【ポケモンSV】円盤のポケモンについての考察と妄想
『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』(以降 「SV」と呼ぶ)にはスカーレットブック、バイオレットブックという奇書が登場する。
本書は200年前、ヘザーという博物学者が当時前人未到の地であったパルデアの大穴に探検隊を率いて調査、探索し、そこで目撃した生物および体験を書き綴った探検記である。
本書は本作のストーリーの根幹に関わる超重要アイテムであり、オーリム博士(S版)/フトゥー博士(V版)が幼少期から本書の世界へ憧れを抱き、魅せられた愛読書でもある──その憧れを募らせた結果、息子であるペパーを放ってまでタイムマシンを作り出し、パラドックスポケモンを古代/未来から転移させ、パルデアの豊かな自然や生態系を崩壊の危機に陥れることになるのだが(ストーリー最終章 ザ・ホームウェイより)。
……とはいえ博士がタイムマシンを作らなければコライドン/ミライドンとも出会えなかったと考えるとペパーを育児放棄したことには業腹であるが、その憧れへの執念は非常に不承不承ながら認めざるおえない。
博士はタイムマシンを非常停止させる鍵として博士の名前が書かれた本書を指定している。そこには夢を与えたのは本書だが、その夢を終わらせるのも本書というなにか因果めいたものを感じた。ただ、博士からしたら生涯をかけて開発したタイムマシンを止める資格があるのは幼少期から数十年分の思いが積まった本書だけだと思っていたのかもしれない。まさしく文字通りのキーアイテムであり、博士にとっての宝物だったという訳だ。
さて、スカーレット/バイオレットブックのストーリー上での話はこれぐらいにして。
それよりも本記事では本書の内容、特に最後のページの「■盤のポ■■ン?」を主題に語っていく。具体的には、前半はそれにまつわる情報の紹介を、後半は円盤のポケモンの能力についての考察と妄想を、語っていきたいと思う。ブックについての細かい解説は必要に応じてその都度入ります。
※以降、記事内に挿入されている画像はすべて『SV』にて撮影したものです。
それではどうぞ。
1. 円盤のポケモンって?
1. 1. スカーレット/バイオレットブック
本書、スカーレット/バイオレットブックは作中にて奇書と認識されている──上記の画像(レホール先生の授業)を参照──だけあり、荒唐無稽で支離滅裂な内容が盛りだくさんである。
例えば、ドンファンに似た大型で獰猛な(S版)/小型で残酷な(V版) 生物が生息しているとか、
食べればたちまち元気になる不思議な植物が自生しているとか、
最深部には見渡す限り一面の光り輝く宝石があるとか、である。
だが、そんな眉唾ものの内容も実際にパルデアの大穴の最深部であるエリアゼロまで行くことになり真実だったと分かる。本当に恐竜じみた/機械生命体じみた 生物が生息していたし、不思議な植物はヌシポケモンやテラレイドバトルで入手することができたし(作中のエリアゼロでは未確認)、最深部には巨大な六角形の光り輝く宝石が鎮座していたからだ。
よかったよかった、本書の内容は嘘でもデマカセでもなかったんだね! 謎はすべて解決だ!と、思いきや、そうはならなかった……。
まだまだ依然として未解決で不可解なページが存在する。
1. 2. 円盤のポケモン
それが、この「■盤のポ■■ン?」のページである。
幸いにも黒塗りの部分は簡単に推測ができるので文章は読むことができるが、挿絵に関しては意味不明。
惑星?が六角形の殻に覆われていて、その上にいるトカゲ?かなにかの胴体に冠が乗っかっているようである。挿絵の四隅には土星のような惑星がいくつか散らばっており、その様はまるで宇宙からの俯瞰視点のようにも感じられる。大穴の奥底のイラストとしてはあまりにもミスマッチな印象。まさしく、文章にある通りポケモンかどうかも分からない謎の存在。
果たしてトカゲと殻に包まれた惑星どちらがポケモンなのだろうか? とにかく今までのポケモンシリーズとは一線を画す意味不明さとSFホラー感を醸し出している。
(もっというと、絵を見る限りでは円盤というよりも球体のように見えるが……?)
