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無痛分娩を試みた者として思うこと

出産してもう8ヶ月も経ってしまっているが、小池百合子東京都知事が無痛分娩の助成金を出すと報じられているのでせっかくなので書こうと思う。

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このnoteに書いてあること
・私の出産がどのような経過をたどったか
・無痛分娩を試みた者としての率直な感想
(注:あれこれ書いていますが、医療従事者ではなくあくまで素人の所感なので参考までに見てください)
パートナー、ご家族の方へ
私が感じた無痛分娩のメリットデメリットを書いていますが、だからと言ってご本人に無痛分娩にしたほうがいいしないほうがいいということは一切口出ししないでください。産むのはあなたではない。
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※メリットデメリット含め、今私が調べた限り赤ちゃんポストで有名な慈恵病院の無痛分娩のページがとても充実していたので貼ります。


産んだ病院は都内の大学病院を選んだが、「高齢出産だし、ICU、NICUがあり何かあった時に助けてくれるはず」「無痛分娩に対応している」が主な理由だった。

妊娠するまで全く知らなかったが妊娠が判明した後のスケジュールが結構タイトで、都内の人気の病院は妊娠8~9週目で予約しないと埋まってしまうのだ。8週と言ってもピンと来ないかもしれないがやっと胎児の心拍が確認でき、まだ大きさは1.5cmくらいである。

焦って調べてみると初産は無痛分娩を行っていない産院があったり、そもそも対応していない病院も多いことが判った。出産及び出産にまつわる全てのものが怖くて仕方なかったので無痛分娩対応はマストだった。

大学病院で産みたいと思ってもいきなり予約できるわけではなく、これまで通っていた婦人科から紹介状を書いてもらわないといけない。ここでもひと悶着あり、他の方と比べるとかなり軽度ではあるもののつわりで体調が悪い中仕事もしていたのでこのあたりのセルフサービス感は結構しんどかった。(当たり前だがそのあたりのプロセスを誰も懇切丁寧に教えてくれないし産院を決めたり予約してくれたりしない)


私が選んだ病院では計画無痛分娩が採用されており、簡単に言うとあらかじめ出産日を決めてその前日に入院し陣痛促進剤と麻酔をコントロールしながらお産に臨む形式である。
(都内の無痛分娩ができる病院の多くはこのかたちが採られており、24時間対応している病院はまだまだ少ない認識)

この「計画無痛分娩」が考えていたより難しいものだった。そもそもお産に時間がかかる初産で陣痛が来ていない状態から陣痛促進剤の力だけでスムーズに産むのは、少なくとも私にはできなかった。
ちなみにたまたま同じ病院で計画無痛分娩を試みた知り合いが2人いるが私を含めて3人とも全く違う経過を辿ったものの、結果的に3人全員が緊急帝王切開となった。

私の場合の緊急帝王切開になるまでの過程をなるべく簡潔に書く。

1日目

陣痛促進剤を入れ始めて分娩準備スタート。順調に陣痛が来たため麻酔を入れる。その後陣痛促進剤を増やしていくも子宮口が開き切らず、また胎児も降りてこずこの日は一旦解散。

2日目

麻酔が効きすぎる印象があったので途中から麻酔を減らしてもらいながら本格的な陣痛を待つ。経過に変化がないため助産師の方が夫に私の脚をマッサージするように指示。(オキシトシンが発生することによる陣痛促進を期待して) 助産師さんの期待通りお産が進み、さらに人工的に破水させる。子宮口全開までいかず、胎児も降りてこないがせっかくここまで粘ったので1時間だけ待ってもらう。が、胎児が全く降りてこず緊急帝王切開となった。


こう書くと「そんなに時間がかかるなら自然分娩のほうがいいのでは?」と思う人もいるかもしれないが、過去に戻れるとしても私は無痛分娩を選ぶ。
そもそも自然分娩の場合臨月になって日常生活を送っている中で陣痛が来る、もしくは破水するなどしてから病院に行く。こんな「いつ来るかわからない状態」など私には耐えられない。もちろん臨月で遠出することはないが、近所のスーパーに行ったりコンビニに行ったりした時や真夜中に破水、みたいなことが起きない確証はない。
また、冒頭書いたが出産がとにかく怖かった。何もかも。自分に人間が入っていることも、入院することも、確率は低いとはいえ母子共に死ぬことだってあることも、陣痛の痛みも、産んだ後の体のダメージも何もかも。少しでも恐怖をなくしたいから麻酔をしてほしいと思う気持ちは誰にも否定する権利はない。
他のメリットとしては、もともと麻酔が効いているところにさらに増やせばいいので帝王切開への移行もスムーズだった。
計画無痛分娩を試みたから帝王切開になったという可能性があるのか、自然分娩でも結局帝王切開になったのか、それは誰にもわからない。わからないが我が子は3,800g越えのビッグベビーだったので術後あらゆる先生や看護師の方から「こんなに大きいんだから帝王切開だったのも納得でしょう?」という雰囲気を感じた。(あくまで所感)
立ち合い出産を希望していたため陣痛室で夫と二人でお産が進むのを待っていたが麻酔が効いているので苦痛を感じる場面はほとんどなく、モニタリングされている胎児の心拍の音を二人で聞きながら非常に穏やかな時間が過ごせた。今思い返しても尊い時間だった。これが何よりのメリットかもしれない。

24時間無痛分娩に対応している病院だったら陣痛を感じた時点で土日でも夜間でも入院して、そこから麻酔の処置ができるのだろう。何となくだがこっちのほうがお産に時間がかからなそうである。
ただ、一度無痛分娩を試みた者として言うが、ほとんどの無痛分娩で採用されている硬膜外麻酔はする方もされる方も大変で、しかも打ったら終わりではなく適切に効いているか副作用は出ていないか定期的に確認せねばならず、24時間対応となると麻酔科医が何人いても足りない状況が安易に想像できる。

硬膜外麻酔イメージ図↓

横浜市立大学附属病院周産期医療センターのHPより記載。https://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~shusan/birth/epidural/


帝王切開の途中も麻酔科医の方がずっと私の経過を見守り、励まし、途中途中適切吐き気止めや鎮静剤など適切な処置をしてくれた。

もともと麻酔が効きやすいのか全身麻酔ではないのに切開が始まった瞬間眠たくなってしまい、麻酔科医の方が話しかけ続けてくれた。
「なんで麻酔科医になろうと思ったんですか?」と聞いたら「産婦人科医になりたいなと思ったけど僕はそんな器用ではないので、麻酔科医として出産をサポートしたいなと思った」というようなことを話してくれたことを覚えている。確かに彼は陣痛室でもずっと全然降りてこない我が子に「頑張れ赤ちゃん」と励まし続けてくれた。正直、担当の先生より心強かった。


強引に話を本題に戻すと、他の医療行為同様、麻酔をして出産に臨む権利は全ての妊婦さんに認められるべきであり、妊婦さん本人がメリットデメリットをしっかり理解した上で選べばいいと思う。

一方で「無痛分娩」というと簡単そうに聞こえるが、病院側には高度な医療技術と多大な人的リソースが求められることはたった一度無痛分娩を試みただけでわかった。病院側にも医療従事者の方々にも当たり前に適切な報酬が支払われるような仕組みになるのは大前提で、無痛分娩が一般的になることを希望する。
そういうものひとつひとつが少子化対策の一助になることだろう。

尊い命の誕生の場面、全ての出産が少しでもより安全に幸せなものになりますように。

好き勝手書き散らしてしまいましたが、以上です。


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ユカリ
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