70年代の雰囲気を愉しむ。ビートルズがいなくなった空白の音楽シーンで。["永久保存"名盤アルバムランキングトップ20]
はじめまして、こんにちは。サブスク世代でバイト三昧の若輩者、
n_aqと申すものです。
今回は、個人的、"70年代"アルバムランキングを発表します。そこそこ真面目なランキングとなっています。
70年代のアルバムランキングなのですが、このリストは、変わりゆく時代背景、空気感を10年単位で考慮しており、1970〜1979年にリリースされたアルバムを対象としています。
この企画の主題はアルバムランキングを発表することです。副題では、数ある名盤から時代の雰囲気を読み取ってムードを感じたいなと、70年代のイメージに沿ったムード音楽としてアルバムを聴くことで、名盤の隠された一面を覗いてみようと思っています。
ルール : 同アーティストの重複あり。ライブアルバムも選出の対象とする。コンピレーションの企画盤は外しました。また、邦楽のアルバムは対象に含まれていません。
70年代の名盤は、60年代のポピュラー音楽界に巻き起こった怒涛のビジネススタイルの変革に端を発します。60年代、廉価版であるシングル盤中心の売り方ではなく、特にビートルズの影響で、アルバムを一つの作品と見なす風潮が生まれ、いわゆる名盤の道標が示されました。ミュージシャンたちは、アルバムというフォーマットで作品を発表しようとの傾向がより強くなった70年代です。必然的に良いアルバムの作品が多く生まれ、音楽ビジネスがより大きな産業となっていきました。
70年代の音楽シーンとは、その時まで想像もされていなかった新しいジャンル、例えばパンクやディスコやエレクトロニカなどが突然変異のごとく勃興した年代となっています。また、まだまだ、50、60年代の名残りが目立つ70年代ですので、クラシックなムードが漂う成熟したロックはルーツ的な回帰が盛り上がりつつ、60年代にビートルズを中心とした、ロックバンドによる新たな音を開拓するという試みを引き継いで、プログレッシブロックなんて生まれました。そんな、60年代を経て、より多様化した70年代の音楽シーンですので、アーティストの音楽性がアルバムごとに急激に変化することはしばしばあり、わかるやつにだけ分かればいいという風潮になってきます。いわゆる、尖った音楽というものが増えてきて少数の"分かる"層にはカルト的な人気を誇る一方、多くの人々には理解されないということが起きました。70年代にはエルヴィスやビートルズなど、ほぼすべての音楽好きに広く支持されるようなミュージシャンは現れていません。古き良きアメリカへの懐古趣味を持つ人はオールドスタイルの一辺倒になってハードロックなどに拒絶をしてしまうなんてこともあり、一部のアーティストは特定のジャンルで、ファンに求められるそれなりの音楽をリリースしなければ受け入れられないという認識を持っていました。しかし、そんな中でも保守的にならず、いろいろな音楽性を取り入れた作品を作るアーティストもいます。その結果新たなファンを獲得したり、失ったりするのです。ただ、僕の視線から見ると、保守的な作品も、実験的な作品もいずれも70年代の音楽というジャンルです。アーティストの苦労も勘案しながら、フラットに聴くことを心掛けました。聴こえてくる音楽が最高なら、個人的にはそれでいいのです。
一応、この企画では、僕は70年代の多様化した音楽をいろいろちゃんと聴いて、アンダーグラウンドな存在を認めながら、メジャーどころも聴き、ニッチなジャンルにも足を踏み入れ、いろいろな要素を主観的に判断してランキングにしました。まぁ、少数派の尊重といっても、このランキングで多分カンが1位になることは信用問題的に無いと思いますけども。(ジャケットが怖い)
このランキングは、いわゆる、「名盤と呼ばれているリスト」ではなく、僕が「名盤」と予想したものたちです。名盤と銘を打つのであれば、こんな感じでしょうという感じです。()
"このランキングの特徴"としては、メロディ最重視です。このムードが良いとか、悪いとかも重視してますが、結局は僕の主観であり、好みです。いい音楽とはメロディアスな旋律に行き着くと思うし、音楽と雑音の違いは、時の流れを古き思い出のごとく、印象的な空間を彩ってくれる付加価値としてのムード性の有無です。
ビートルズが1970年のアルバムレットイットビーをもって解散しちゃったじゃないか!あれほどの才能はもう現れることはないのか?!