以下に円盤のポケモンと関連すると思われる情報を羅列して記す。
①ペパーとのイベントの会話
エンディング後、ペパーとのイベントの際、スカーレット/バイオレットブックの話の流れから挿絵が入っているページとして「■盤のポ■■ン?」のページを紹介される。その時、ペパーから全部の本で「■盤のポ■■ン?」のページの文字がにじんで読めないとの話を聞くことができる。
本書の執筆当時、200年前にどのように本書を印刷したのかは定かではないが、少なくとも手書きではないだろう。
活版印刷など文字が比較的滲みやすい印刷方式が存在する──インクがのっている凸版を紙に転写させるため、紙によって輪郭部分が多少滲むためである※。しかし、それは活版印刷を施した文字全体に見られるはずで特定のページだけというのは考えにくい。
他にも印刷の際にインクや印刷機、紙などに問題があり、それが原因で文字がにじんでしまったということが考えられる。しかし、他のページには影響はなく、まるで狙い撃ったように「■盤のポ■■ン?」のページだけ、全部の本で文字がにじんでいるようである。たまたまの偶然にしては出来過ぎではないか?
それとも、ヘザーは文字がにじんでいることを知っていたが、文字のにじみを直せなかったために、そのまま出版するしかなかったのだろうか……?
(ここまでくると、円盤のポケモンの名前やそれに関する情報自体に認識を阻害する機能が備わっているとも考えられそうか……?)
また、黒塗りという作中の描写で言えば、楽園防衛プログラムと後述する仮称■■■という円盤のポケモンと同一と思われる存在が共通する。両者とも作中の描写において黒塗りのセリフ、テキストが見られる。
前者は楽園防衛プログラムに自我を乗っ取られたオーリム/フトゥーAIのセリフ中に現れる──上記の画像を参照──が、これはAIのバグや音のノイズの表現もしくは言葉として聞き取れる音ではないことの演出だと思われる。
後者は下記(④ 仮称■■■)を参照。
※(引用:活版印刷 魅力と品質における注意点 | 羽車公式サイト 紙・印刷・デザイン)
(引用URL :https://www.haguruma.co.jp/55500/?category=95343)
②「謎の記憶」
恐らく、円盤のポケモンと関連すると思われるページが上記の「謎の記憶」である。
「■盤のポ■■ン?」のページと同様、ヘザー(「■盤のポ■■ン?」では主語は「私」)は"はぐれて"と記述されていること、場所がエリアゼロの最深部であること、2点より両ページの事象は同時間帯に発生したと思われる──ただし、「■盤のポ■■ン?」では修飾語が"観測隊員"、「謎の記憶」では"隊"であり、表記に差異が見られる。(一人称が「私」で同一であることから「■盤のポ■■ン?」の人物もヘザーと解釈したが、別人の可能性も考えられる?)
左のメモには、上部と下部に六角形が多層的に重なった図が描かれており、中程には分数の計算式のような記述があり、それらの説明だろうか?メモ全体にはミミズがのたくったような文字が散見される。さらには、左上に他の文字より大きく書かれたタイトルらしき文字もある。
このメモはヘザーの筆跡らしいのでヘザーが書いたものだろう。しかし、彼はその時の記憶が無いようで覚えているのは、知らない場所で、誰かと話をしたようなこと、のみである。メモに記述された内容から考えると、その話というのは円盤のポケモンに関連するような内容だったのかもしれない。
だとしたら、作中に登場した人物の中で、円盤のポケモンについての情報を持っていると思われる人物は1人しかいない。そう、オーリム/フトゥー博士及びそのAIである。
ストーリー最終盤、楽園防衛プログラムを破り、タイムマシンの暴走を食い止め、オーリム/フトゥーAIを正気に戻らせると、オーリム/フトゥーAIは自身がタイムマシンの復旧システムの一部となっていることを悟る。そして、タイムマシンで古代/未来の世界へ旅立つことを主人公達に宣言し、タイムマシンの光の中へ消えていった。
これがオーリム/フトゥーAIの顛末であるが、果たして、本当に古代/未来の世界へ飛ぶことができたのだろうか?
記憶の欠落は過去のポケモンシリーズでも度々発生しており、『SM』および『USUM』では、フロンティアブレーンのリラ、エーテル財団のモーンがウルトラホールをくぐったことで記憶喪失となっている。他にも『ORAS』では、ハンサムが、『LEGENDSアルセウス』では、ノボリが、程度の差こそあれど同様に記憶喪失となっている──なお、ノボリが記憶喪失となった経緯は現状不明である。
これらの先例とヘザーの記憶喪失を比較すると決定的に異なる点がある。それはヘザーの記憶喪失は極めて部分的なものであるということだ。先例では、自分の名前や出身などしか覚えていないだとか、酷い例では、名前すらも覚えていないということがあった。これらに共通するのは全般的な記憶を喪失しているということである。対してヘザーの記憶喪失はメモについての記憶だけであり、まるで部分的に切り取ったような喪失の仕方である──でなければスカーレット/バイオレットブックなんて執筆できなかっただろう。
なので、先例とは違いウルトラホールが原因ではないと思われる。
では、何故記憶が無いのか?
