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音楽の意味と解釈 −ヨルシカ月光再演レポ−

こんばんは。先日のライブを観に行ってきまして、なんとなく思ったこと、覚えていること、それから考えたことなどを書こうと思っています。

ライブの翌日洗濯物を干していると、白シャツにオレンジの染みが残っていました。サイゼリヤのミートソースはなかなか取れません。しかしそれを見て私は、明るくて良い色だと思いました。今回のヨルシカのライブグッズのカラーは濃い緑と明るいオレンジ色で、ラバーバンドもキーホルダーもショップバッグも購入したものが全部オレンジになっていました。なんとなく良い気分になりました。

現代にアーティストがライブを行う意味とは何でしょう。
それは曲がアーティストに帰属することの証明をするための儀式なのでしょうか。音源通りに演奏するだけの技術が確かに彼らにはあると思います。あんな速さで、正確に楽器を演奏し、歌うことのできる彼らはもちろんすごいと思うのです。

しかし、演奏技術だけで人を魅了しようとするのは、打ち込み音楽が盛り上がっているこの時代においては錯誤的だとも一方では感じます。そうではなくて、生で演奏する別の意味があるのだとしたら。

正直ライブに行くまで不安だったのです。後悔したくないという感情に近かったと思います。2019年の春、自分の下宿にあの箱が届いて手紙とともに鑑賞して以来、ずっとヨルシカを聞いてきました。ほとんど毎日聞いていたと言っても過言じゃないくらいで、もはやあの人たちの演奏を聴きに行く意味はあるのかと思っていました。でもそんなものは杞憂でした。

曲が続いていく中、最初は音源通りですごいなと思いながら聞いていました。何曲か終わった後、聴くことに少し疲れてスクリーンの歌詞を見ながら聞いていました。すると歌詞を初めて見るような気がしてきました。確かに私がずっと聞き流していたと言われればそれまでなのですが、映像や唄や演奏とともに新しく言葉に息が吹き込まれるような、そんな気がしたのです。

人生と同じように、作品にも賞味期限があるとしたならば、最初に鑑賞してからそれに慣れていってしまうことが作品の鮮度を落とすことになるのでしょうか。それは精神の糧となる一方で、当然のものになってしまうことです。けれどライブで新しく生命を与えられた音楽は、私の精神に新しい風を吹き込んでくれるようでした。作品の鮮度は、その鋭さとも言い換えられるでしょうか。刃物が使うごとに鈍ってしまうのであればそれを研いでくれるのがライブです。

作品にどんな意味を見出すのかは鑑賞者に委ねられています。何かを見て、味わってどう思うかは私たち次第です。冒頭の服に付いた染みですら、愛おしく思えるように。また作品として発表した以上それは作者の手を離れ、様々な意味に解釈されます。だからヨルシカのライブにも色んな人が来て、それぞれが各々の受け取り方をして帰っていくのでしょう。

でもだからこそ、作品は鋭利でなければならないと思います。その人の日常を切り裂くような。心に穴を空けられるような。誰でも解釈できる時代だからこそ、個人の生活感情を超えどこかで通底しているはずの人間の根源に迫れる何かが作品には必要だと思うのです。

鋭さという例えの性質は、私の日常を切り開いてくれる切なさの本質だと思感じます。切なさだけが私を違う世界へ導いてくれる感情であり、私にとっての芸術作品の価値です。

今日、「Crossroads」(1986)という映画を観ました。アメリカの音楽であるブルースをテーマにした映画です。ブルースもまた、ユーモアと哀愁という二面性を持った切ない音楽のように感じます。この映画の中で、ある老人が、

”The blues ain't nothin' but a good man feelin' bad, thinkin' 'bout the woman he once was with”
(ブルースは、昔別れた女を思う男の哀しみだ)

と言っていました。日本語にも青息吐息という言葉があるように、青という色味には人間の溜息を感じます。幸福や希望はただの影であり、人間本来の感情は孤独にこそあるのではないかと思えてきます。

正直これはあんまりヨルシカとも関係ないのかもしれません。しかし作品に込められた意味を知るためには、自分が知り得た情報を元に考えるしかなく、それはひび割れた心の傷口から吹き込んだ微かな空気の香りから外の世界を夢想するに等しい行為だと思うのです。
(春ひさぎの元になっているHit the Road Jackを歌ったRay charlesは「Blues Brothers」(1980)に出てきますし、案外的外れではないと個人的に思っているのですが、いかがでしょう)

夜の酔いに任せてここまで書いてしまいました。
ここまでの駄文にお付き合いいただいてありがとうございます。
それではおやすみなさい。

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