70年代を過ごしたすべての人に、
2020年代のコロナ下から捧げたいです。
以下、主観的な基準です。
① : 衝撃 ② : 快さ ③ : インスピレーション ④ : 心地いい空間
⑤ : 残留 ⑥ : (+α)
20位 : Berlin (1973年)
第20位には、元ヴェルヴェッツアンダーグラウンドのリーダー、ルーリードのアルバム『Berlin』を選出します。
当時流行った、いわゆるグラムロックの異色作です。
70年代きっての内省的なアルバムで、60年代のヒッピー騒ぎとかちょっと後のディスコパーティとかとはかけ離れた大人しいグルーヴで詩人は静かに歌います。
当時、東ヨーロッパの社会主義陣営に囲まれて、絶海の孤島のようにただ一つ、聳え立つベルリンをモチーフにしているアルバムなのですが、壁に囲まれた都市の閉塞感に対して、サウンド自体はそこまで窮屈なバラードでも、荒々しいロックというわけでもなく、多彩な音像が丁寧にコラージュされていて、ゆったりとしたアコギのリフ主導の落ち着いた子守唄の部などは優しさを感じることができ、グラムロックらしいホーンセクションも、SEもどこか喜ばしいものです。
ベースの使い方に定評があるルーリードですが、ここでも存分に低音を楽しめます。崩れた歌声と丁寧な伴奏の対比がとにかくいいです。他のグラムロックにとってはサウンドの要で、主役であるはずのエレキギターがこのアルバムでは目立ちません。電子音やシンセサイザーではなく、アコースティックな楽器による響きです。このアルバム軸にあるのはアンプラグドなロックです。比較的ポジティブなサウンドです。とても内省的なだけで、ギャーギャー言う音楽がヒットする70年代のシーンでは異彩を放つ佳作です。
1. 衝撃 ☆☆☆
2. 快さ ☆☆☆
3. インスピレーション☆☆☆
4. 心地いい空間 ☆☆☆☆
5. 残留 ☆☆☆
(6. 呟く歌 ☆☆☆☆☆)
19位 : Burnin' (1973年)
第19位には、ジャマイカ出身のバンド、ボブマーリー&ウェイラーズの、『Burnin'』を選出します。
個人的に本命の名盤です。1960年代から活動していて、70年代に、世界のスターダムに登り詰めたボブマーリーのウェイラーズ時代のアルバムです。
彼はトラックメイカーの天才で、音楽的側面もさることながら、社会派な歌詞のプロテスタント性が特徴で、抑圧に対して人々の自由を主張し、心の開放を訴えるなど、ジャマイカのみならず世界中の抑圧される人々の、精神的支柱として存在していました。
ここで特筆すべきはボブマーリーによる音楽のムード音楽的側面です。熱帯の地域ならではの陽気なムードは、たしかに開放感があります。
レゲエの楽しいリズム感や、曲のメロディアスさと、アレンジの面白さは類を見ないほどオリジナリティが高く、何回聴いても飽きがこない音楽は珍しいと思います。ただ、一概にレゲエの音であるからこのアルバムが名盤という訳ではなくて、構造が天才的で明け方か夕方のような雰囲気が麗かな"Restman Chant"といったナンバーを含んでいるために、このアルバムは特別であると考えます。Eテレっぽい、Eテレが好きそうな音像です。
1. 衝撃 ☆☆☆☆
2. 快さ ☆☆☆☆☆
3. インスピレーション☆☆☆☆
4.心地いい空間 ☆☆☆☆☆
5. 残留 ☆☆☆☆
(6. リズム感 ☆☆☆☆☆)
18位 : Young Americans
(1975年)
第18位には、イギリスのロックミュージシャン、デヴィッドボウイの
『Young Americans』を選出します。
70年代当時、カルト的人気を誇るロックスターデヴィッドボウイから、嗅覚が鋭いそのカルト的信者へ贈られた、"ロック"じゃないアルバムです。