話をしたという誰かに記憶を消されたのか、はたまた同時間帯に遭遇したと思われる円盤のポケモンの仕業か……。
記憶を消す能力をもつポケモンはユクシーが代表的であるが、同じように円盤のポケモンにも人の記憶に干渉する能力がもしかしたらあるのかもしれない。
③ページ選択欄
上記の画像は本書のページ選択欄である。
書物において著者プロフィールは本の末尾に掲載されるのが一般的である。しかし、「■盤のポ■■ン?」のページは著者プロフィールより後ろに掲載されている。なぜ、著者プロフィールを差し置いてこのページが末尾を飾っているのだろうか? これではまるで、このページだけ製本された後から追加されたような印象を受ける──意図せず紛れ込んだとも考えられる……? 仮に本当に後から追加したのであるなら、そんなことができるのは著者のヘザーか、本書の協賛であるアカデミーの関係者(特にアカデミー校長)だけだろう。
④仮称■■■
円盤のポケモンはエリアゼロを踏破した後、エンディング後であってもエリアゼロ内、さらには作中で会うことも、姿を見ることも、名前も確認することができず、本当に実在するのかすら怪しいところがある。探検記だけでしか言及されないのならヘザー嘘つき疑惑が再び浮上するだけだが……?
しかし、そこはヘザー。他にもちゃんと円盤のポケモンらしき存在を匂わせる証拠が存在する(ヘザーが書いたものではないが)。
エリアゼロに建造されている観測ユニット。
そこでオーリム/フトゥー博士が書いたものと思われる手記──下記の引用を参照──が読めるのだが、そこには「仮称■■■」と称される六角形が多層的に組み込まれた存在がいることが示唆されている(もっとも、称されると言っても黒塗りなので未詳である)。
この存在と円盤のポケモンが同一、すなわち仮称■■■=円盤のポケモンなのであれば、実在は確実視してよいだろう──円盤のポケモン、仮称■■■ともにメタ的に考えると意味もなく「六角形が多層的に組み込まれた」との旨の記述を一致させるとは思えないので同一の存在を指しているのはほぼ確実だろうと思われる。
ただそれでも一応、明言はされていないので別々のポケモンを指している可能性もある。
上記の引用から考えると仮称■■■がテラスタルを引き起こす原因と思われる。どうやら、存在するだけでエネルギーを結晶化させる性質を持っているらしく、恐らくエリアゼロの最深部にある巨大な六角形の結晶も仮称■■■が作り出したものと考えられる。
テラスタル関連情報で言えば、キラフロルは欠かせないだろう。キラフロルは図鑑説明(バイオレット版)によると、「毒エネルギーが 結晶化した 花びらはテラスタルの 宝石に 似ている」らしくテラスタルとの何らかの関連性が伺える。
実際、キラーメ、キラフロルはテラスタルと密接に関係している技、テラバーストの技マシンの素材「キラーメのけっしょう」を落とす。
因みに、テラバーストはテラスタル状態だとそのタイプに応じてタイプが変化する技であるが、この技はレベル習得するポケモンは一匹もおらず、技マシンのみで習得可能なこと、技マシンのナンバーで最後にあること、エリアゼロの第3、第4観測ユニットの2箇所で拾えること、以上三点から人工的に開発された技と考えられる。おそらく、開発したのはオーリム/フトゥー博士だろう。楽園防衛プログラム戦でコライドン/ミライドン1号が覚えていた技であり、何より博士はテラスタル現象の解明者でもある。
全く関係ないのにたまたま偶然テラスタルの宝石に似てしまったのか、それとも似たのは必然だったのか、いったいどちらか──とはいえ、前者はキラフロルがエリアゼロを主な生息地としている以上、可能性は薄いか……。
仮称■■■とキラフロル、果たしてどのような関係なのでしょうか?
