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池袋がんこFOREVER

ここのスシ屋は日本一
スシ食いねェ スシ食いねェ スシ食いねェ!
アガリ アガリ アガリ ガリ ガリ ガリ
──シブがき隊「スシ食いねェ!」

よう、俺だよ。今回の話はラーメン屋の話だ。

行きつけの店は潰れると悲しい。たしか仏教の経典にも書いてあることだな。生老病死、麵屋閉店。その中でも、特に大学に通っていたころ、同じくらいの頻度で通っていた(語弊)店がいよいよ閉店する、ということでたまらず筆を執った。思い出の話だ。

店の名前は「一条流がんこラーメン 池袋赤丸」。「一条流がんこラーメン」はかつて会員制/紹介制をやっていた店で、ディープな立ち位置は今も変わらない。実のところ、俺自身、友人の強いプッシュがなかったら一生行く機会のなかった店かもしれない。

大学ではいわゆる部室のあるオタク・サークルにどっぷりだった俺は常に部室で暇を持て余し、部室のスピーカーでYMO流したり、漫画を読んだり、マウンテン・デューを飲みながらぼんやりしたり……といった充実した時間を送っていた。

そんな折、サークル同期のT君と何の気なしに昼飯を食いにいくことになり、「ラーメン屋にアテがあるんだけど」とチョイスされたのが西早稲田のがんこラーメンだったのだ。自分で紹介しておきながらどこまでも不安なような、なにやら一物隠すような感じだったT君を不穏に思いつつも、たどり着いた西早稲田がんこ。

隠れ家的……といったら聞こえがよすぎるだろうか。なにやら黒い店、外から何の店か全然わからない。黒い布に囲まれた入り口に鎖で吊った牛の骨。開店のサインらしい。呪術めいている。

中に入ったら入ったで、アットホーム……といったら、うーん……なんというか、工房的な……そういう店内だった。掃除はしているが、行き届いてない。カウンターの上のほうに、何だか知らないがキーホルダーとかが置いてある。壁には何やら系譜図。のれん分けの一覧らしい。

ランチタイムサービスで、味玉とネギだけ乗せたラーメンが600円かなんかだったと思う。大学生としては願ってもない価格設定だった。

で、肝心の味だが、これがすごいしょっぱかったのだ。

こんなしょっぱいラーメン、食ったことない!俺は完全に面食らった。(麺も、食らった……)

帰り道、ラーメンの味の衝撃に言葉少なになった俺の足取りは重く、T君は「しょっぱかったでしょ……」とすまなそうにしていた。すまなそうにさせたことは、申し訳ない。

とはいえT君、ラーメンには一家言ある男で、気づけば1日3食ラーメン食ったりしていたような、信頼のおける男……なんやかんやで彼の根気強い勧めがあり、西早稲田、池袋、といった「がんこラーメン」を何度か食べていくうち、次第に忘れられない味になっていった。

というのも、「がんこラーメン」の「頑固要素」の一つは「無化調」であり、化学調味料不使用をモットーにしている。スープはしょっぱいながら味の屋台骨には食材由来の豊かな旨味がきいていて、握った拳で殴られたようなパワフルさが味覚を揺さぶるのだ。

そうして、時は流れ、T君をはじめサークルの同期のほぼ全員が「がんこラーメン」を食べ、後輩に半ばミームのような形で店の存在が広まり……といったことを経て、更に時は経ち……我々も大学を出て、各々働くようになってしばらく経つ。

がんこにもしばらく行ってないな……なんて思っている中、池袋店の閉店がアナウンスされた次第だ。

かつて池袋店の店長であるルイス氏が「弟のフェルナンドに店を譲ります」(?)と発表したが、フェルナンドという男はおらず(???)、ちょっとイメチェンしたルイス氏が少し業態を変えて新装開店しただけ(?????)だったりという事件があったが、今回はマジで閉店っぽい。「しばらく」がどれくらいの期間なのかわからないが……

もう「悪魔※1」の仕込みはしていないらしく今あるだけのスープで終了、残りは醬油ラーメンだけの提供で、「スペシャル※2」も今日(6/23)で最後だそうだ。(専門用語がワッと出たので下記に解説しておく。がんこラーメンの世界観の理解の助けにしてほしい)

※1「悪魔」:通常ラーメンとは別の、特にしょっぱいスープの特殊ラーメンのこと。おいしい。白悪魔、黒悪魔、赤悪魔?があったはず。「天使」もいる。
※2「スペシャル」:主に日曜か祝日に、企画もの的なラーメンが出ることがあった。過去は「クリスマススペシャル・ロブスターラーメン」「すっぽんラーメン(先着で生き血酒付き)」などなど、極まったラーメンを食えた。俺も後で知ったが、ここで写真が見れる。
■おまけの解説:池袋がんこのはす向かいには「回し鮨 若貴」という寿司屋があり、延々とシブがき隊の「スシ食いねェ!」が流れていて、待っている間洗脳されることから、個人的には池袋がんこのテーマソングは「スシ食いねェ!」なのだ。

ということで、俺は今日、スペシャルを食べに行く。閉店の話も、スペシャルの話もT君が教えてくれたので、無論一緒に食べに行く。改めてがんこラーメンを教えてくれたことへの感謝をもって、終えたいと思う。思い出はいつもきれいだけど、それだけではお腹が空くので、ラーメンを食べるのだ。

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