いや、ロックンロールではありますが、その実期待されているような、ギターリフをガンガンさせる曲調ではなく、"大人な"純然たるムード音楽です。この音楽性の変わりように、当時のデヴィッドボウイファンは驚かされたでしょう。熱心な信者ほど、裏切られた思いを抱いたようです。まぁ、変化こそ、ボウイの軸にあり、ミュージシャンとして音楽に取り組む姿勢なのですが。
このアルバムで、デヴィッドボウイが取り入れたのは、50年代風R&B、ファンク、ジャズですが、それらは明らかにブラックテイストなのです。アルバムの最終曲である"Fame"なんて、マーヴィンゲイや、ファンカデリックを彷彿させるファンクサウンドで、彼らの代表曲に対しても引けを取りません。ルーサーヴァンドロスと共作した曲"Facination"なんかはソウルフルなヴォーカルを効かせた夜想曲です。黒人音楽のアレンジを取り入れ、貪欲にサウンドを追求した、ボウイの慧眼に感服します。他の白人ミュージシャンより5年は先駆けていると思います。
後々、ヒップホップのサンプリングネタとして定番となるようなフレーズがある曲はさすがに強いです。
1.衝撃 ☆☆☆☆
2.快さ ☆☆☆☆
3.インスピレーション☆☆☆☆
4.心地いい空間 ☆☆☆☆☆
5.残留 ☆☆☆☆
(6.ルーツ ☆☆☆☆☆)
17位 : Agharta (1975年)
第17位は長いキャリアを誇るトランペット奏者、マイルスデイヴィスのバンドによるライブアルバム、『Agharta』を選出します。
これはジャズではない。(ルネ・マグリットのパイプの絵)これは多分心臓発作です。アルバムの攻撃的な音から連想しました。
暴走している即興演奏は、普通のコンサートとは明らかに違います。曲を聴かせるというより、延々と音を垂れ流すことで、アンサンブルの圧を観客にぶつけていくスタイルです。予定調和も何もない、ただ運のみに頼る非決定性アルゴリズムの展開のように思えますが、根底に、ファンキーなグルーヴが確実に支配しています。というか自然界のふるまいや、人間の意思が介在するものはすべて非決定性なので例えが不適切でした。
暗闇の中、爆音で聴くと気持ちいい音楽の代表選手です。このアルバムのアートとその音像の世界は前衛的すぎて何が何やら理解できないし、和音進行とか全く無視してそうで意味がわかんないのですが、とにかくこのアルバムのノイズは気持ちいいです。音楽理論を超えた音楽で、バッハも激怒です。アガルタはいつか世界を救う音楽なのでしょう。
あとは、Wikipediaを見てください。これでもかってほど詳しく、ライブ録音の背景が書いてあります。
1.衝撃 ☆☆☆☆☆
2.快さ ☆☆☆☆☆
3. インスピレーション☆☆
4. 心地いい空間 ☆
5. 残留 ☆☆
(大音量 ☆☆☆☆☆)
16位 : A Song For You
(1972年)
第16位には、アメリカのデュオ、カーペンターズの4枚目のアルバム、『A Song For You』を選出します。
あまりにもメロディアスすぎて逆に敬遠されがちなカーペンターズですが、メロディアス最重要をモットーとするこのランキングでは欠かせません。この『アソングフォーユー』はカレンカーペンターの完璧な歌声が堪能できるオリジナルアルバムの一つで、70年代のポジティブなムードを代表するバラード曲がいくつも収録されている奇跡が起こっています。"Top Of The World"は僕は70年代の曲の中で2番目に好きです。
ちなみに60年代で1番好きだったのが、ローリングストーンズの"She Is A Rainbow"だったのですが、まぁそれは別の話なので。
このアルバムの中には凝ったギターソロなんかも出てきたり、インストナンバーもあったり、単調でなく、一筋縄ではいかない名盤の類いです。彼らのベストアルバムとは気色が違いますよ。