少なくとも、テラスタルの宝石は毒エネルギーが結晶化したものと近いらしいので、ポケモン達の体に良いものとは到底思えませんがね……。
(どくタイプは大丈夫かもしれない)
1. 3. 情報まとめ
以上が、円盤のポケモンと関連すると思われる作中に用意された情報である。
「たった、これだけ?」と思う人もいるだろう。
そう、たったのこれだけである。
泣いても笑ってもこれだけなのだ。
本作は宝探しがテーマだからなのか、設定や情報を非常に出し渋っているきらいがあり、秘密主義なのだ。そのせいで、パラドックスポケモンをはじめとする考察が情報不足で難航しているのである。他にも準伝説の四災やパルデア帝国、パルデア各地に残されたボロボロの廃墟、古びた物見塔などなど、依然として多くの謎は解明されずに残されており、いずれも情報不足で考察は遅々として進まない(なお、四災については比較的進んでいる印象がある)。
もちろん、それは円盤のポケモンも例外ではなく、むしろテラスタルが関係している以上本作最大の謎と言っても過言ではないだろう。
2. 円盤のポケモンを考察と妄想
2. 1. 説の議論点
ここまでは円盤のポケモンに関連するであろう情報を見てきてもらった。ここからはインターネットやSNS上で見られ、個人的にも考えている円盤のポケモンについての説を2つ紹介しようと思う。
が、しかしその前に。
説を分かりやすくするために、説の主な議論点を取り上げようと思う。
エリアゼロに生息している古代/未来のポケモンであるパラドックスポケモンはオーリム/フトゥーAIによると「タイムマシンによって古代/未来から転移してきた」ようである。しかし、スカーレット/バイオレットブックにパラドックスポケモンが描かれている通り、彼らの存在は200年前から確認されている。では、オーリム/フトゥーAIの証言と矛盾する……? かといえばそうでもなく、オーリム/フトゥー博士は第3観測ユニットの手記にこう残している。
「あの本が 現実となる時は 近い」
という記述から読み取れるように、オーリム/フトゥー博士がエリアゼロに足を踏み入れた時にはパラドックスポケモンは存在しなかったらしいのである──だからこそ、オーリム/フトゥー博士はタイムマシンを作り出したのだと思われる。
つまり、この手記を信じる限りにおいては、オーリム/フトゥーAIの証言に矛盾はないのである。
では、200年前にエリアゼロに生息していたパラドックスポケモン達はタイムマシンも無いのになぜタイムスリップしているのだろうか?
以降、本記事ではこの疑問点をタイムスリップ問題と呼ぶこととする。
(また、他にも彼らはオーリム/フトゥー博士がエリアゼロに立ち入るまでの間にどこへ消えてしまったのか等の疑問がある)
このタイムスリップ問題にはペパーも言及しており、上記のペパーとのイベント内で次のように指摘している。
これらの疑問点を解決しうるのがこれから紹介する説である。
2. 2. 一つ目の説 「円盤のポケモンは様々な時間軸に干渉することができる」
一つ目は「円盤のポケモンは様々な時間軸に干渉することができる」という説。
これはシンプルにオーリム/フトゥー博士が作り出した「タイムマシン」という時間の流れを超える機械から着想を得た説である──逆にこの能力があったからこそ博士はタイムマシンを作り出すことができたのだと考えることもできるだろう。タイムスリップ問題を解決できる説でもある。
さらに、時間に干渉することができるポケモンの例(ディアルガ、セレビィ)が存在し、現象としても似たような例(『LEGENDSアルセウス』での時空の歪み)が登場していることもこの説の重要な根拠である。
また、UB(ウルトラビースト)などの平行世界へ飛ぶことができるポケモンもいるので、タイムマシンは平行世界から転移させているのではないか、とする説も見られる。
テラスタルオーブやタイムマシンの結晶が黒くなったり、輝いたりといった性質がネクロズマの特徴と似ていること、テラスタルをするときに光を吸収するような演出とネクロズマが光を喰らうとする性質が、行動として共通すること、二点よりネクロズマの体と円盤のポケモンの殻は、同質のモノではないかという説も出ている。
