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OIST Science Challenge

沖縄科学技術大学院大学、通称OISTという大学をご存知でしょうか?

通常の大学とは異なり博士課程のみを設置していて学部がないため偏差値至上主義、学部の学歴主義の日本ではあまり有名ではないですが、2011年に設立されてからアカデミアでは頭角を表している新進気鋭の大学院です。

そのOISTを学部生や修士課程生が体験できるOIST Science Challengeというイベントに参加してきましたので、その体験談を書き留めておこうと思います。

OISTとは

はじめにOISTについて簡単に説明しておこうと思います。OISTは上述したように沖縄科学技術大学院大学という正式名称で、5年制の博士課程のみを設置している大学院大学です。設立されてからまだ10年ほどしか経っていないためまだまだ成長段階ですが、そのあり余る(?)予算と独特な運営方針で破竹の勢いで成長して、数年前にはNature Indexという良質な論文ランキングで研究者あたりの正規化ランキングで東大を抜いて日本一になったほどです。

そんなOISTですが、学部がないことの他にも多くの特徴があります。最初に目立つことは学内公用語が英語で留学生や海外出身の先生が多く在籍していることです。その他の大学のシステムもアメリカ風になっている部分が多くあります。

また、学部学科を設置せずに研究室=Unitを分野に関係なく配置していることも特徴です。これによって異なる分野のコラボレーションが起こりやすいそうです。
また、ラボローテーションでは自分の専門ではないUnitに1つは参加しないといけず、全体的に分野の転向をしやすい雰囲気なようです。

そして、なんと言ってもお金持ちです。学振みたいな高倍率なものを取らなくても、生活費や学費が支給されます。それ以外でも学生に対するサポートが非常に充実しており、経済的な理由で大学院へ進学することを諦めなくてもすみます。

Science Challengeについて

Science Challengeは学部生や修士課程の学生がOISTの博士課程の生活を体験するというプログラムです。2022はオンラインでの開催でしたが、例年ならばOIST負担で無料で沖縄旅行ができるプログラムです。
リサーチインターンのような研究体験ではなく、例年はわかりませんが実験をすることもなかったので、大規模なオープンキャンパスという印象でした。

選考について

この記事を読んでいる人の半分くらいはOIST Science Challengeのことを知りたい人で、残りの半分くらいはScience Challengeのことは知っているけど選考が意味不明なのでそのことについて知りたい人だと思います(適当)。

選考はテーマ(2022は「科学と多様性」)に沿ったスライドとエッセイを提出するのですが、そのスライドの方が指定がざっくりしていて良くわからないという人が結構いると思います。自分もよくわからなかったのでネットの海を徘徊していました。

まず、このスライドはScience Challenge最終日のプレゼンテーションで使います。期間中に手直しする時間はいくらでもあるので口頭で発表することを前提とせず、読む資料として作ってしまって良いと思います。
内容は人によって千差万別なのですが、テーマについて論じている人と自分の研究テーマを説明している人がいました。私の場合は、自分の研究経験で多様性がどのように役に立ったか、みたいなことを書いて研究の内容についてはあまり触れませんでしたが、具体的な内容を書いても問題ないようです。
審査項目に創造性や科学に対する熱意とあるので、できればテーマに関連させつつ自分の活動を紹介していくのが良いのではないかと思います。

また、選考について気になることといえば倍率だと思います。はっきりした情報はわかりませんが、3-5倍ほどだという噂でした。辞退者もそこそこ出たみたいなのでそこまで倍率が高いわけではないようです。
スライド自体も提出した段階ではそこまで作り込んでいるわけではなさそうな人が多かったので、めちゃくちゃ力を入れないと受からないというわけではなさそうです。

参加者について

参加者は日本人が多いです。アジアから来ている人もいましたが、大体日本の大学に通っている人です。コロナの影響というわけではなく例年そんなものらしいです。

Science Challengeへの参加を躊躇う理由として英語だからということを挙げる人が多い印象を受けますが、ぶっちゃけ参加者の英語レベルはそこまで高くないです(留学生を中心に異様にうまい人もいます)。オフィシャルな場以外では日本人同士は普通に日本語で話していましたし、オフィシャルな場でも分からなくなったら日本語で質問したら日本語で答えてもらえます。日本語絶対に許さない、みたいな雰囲気ではないので英語が苦手でもあまり困らないと思います。

参加者の学年はB1からM2まで色々でした。強いて言うならばB3とB4が多かったと思いますが、学年を気にせず参加しても良いと思います。大学は東京大学がダントツで多く、次に上智大学が多かったです。ですが、地方大学も含め色々な大学の人が集まっていたので出身大学も気にせずに参加できると思います。

プログラムについて

プログラムの内容としては大きくわけて「OISTの紹介」「プレゼンについて」「テーマについて」「交流」の4つに分けられます。

OISTの紹介は設備紹介やラボツアーなどOISTの博士課程についての紹介です。臨海実験所的な場所で飼っている様々な生き物を見たり、工房的な場所で実験機材の制作を依頼できることの説明を受けたりしました。ラボツアー
は自由に行けるわけではなくOISTが指定したラボを数グループにわけて見て回る形式でした。
印象的だった部分として、学生寮が家賃が安いのに非常に広くて綺麗だったことと工房の機材がとても充実していたことです。今回は案内されませんでしたが、大型の実験装置やスパコンも学生が自由に使えるようで学生の研究に対するサポートが非常に手厚いと感じました。

プレゼンについては、最終日のプレゼンに向けてプレゼンのコツや修正をしていく時間です。OISTの大学院生のサポートを受けながらプレゼンを改善していくことができるので、非常に勉強になります。最終日のプレゼンでは優秀プレゼンが表彰されたりします(筆者はHonorable mentionという佳作的なやつでした)。

テーマについては今年は多様性についての公演を聞いたりワークショップに参加したりしました。サイエンスにおける女性の地位向上的な話やマイノリティになったときにどうすればよいかみたいな内容です。今の大学生くらいの世代はあらゆる場所でその手の講習は受けているので、よく聞く話ではありますが自分がマイノリティになったときの行動を考えてみるというワークショップはあまり受けたことがなかったので面白かったです。

最後に交流についてです。参加者同士で仲良くなる場はかなりあって、二日目にはOnline Nomikaiなる飲み会が開催されたりしていました。昼休みや放課後にGather(RPGみたいなUIのウェブ会議サービス)で集まっておしゃべりしたり、終了後に近くに住んでいる人で集まってリアルで会ったりもしていました。自分の大学で博士課程を意識している人が少ないという人は他の大学の人と知り合いになれて色々な話が聞けたりします。

最後に

OISTのScience Challengeに参加した内容を書いてみました。OISTへの進学を考えているけれども不安だと言う人は参加してみると色々な疑問が解消されると思います。そうでなくても、非常に楽しい時間をすごせるのでぜひ参加してみてください。
この記事が参加の後押しとなれば良いなと思います。

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