップされるようになり、その傾向は業界全体に広がっていく。
1回戦&シード戦
1回戦第1試合に出場予定だったMCが仕事の関係で間に合わないとなり、本来2試合目だった白鯨 vs HYDO a.k.a. lil Acheで開幕した。高校生ラップ選手権にも出場経験のあるHYDOは、のちに【LIFULL】というイベントを主催する。
1回戦の出場者を見るとのちに凱旋やMRJ、ADDVANCE等のイベントで名を挙げ、戦極やUMB予選でも好成績を残すようになるpino、亞夢、MC龍、Mush(現Taishi)などがエントリーしている。またD The FreekyはLiMITのNiiSAN、デームはCity of GarbageのRARE KIDSであり、音源やライブメインで活動している覆(MASK)の二人(Vision a.k.a. Kyte & RE-YA)などもバトルに出ていた。
また関西勢がライブも兼ねて出場している人が多く、この時点から凱旋の重要なコンセプトとして東西のボーダーを越えるということが意識されていたのが分かる。
その中で優勝候補と目されていたミメイが、当時中学生だったtSuNeに敗れる波乱が起きる。こういった年齢や格のようなものの上下がひっくり返ることがあるのも、MCバトルの醍醐味である。
第1位試合目に出場予定だったMCは1回戦とシード戦が終わったそのブロックの最後に回されたが、結局間に合わず、エントリーしたけど呼ばれなかったLega-10(レガート)が出場、さらにシードされていた強敵T-Swaggと連戦する羽目になり、しかも「ヒーローは遅れて登場ってか」と遅刻したと勘違いされdisられるも、「俺はリハのときからずっといたし、ずっと待ってた」とフラストレーションを爆発させ、連勝した。
2回戦&3回戦
2回戦の注目カードは、TERA_Z vs T-Tongueである。8月のMRJに出場予定だったTERA_Zが諸事情により欠場となってしまった際、代わりに出場したのが怨念JAPであり、TERA_Zはこのバトルで会場を大いに盛り上げてその恩返しを果たした。
また若手注目株のSigto-Nと、その年のU-22王者9forとの対戦もスキルフルだった。9forは、Sigto-Nがリスペクトしている地元の英雄MOL53のラインを意識して引用する。
3回戦はベスト16による対決。
ストロームとtSuNeは神奈川、炉馬とTERUは関西の先輩後輩対決となった。
ビートアプローチや引用のセンスが光ったSHOHEI vs K-razy、Masa&トラヴィス・スットコ vs マーガリン、9for vs joelの3試合は怨念さんもお気に入り。
ベスト8
T-Tongue vs TERUはこの大会屈指のベストバウト。関東と関西の韻の踏み方やスタイルの違いが明確に出て、高レベルで交わった。「まずはPartyのやり方からレクチャー」やMasa&トラヴィス・スットコのライブを見ていなかったことをdisるなど、T-Tongueは現場ではステージの上以外の時間でもフロアでイベントを盛り上げることを積極的におこなう人である。
準決勝
準決勝1試合目のT-Tongue vs ストロームは鎌倉の先輩後輩で親交も深く、また前の月におこなわれたMRJ vol.1の決勝の再戦でもあり、熱い対話がなされた。
Masa&トラヴィス・スットコとキョンスはこの時が初対戦ながら、高いセンスがぶつかり合って好勝負を展開した。延長戦のビートを聴いてのMasaの冒頭の引用がばっちりハマる。
Masa&トラヴィス・スットコ vs キョンス
決勝
Masa&トラヴィス・スットコはこの日、間違いなくバトルにおいてもライブにおいてもイベントの主役であった。
活動が軌道に乗ってきたこの年の3月に活動を休止して、表舞台に戻ってきた1発目のイベント出演がこれで、休止中にもYouTubeのライブ動画で評価が高まっていたこともあり、観客の多くが彼を待ち望んでいた。そして彼は見事にその期待に応えた。その良さを最大限に引き出したのは、同じ神奈川県で仲の良いT-Tongueだったことも間違いない。
言うまでもないが最後に一応付け加えておくと、Masa&トラヴィス・スットコは現在Donatello、T-Tongueは現在T-TANGGという名前で活動している。
Masa&トラヴィス・スットコ vs T-Tongue
ライブ
Jphane Does (TERU & ミメイ)『Responsibility』
ライブはこの1か月前におこなわれた【U-22 MC BATTLE 2017】でベスト4に残りライブ権を獲得したにもかかわらず、TERUと二人でJphane Doesとしてライブがしたいからとその場ではライブを行わなかったミメイが、晴れてJphane Doesとして関東でライブを披露した。
また9forとワイジニアスの出番の最中に、開催日の約10日前に誕生日を迎えていた怨念JAPをサプライズで祝福。NIHA-Cの曲をリミックスした『21歳児』のオリジナルリリックに怨念JAPがうれし泣き。