他にも『USUM』では、ウルトラワープライドではソルガレオ/ルナアーラに乗り、何千光年もの離れた別の世界へ飛ぶという、描写があった。これは光の速度を超えているので、実質的なタイムマシンとして働いていると考えられる。そのため、これもソルガレオ/ルナアーラもといネクロズマが過去と未来を部分的に繋ぐ力を持っていること、そして円盤のポケモンもそれと同質の力を持っている可能性の証拠となる。
つまり、円盤のポケモンもウルトラホールのような空間を経由して、時空間を自由に行き来できるのではないかということである。その場合、タイムマシンはその円盤のポケモン独自の空間に行くための鍵のようなモノなのかもしれない。そして、その扉を守る者が楽園防衛プログラムだったのではないだろうか。
2. 3. ニつ目の説 「円盤のポケモンは願望や想像を具現化する能力がある」
二つ目は「円盤のポケモンは願望や想像を具現化する能力がある」という説。
①「幻のポケモン イメージ」
こちらはスカーレット/バイオレットブックの「幻のポケモン イメージ」のページを発端としている。
これらはスカーレットブックでは、第二世代の準伝説である、スイクン、ライコウ、エンテイが合体したような挿絵で、バイオレットブックでは、第5世代の準伝説である、コバルオン、テラキオン、ビリジオンが合体したような挿絵が記載されている。
観測隊員は幻のポケモンを想像したのはなぜか、パルデア地方に(少なくとも現代には)生息していない三犬と三闘が観測隊員が幻のポケモンを想像にあたって選ばれたのはなぜか、三犬と三闘共に合体してキメラの様になっているのはなぜか、などなど疑問点を挙げれば切りがないが、一つ確かなのはこの挿絵のポケモンは存在しない可能性が高いということである。
スカーレット/バイオレットブック共に右ページの記述には、「どういう見た目かと 想像しながら 描いたそうだ」とある。よって、この挿絵は完全に観測隊員の願望であり、妄想と言えるだろう。つまりは、非実在のポケモンであるということだ。
実際、他のパラドックスポケモン、例えばイダイナキバやテツノワダチは、模写だけでなく写真付きで紹介されており、ヘザー達は実際に目撃したとも記載されている。だが、この幻のポケモンだけは想像で描かれており、後にエリアゼロを踏破した主人公達もこの様なポケモンは目撃していない。
なので、エリアゼロの謎のポケモンの特徴から推測したと言えども、どこまでいってもこのポケモンは観測隊員の想像に過ぎない──ヘザーは何を思ってこのページを本書に挿入したのだろうか? 普通に考えたら、写真等の根拠もなく想像だけのポケモンなんて記載したら、嘘や夢物語などと断じられても文句は言えないと思うが……?
しかし、メタ的に考えて、無意味にこの様なページ、挿絵をゲーム内に用意するとは考えにくいため、今後DLC等で登場する可能性は高いと言えるだろう。
ただ、前述の通り、このポケモンは非実在のポケモンである。もし、観測隊員が想像した通りにこの幻のポケモンが実在した場合、それはもはや新たなポケモンの創造である。そして、それを可能とするのが円盤のポケモンというわけだ。
②パラドックスポケモン
この説では、さらにパラドックスポケモンも人の想像によって生まれたと考える。
パルデアの大穴の最深部こと、エリアゼロにはパルデア帝国の時代から約2000年もの間、人々の願望と欲望が向けられてきた。昔から、エリアゼロの奥底には、この世のすべての物より価値がある財宝が眠ると信じられていた。この言い伝えを熱心に信じたパルデア帝国の皇帝は、隣国に対抗する力を得るために大穴へ大勢の人間を送り込む。約2000年前のパルデア帝国の皇帝により始まった大探索時代は、大穴自体の高すぎる探索難易度も相まって人々の大穴への欲望と神秘性を大層掻き立てた。
言い伝えを信じた者達は財宝について、あれやこれやと想像を膨らませただろう。パルデア帝国が遣わした幾多の冒険者が挑むも、誰一人として敵わなかったエリアゼロの最深部。そこには一体どんな財宝があるんだろうと。一人の侵入も許さないのは、過酷な地形という天然の障壁ゆえか、はたまた危険で未知なる存在と遭遇したか……。
そうやって人々が何百年間と想像し続けた結果、円盤のポケモンによってパラドックスポケモンが誕生した・・・・・・というのが、この説の筋書きである。
