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もうすぐ5月だっていうのに〜2019.4〜5青森編 #1

東北はとっても広い

今回の青森初出張は何度かリピートで出勤をしている仙台のお店の日程の後。というわけでわたしは仙台駅から新幹線「はやぶさ」に乗ってまず新青森に向かうことにした。

それで気づいたのが、東北の中核都市である仙台→新青森間の時間はほぼ1時間半であり、これは東京→仙台間の時間とほぼ同じということ。東北はとっても広い。

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仙台と青森の出勤の間には2日の休みを挟んでいる。1日目は移動後、弘前公園の名高い桜を観に行って青森市内の自腹で予約したビジネスホテルに宿泊、2日目は出勤前日ということでお店が用意してくれる場所に泊まって翌日の出勤に備えるという形で予定を組んだ。観光を楽しみながら複数箇所の出張を重ねるという「さすらいスタイル」(夏目命名)じゃないと、7連勤連続なんてとってもじゃないけどやっていけない。ただこのやり方は寂しがり屋にはオススメできない。ひとりで旅行したり、ご飯を食べたりするのが苦にならない人向けだと思う。

前のエントリーにも書いた通り、新青森についた第一印象は「寒っ!!!」「なんで4月末に雪が舞ってんの?!」というものであり、それ以降、約10日に渡ってこの予想外の寒さに苦しめられることになった。わたしは寒いのが大の苦手で基本11月〜3月は北への出張は遠慮していたのだけれど、ううむ、GW前でこれとは。やられた。

津軽弁と寒風に揺れる弘前の桜


タクシーに乗って青森駅近くのホテルまで(新青森と青森はなかなか距離がある)移動してチェックインを済ませたら、大きな荷物を置いて徒歩で青森駅へ。

青森駅前はシャッターが下りているのも目立ち、県都の中心市街地としてはやや寂しい街並みが続く。その中でひとつこの街のいいところを見つけた。海が近くて、港がある。同じ理由でわたしは長崎の街も大好きだった。どんなところでも、街が海に向かって開いている、ただそれだけでなんとなく歩いていて心が晴れるような気がする。きっとお魚も美味しいだろう。

青森駅から弘前を目指して乗った奥羽本線普通電車は下校帰りの高校生でけっこう混んでいた。制服姿の高校生に囲まれていると、わたしはなんだかタイムマシンに乗りこんだものの途中でマシンが壊れて時空の歪みに迷い込んだような感覚にいつもなる。立ち戻る地点はもはやどこにも存在しない。

「……んだんだ」「んだべ?」

はっ……!これがあの津軽弁?!

そう、彼らはリアルに喋っていた。わたしは東北から九州まで地方を巡るうちにお年を召した方がその地方の言葉を喋るのを聞くのはある程度慣れていた。ときおり意味を取るのに苦しみながらとりあえず笑顔でやり過ごすということはあったものの、若者がここまで訛りのきつい言葉を話すのを聞いたのははじめてだ。

ずいぶん遠くに来たんだなあと思っているうちに、電車は弘前に到着した。日本一の桜はもうすぐ。

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『弘前さくらまつり』の会場である弘前公園までは弘前駅から少々歩く….….のは、いいのだけれど。

やっぱ寒すぎるやろ!!(何度目?)

なるほど東京の公園でも3月の末頃に何が楽しいのか桜の木の下にブルーシートを敷いてダウンコートを着込んで震えながら缶ビールを飲むということはままある。でも昨日はここ青森と東京の中間にあたる仙台で桜が暖かい風に煽られて散っていくのをのんびり眺めて完全に油断していたわけで、まこと「北東北の桜の名所を訪れる時は真冬の装備で臨むべし」という教訓が残った。


ただやはりこの日は例年に比べても相当に寒かったらしく、ブルーシートを敷いて酒宴を開いている人たちは少数の地元の大学生と思われるグループがまばらにいるのみ。桜のつぼみはパッと見たところ7分咲き程度で、弘前公園のお堀が花びらで埋めつくされピンクの絨毯のような『花筏(はないかだ)』になるまでは数日はかかるみたいだった。「あー少し早かったねえ」とは、この翌日に会ったお店のオーナーの言。それにしてもここの桜はずいぶんと枝が低く、花が大きい。豊かな花弁の数々が目の前に迫ってくるよう。

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ところで青森といえばりんごで、そのりんごの県内の主な生産地はここ弘前。弘前の桜が日本一と呼ばれる理由にはりんごが関わっているらしい。これはその後に接客した何人かのお客さんが教えてくれたことだけれど(地方のお客さんというのはこういうご当地ナゼナニ情報を進んで教えてくれるのである)、弘前の桜はりんごの手入れの技術を桜に応用して管理されているとのこと。桜とりんご、なかなかふつうは結びつかないよね。

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お城の周りを歩いたり、写真を撮ったり、あんまりにも寒いので屋台のテントでおでんと暖かいカップ酒を頂いたりして小一時間。東京と仙台と青森と、一年で二年分くらい桜を見たなあ……と、この時は思ったけれど、実はこの後さらにもうひとつオマケがつくことになる。

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おゆうはん!

