散文 2 -feel close to you-

うねうねと、自分の意思とはまるで関係なく波打つお腹。

を、見るたびに、ああここに今もうひとり、人間がいるのだと、改めて思う。

大きく膨らんできたお腹を見てもなお、それはあくまでも不思議であって、神秘であって、完全に完璧に理解することはこの先もないのかもしれないなあ、と。思う。

書いた詩に名前をつける、ということがどうも、昔からすごく苦手で、生み出した作品たちが自由気ままに、読むひとの心の中で自分の名前を持って、記憶の奥底にでも残ってくれればいいと願うのだけれど、実体をもって生まれてくるこの子には、私は名前をつけないといけないのだ。なんとしても。

それは、生まれてから死ぬまで、長い長い時間の旅を、もって生まれた身体と心と、一緒に遂げる、最初の贈り物。

そんな、ちょっと大げさなことを考えながら、波打つお腹に手を当て、こっそり話しかけてみる。

その、理解しがたい不思議は、けれどまぎれもない幸福感で、私をほんのりと包んでくれる。

私たちがひとりとひとりになる日まで、あとほんの少し、同じ世界を分かち合おう。

#散文 #名前 #不思議

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