(パラドックスポケモンが、モデルのポケモンとタイプや姿かたち、種族値等が異なっていたり、タマゴ未発見であるのは、人々の様々な想像が入り混じった結果、創られたポケモンであるから、とこの説では解釈できる)
(エリアゼロ探索隊もといヘザーが望んだためにパラドックスポケモンは生まれた、とする説もある)
しかし、200年前ヘザーがスカーレット/バイオレットブックを執筆してから、状況は一変する。
大穴へ向けられていた人々の願望や欲望が著しく低減したのだ。それは、大衆がスカーレット/バイオレットブックの内容を信じなかったからだ。
前述の通り、スカーレット/バイオレットブックは作中にて奇書と認識されており、オカルト本としてもみなされていた。ヘザーが本当に最深部を踏破したのかどうかも有耶無耶になり、ヘザーは嘘つき呼ばわりされる羽目となる。このことはエリアゼロの神秘性を大いに失わせることとなり、結果として人々のエリアゼロへの興味関心は無くなってしまった。
そして、オーリム/フトゥー博士がエリアゼロに降り立った頃にはもはやパラドックスポケモンは創られなくなり、その姿を消した。
(これがこの説でのパラドックスポケモンはどこに消えたのか?についての回答である。もっと詳しく言うと、200年前頃パラドックスポケモンが創られる個体数が減少する→エリアゼロから逃げ出す個体がでる→月刊オーカルチャーに取り上げられる→創られる個体数は0になる→エリアゼロ内の個体数が0になる)
(コサジの灯台に月刊オーカルチャー4月号と5月号が残されていることから、少なくとも月刊オーカルチャーは博士がコサジの灯台を拠点にしていた時より以前には刊行されていると考えられる)
オーリム/フトゥー博士は、エリアゼロへ来て夢にまで見たパラドックスポケモンがいないことに絶望しただろう。だからこそタイムマシンを生涯をかけて作り出した。とはいえ、そのタイムマシンは円盤のポケモンの能力を部分的に再現したものにすぎない。
まず、タイムマシンは"タイムマシン"ではない。部分的願望実現器である。部分的とはパラドックスポケモンだけを創造できるという意味である。そして、それは円盤のポケモンの能力ではなく、テラスタル結晶を用いて作られたモノだ。
③テラスタル
円盤のポケモンは願望や想像を具現化する能力を持っており、その能力は人だけに留まらずポケモンにも影響を与える。それがテラスタルである。
上記のセリフはボタンがマジボス戦の中でテラスタルをする前に言う口上である。
また、本作のCMでポケモンの世界から来た男がテラスタルのタイプ変更について言及した時(上記動画では18秒から)、彼は「みんな好きに生きていい」と語る。
これらを見るに、テラスタルはポケモンにとってなりたいタイプへと変身する作用があると考えられる。そして、これも願望の具現化の一種と言えるだろう。
ポケモン一匹一匹が潜在的にもつ、願望を具現化することでタイプを変更する──テラスタルはそんな力こそが本質であると、この説では解釈する。
しかし、エリアゼロで見られるように木などの植物や機械などの無機物もテラスタルが可能である。特に秘伝スパイスが顕著な例で、キラキラと光っているし、エリアゼロ原産であるし、万病に効く魔法のような効能もある。この様な意志や意識を持たないモノにもテラスタルしたポケモンと似たような効果が与えられるのは不自然である。
だがしかし、それらもパラドックスポケモンと同じように人々に望まれたから生まれたと考えることが出来るのだ。
上記はスカーレット/バイオレットブックの「エリアゼロ全体図」のページである。
「昔から このエリアゼロの 最深部には 伝説のきのみや 貴重な鉱石などが 眠っていると」
この文言から察するにエリアゼロ調査隊とヘザーがまだエリアゼロに到達していない時に書かれた文章だろう。そして、エリアゼロへ実際に行くと、伝説のきのみは秘伝スパイスがあったし、貴重な鉱石はテラスタル結晶があったので、ヘザーの思い描いていた通りになっていたのである。
エリアゼロ調査隊が行くまで、エリアゼロに到達できた人物は誰一人いないのになぜこのように予想を的中させることができたのか?