カーペンターズは純粋無垢に誰でも楽しめる音楽だと思います。それでも好き嫌いはあるでしょうが、好きな人は圧倒的に好きです。カーステレオにセットして、夜のアメリカのハイウェイを一走りしたいです。
1.衝撃 ☆☆☆☆☆
2.快さ ☆☆☆☆☆
3.インスピレーション ☆☆☆☆☆
4.心地いい空間 ☆☆☆☆☆
5.残留 ☆☆☆☆☆
(6.旋律の良さ ☆☆☆☆☆)
15位 : Boston (1976年)
第15位は、アメリカのロックバンド、ボストンのデビューアルバムの『Boston』です。
70年代アメリカンロックの名盤の一つです。
マサチューセッツ工科大学出身のギタリストがエフェクトなどを自作し、真正面からギターの音圧にこだわった成果がこれです。
エレキギターの多重録音により、実現した分厚いアンサンブルは身を委ねたくなり、自然にヘドバンで拍を取ってしまいます。アメリカンロックのバンドにしてはやたら激しいですが、ハードなギターの分厚い音像を提供するという試みは、以前から他のバンドも行なっていましたが、このボストンのアルバムが出たことにより、その技術は一定の終着点に辿りついたと認識されたに違いありません。まぁ、この後パンクバンドが出て来るのですが。
このころピークに達した多重録音という技術は、シンセサイザーを使いたくないロックバンドにとっての譲れない一線だったのかなと思います。ライブ演奏者、パフォーマーとしての矜持でしょう。
このころのEDMが世界を席巻している現代からすればおかしなこだわりです。そんな、いかにもロックな情熱はとっくに絶滅しています。
1. 衝撃 ☆☆☆☆
2. 快さ ☆☆☆☆☆
3. インスピレーション☆☆☆☆☆
4. 心地いい空間 ☆☆☆☆
5. 残留 ☆☆☆☆☆
(6.多重録音 ☆☆☆☆☆)
14位 : The Köln Concert
(1975年)
14位は、ジャズピアニストのキースジャレットが主宰した、ソロコンサートのライブアルバム、『The Köln Concert』です。
西ドイツの都市ケルンにて行われたピアノ独奏のコンサートを収録したアルバムです。
しかし、ステージ上にあるのはピアノと椅子とピアニストだけで、そこには譜面はありません。完全即興によるコンサートなのです。キースジャレットによる全てアドリブです。観客の拍手やヤジなど、不確定要素が多く緊張感に包まれる空間で、生きている演奏をしています。
キースの、刹那の思考によって選び抜かれたハーモニーと、和音展開にはアイデアが溢れていて、どこを切り取ってもクラシックな美しい響きです。
この天才的なパフォーマンスの背景には曰く付きのエピソードが混じっているらしく、運命的な録音だと感じさせます。ピアノに触れたことがある人なら誰しも憧れる演奏です。カッコいいし、間違いなく、ハーモニーを極めた者だけが辿り着いた超絶技巧です。たしかに、ムード音楽として消費するには勿体無い感じはします。
全ての音楽の良さを抽象化したような響きで、とても濃密です。ただ、咀嚼するのに時間を使う音楽です。
1. 衝撃 ☆☆☆☆☆
2. 快さ ☆☆☆☆☆
3.インスピレーション☆☆☆☆☆
4. 心地いい ☆☆☆☆☆
5.残留 ☆☆☆☆
(6. 独奏 ☆☆☆☆☆)
13位 : Houses Of The Holy
(1973年)
第13位はイギリスのハードロックバンド、レッドツェッペリンの5枚目のアルバム、『Houses Of The Holy』です。
なんだかんだやって集まった実力派メンバーが結成した、最高(多分)のバンドによる、最高のロックアンサンブルです。息の合った各パートの演奏者が理屈っぽくどんどん展開する曲を完璧に形作る集団の5枚目のアルバムです。