さて再び青森市内。
わたしは旅先の居酒屋だのBARだのにわりと躊躇いなく入る。時々人に驚かれるけれども、それはわたしにとってとても自然なことなのだ。もちろんそれでたまに面倒な目に会うけど。少しだけ挙動不審になるけど。
夜の寒風に身体を震わせながら「新町通り」を歩く。東北と言えば日本酒、熱燗、それに、せっかくはじめて青森に来たのだから、青森っぽいものを食べなきゃ、ということで郷土料理の居酒屋さんの暖簾をくぐった。
「ひ、ひとりで……」
「あらさひとり!よぐぎたね〜」
店内は津軽三味線のBGMが流れていた。

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たとえば愛媛で鯛を食べた時や、姫路で穴子のお造りを食べた時や、博多でイカを食べたときのように、ある場所で口にしたある一口が、その食材のイメージをガラッと変える、ということがあって、そういう幸福な時が青森でもあった。
ホタテがめーっちゃうまいのである。まじで。
わたしは貝は好きだけど、ホタテを美味しいと思ったことはこれまで正直あまりなかった。他の貝と比べて歯応えがなく水っぽく微妙な生臭さがある、という印象があり、高いお金を払ってまで食べるほどのものかな?と思っていたのだけれど。

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ウ、ウマー!!!
ミルキィー!!!

そう、ミルキーで噛むたびに旨みが口の中に溢れて、でいて生臭さなんて少しもなくて、めちゃんこうまい。刺身の他に郷土料理「帆立の貝焼き」もいただいてなんともごきげん。熱燗を頂いてさらにごきげん。もちろん他のお魚のお刺身も美味しい。ひとりで飲んだってこんなに幸せ♡

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2軒目は近くの横丁で。
お客はわたしひとり。けっこう曖昧な状態になっていた。
「おねえさんひとり?どちらから?」
「東京からお仕事できました♡」
「へぇ〜、珍しいねえ。なんの仕事で?」
青森の、特に飲食や観光の人は相手がよそのものだと知るとすぐに共通語よりの言葉に切り替える。もちろん津軽弁を雰囲気作りに使う場合は別だけども。あるお客さんは言っていた。青森の人はその辺奥ゆかしいから。
ところでわたしは女将の質問に5秒くらい考えて、こう答えた。
「舞台のお仕事です。踊ってます♡」
「へぇ〜、もしかしておねえさんハーフ?きれいだし、背が高いねえ!」
「あっやっぱりわかりますか?母がブラジルなんですよ〜。でも生まれた頃からずっと日本なんで日本のことしかわからないんですけど〜」
ちなみにこれは完全なる嘘八百で、夏目は福井と長野のハーフであるにもかかわらず寒さにめちゃくちゃ弱いという特に何にも面白くない出自の人間である。まっ、思うに……もっと根本的なところで嘘をついているのでこの程度のことは枝葉のことじゃない?また10日後にはこの地を離れるのだし。だいたいわたしにもわからない、わたしが真に何者なのか。

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こちらのお店で頂いたのは「せんべい汁」と、もずくがに、青森の冷酒セット。

せんべい汁という料理の名前は知っていたが、これまたイメージを裏切られる味だった。出汁の染みた南部せんべいはフニャフニャしているかと思いきや歯応えがあり、すいとんみたいで、シンプルに美味しい。ホッとする味だ。
「美味しい……」というと、女将さんは嬉しそうに、「あら、そう?これレシピを真似て作ったの。もともと八戸の方のだから」という。
聞けば、おなじ青森でも青森と八戸ではまったく文化が違うらしく、津軽出身の女将にとっても、せんべい汁は異文化のものであるらしい。そういうことはよくある。他県の人間からは見えづらい同県内の地域の差異。
でもいずれにせよこのせんべい汁は美味しい。

どうせ仕事は明後日からだし、ということで、正直なところその後の記憶はあやふやで、もしかしたら、女将にカミングアウトしてしまったかもしれないし、していないのかもしれない。
何はともあれ、はじめての青森の夜は楽しかった。寒かったけど。何度も言うけど。

(青森編 #2につづく )

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夏目あん
全国を旅するニューハーフ風俗嬢。 東京の専門店で働きつつ、各地のお店にゲストとして出勤し、ついでに旅をします。 こちらは旅行記になります。エロをお求めの方はまた別にブログを用意しています。