そう、それこそ想像の通りに創られたからである。
そして、「それらを 守護者が 守っているという 伝説がある」という一文。
この守護者の伝説は上記の「財宝伝説」のページにて回収される。
「目も 開けないほどの 不思議で まばゆい この光こそが 財宝を 守る 守護者 なのであろうか?」
しかし、ヘザーは財宝を守る守護者が本当に宝石の光なのか疑問を持っている様子。
だが、ヘザーは後に出会う。真の守護者に。
④エリアゼロの守護者
それが円盤のポケモンである。
「宝石よりも 光りかがやいていた」
真の守護者は宝石よりも光りかがやいていた。
エリアゼロの守護者こと円盤のポケモン。
エリアゼロ内では願望と欲望をエネルギーにして何でも創造することができ、秘伝スパイスでもテラスタル結晶でもパラドックスポケモンでも文字通り何でもだ。昔は帝国のお陰でなにもしなくても極めて多大な願望と欲望が集ったので、エリアゼロこそが円盤のポケモンにとって楽園であった。
しかし、ヘザーが侵入してから状況は180°変わる。願望と欲望が集わなくなったのだ。そのせいで弱体化していく力。
そして、オーリム/フトゥー博士がやってきた頃には結果的に、テラスタル結晶しか創造できなくなってしまった。そのため、博士が一人でパラドックスポケモンと会うことをどれだけ願おうとも創ることは出来ない。よって、博士はテラスタル結晶からタイムマシン(部分的願望実現器)を作る必要があった。その過程で博士は円盤のポケモンと邂逅する(第1観測ユニット手記:左側)。その際、円盤のポケモンは一際強い願望を抱く博士に興味を持つようになり、テラスタル結晶を介して精神に干渉するようになる──キラフロルの結晶と似ていることからの発想。
博士がコサジの灯台からゼロラボに拠点を移してから、本格的に精神へ干渉するようになる。それに伴い博士が人間不信気味になっていく(第4観測ユニット手記:左側)。ゼロラボ防衛のために博士に楽園防衛プログラムを作らせる──黒塗りのセリフがあることからの発想。
博士の精神への干渉が完了し、その分析も終わらせたところで、博士に博士の人格をコピーしたAIを与えて・・・・・・とタイムマシンを止めるまで続きますが、大分妄想の域に入り込んでいるのでここいらで止めておきます。
(楽園防衛プログラムでは、コライドン/ミライドンが楽園の守護者でしたが、それは博士にとっての"楽園"であり、真の守護者は円盤のポケモンであったのだ・・・・・・という解釈)
⑤四災とコレクレー
思えば本作には、人の感情や願望を反映させたポケモンが多いように感じる。例えば、パルデア準伝説の四災やコレクレーなどが挙げられる。四災は恨みや妬みなどといった人の負の感情が宝に宿り蓄積した結果、ポケモンとなった存在であるし、コレクレーもコインに染みついた情念から生まれたポケモンである。
四災に関しては、外から来たポケモンであり、それまでは宝としての体を保っていたのにもかかわらず、王様の欲望にあてられた途端、四災は厄災と化した。
この厄災化は王様の欲望が一際強かったから、とも考えられるが、物欲や所有欲などの欲望は妬みや恨みなどの負の感情からは遠いように感じる。それでなぜ、厄災化してしまうのか? もはや感情や欲望なら何でもよかったぐらいにまで負の感情が蓄積していたのか。しかし、それなら東の国からわざわざパルデアまで来て、王様に宝を売りつけ金貨にしてやろうという商人自身の欲望に、反応したはずである。(まさか、この金貨がコレクレーに?)
四災は雪や土石などの自然を纏っているが、纏う自然の統一感が無い。それぞれ、雪、土石、枯れ葉、炎。王様の城で取引されていたらしいが、かろうじて城内にあると思われるのは炎(灯り)ぐらいだろう。他は城内にあったら不自然なものばかり。一体どこから調達してきたのか。そもそも纏わせる必要があったのか。宝自体がポケモンになるのではダメだったのか。などなど疑問は尽きないが、おそらく四災と商人もパルデア地方に足を踏み入れた時点で円盤のポケモンの影響を直接的にしろ間接的にしろ、少なからず受けていただろうと思われる。
⑥コライドン/ミライドンの扱い
この説において、扱いに困るのがコライドン/ミライドンの一号と二号で性格が違うこと、コライドン/ミライドンが遺伝子データや行動パターンから分析するとモトトカゲの古代/未来のすがたであることがわかっていること、この二点である。
前者は、同じポケモンを望んだのに、なぜ個体差が生じるのかという疑問にぶち当たる。かろうじて反論するなら、オーリム/フトゥー博士が一号を転移させた時と二号を転移させた時とでは、精神状態が異なっており、後者に行くに連れて人間不信な状態になっていたから、となるだろうか……。
後者は、創られたポケモンが、なぜモトトカゲと遺伝子や行動パターンが類似するのか、という疑問が浮上する。
3. まとめ
前半は円盤のポケモンの情報を後半はそれにまつわる説を紹介しました。
前半の「1. 円盤のポケモンって?」は考察と言えそうですが、後半の「2. 円盤のポケモンを考察」には多分に妄想があったと思います。特に④エリアゼロの守護者。
この願いを叶える能力説が当たっていたとしても、この能力は万能が過ぎるので、力に制限かもしくは条件が課せられると思います。
また、願いを叶える能力説は、タイムマシンの解釈が難しく、博士がパラドックスポケモンを望んでいたのなら、なぜ円盤のポケモンはその願い自体を叶えなかったのか、という疑問が浮上します。なので、タイムマシンをなぜ作る必要があったのか、を考えなくてはなりません。
博士にとって、タイムマシンとはパラドックスポケモンと出会うための手段にすぎないモノであり、目的ではありません。目的は楽園を作ること。スカーレット/バイオレットブックの内容が現実となった、3人で幸せに暮らせる楽園。
そこで、本記事では円盤のポケモン側のエネルギーが足りないためにパラドックスポケモンを創造できないから、という解釈としました。
「■盤のポ■■ン?」のページの挿絵にはほとんど触れませんでしたが、個人的にはあの絵は壁画かなんかを書き写したものではないかと思っています。
スカーレット/バイオレットブックの他のポケモンのスケッチを見るに鉛筆に似た筆跡であるし、「謎の記憶」ページのヘザーも同様です。一方、円盤のポケモンの挿絵は随分と精巧に描写されています。その精巧さは「謎のプレート」や「秘伝スパイス」等のページと遜色ないどころかそれ以上と言って差し支えない程のものです。 円盤のポケモンを前にしてこの様な精巧な挿絵を描けるでしょうか? 少なくとも描画中は身の安全が担保されていなければ難しいように思われます。
この説なら挿絵の四方に惑星の様なものが描かれていることにも多少説明がつきます。あくまでも壁画であるので抽象化や誇張した表現により円盤のポケモンの実態と差異があったとしてもおかしくはない。なのでこの挿絵は円盤のポケモンの実物を模写した絵ではないと思います。
果たして、正解はどうなるでしょうか?
ポケモンプレゼンツで答えが垣間見れるかもしれませんね。
4. おまけ
その1. 月刊オーカルチャー
作中で見れる月刊オーカルチャーの「パルデア未確認ファイル」は4月号(No.04)から10月号(No.10)までであり、1〜3月(No.01〜03)、11、12月号(No.11、12)を見ることが出来ない。未確認のナンバーの5つの内、一つはコライドン(ツバサノオウ)/ミライドン(テツノオロチ)であるだろう。もう一つはスカーレット/バイオレットブックに描かれた三犬合体/三闘合体だろうか──パラドックスポケモンとして登場すると思われる。
ほか3つは全くの不明であるが、DLC等で新しく登場したパラドックスポケモンがこの枠に掲載される可能性はありそうだ。
これは個人的な想像ですが、バージョンの違いによる出現するポケモンの均一性から、以下のようなポケモンが新パラドックスポケモンのモデルとなると思われます。
スカーレット版では、ドラパルト(V版限定600族)とオニゴーリ&ユキメノコ(分岐進化)。
バイオレット版では、フワライド(S番限定)。
ちなみに、それぞれのバージョン限定ポケモンがモデルのパラドックスポケモンは以下のとおりです。
スカーレット版では、ハバタクカミ(ムウマ: V版限定)、トドロクツキ(ボーマンダ:V版限定600族)。
バイオレット版では、テツノコウベ(サザンドラ: S版限定600族)、テツノイバラ(バンギラス:S版限定600族)、テツノブジン(サーナイト&エルレイド)。
なお、サーナイトとエルレイドはバージョン限定ポケモンではありません。
その2. 「謎のプレート」
上記画像はスカーレット/バイオレットブックの「謎のプレート」のページである。
エリアゼロにも挿絵と同様のプレートが鎮座している。
エリアゼロのプレートではスカーレット/バイオレットブックの挿絵で岩で隠れていた右半分を見ることができる。しかし、エリアゼロのどこを探しても挿絵のプレートの下にある文字が描かれた長方形のプレートが見つからないので、おそらく紛失しているのだろうと思われる。
左半分には下に正三角形、上に二等辺三角形、そしてその頂点が重なっている謎の記号が描かれており、記号の右には00と意味深な数字?が描かれている。
右半分には、プレートについての説明と思われる文章と、各地に小さく点が打たれたパルデア地方が刻まれている。この小さい点はパルデア各地の街の位置と一致し、コサジタウンやピケタウンなどの小さい街から、テーブルシティやハッコウシティなどの巨大な街まで、すべての街を網羅している(この画像からだと、マリナードタウンは点があるか判別しづらいが、一応ある)。
そして、中心のパルデアの大穴には十字が記されている。