リードギターのリフが、ヴォーカルやベース、ドラムと応酬を繰り広げ、どんどん広がる演奏は、収束の兆しすら見せないとても激しいもので、作曲センスと演奏能力が両立するからこそできる技術です。ストリングスのアレンジですら自分たちで作り上げる才能は、ハードロックバンドという枠組みに収まることのない試みを可能にしています。特に、ジョンポールジョーンズがビートルズでいうジョージマーティンの仕事をしています。このアルバムは、彼らのアイデアが後のアルバムまで、どんどん広がっていく一つの通過点だと思います。"The Ocern"の浮遊感はいつ聴いてもドキドキしてきます。とにかく曲が良くて、演奏も上手い、期待値を越えてくるバンドの代表作です。このジャンルでは最高傑作でしょう。ハードロックを聴きたい気分になったら僕はこれを聴きます。全編に渡って、真似したくてもできない演奏です。いやしかしまじで凄いな。
1.衝撃 ☆☆☆☆☆
2.快さ ☆☆☆☆☆
3.インスピレーション ☆☆☆☆☆
4.心地いい空間 ☆☆☆☆☆
5.残留 ☆☆☆☆☆
(6.リフの力強さ ☆☆☆☆☆)
12位 : McCartney (1970年)
第12位は、ポールマッカートニーのアルバム、
『McCartney』です。
ポールが、ビートルズを脱退するという衝撃的なニュースが、世界中に広がっていったさなかに発表されたソロアルバムで、レットイットビーよりも先に出ました。ポールに向けられるビートルズ解散させたことのバッシングも含めて、当時はこれでもかってほど酷評され、ビートルズの他メンバーにも貶されまくったアルバムですが、僕は再評価を求めますね。背景はともかく、音楽性はすごく高いアルバムです。すべての楽器をポールとリンダで録音した、元祖宅録アルバムにして、わざと音質を落としたようなつくりで、まさにガレージロックの傑作だと思います。pixesのファーストなんかを連想させます。当時の音楽ファンがポールに求めたものが、第2のアビーロードのような重厚なサウンドだったため、このアルバムのラフでオーガニックな構造を理解できずに反発してしまいましたが、そういった人々の期待への裏切りが面白いところです。そもそもアコースティックなサウンドこそがポールのルーツであり、シンセサイザーの装飾が派手だったアビーロードこそが異色作なのです。
このアルバムでのポールの暴れっぷりはジョンよりも極端です。我が道をいく哲学を内包させた不良品のようなサウンドは、アルバムを包みこむ作為的な不安定さは、ビートルしかできない、アンチビートルズ的な行為で愛嬌さえあります。というかそもそも、歌モノも、インストモノも、どちらもメロディがいいです。アコギクラシックとして思い浮かぶナンバー、
"Junk"や"Teddy boy"は特に独創的です。
また、最終曲でキングクリムゾンのパロディをやってるところがポールらしくていいです。
なぜ"Maybe I'm Amazed"をシングルで出さなかったのか?という疑問にこのアルバムの価値が詰まっていると僕は思っています。
1. 衝撃 ☆☆☆☆☆
2. 快さ ☆☆☆☆
3. インスピレーション ☆☆☆☆☆
4. 心地いい空間 ☆☆☆
5.残留 ☆☆☆☆☆
(6.ラフさ ☆☆☆☆☆)
11位 : Ramones (1976年)
第11位は、アメリカのパンクロックバンド、ラモーンズのファーストアルバム、『Ramones』です。
1970年代の後半に、世界を席巻したムーブメント、パンクロックにはやはり、ガンガンしたギターのエネルギッシュな演奏と、下手でも威勢のいいヴォーカルが必要条件です。
このアーティストはNYパンクの代表格で、このデビューアルバムで既にパンクロックの型を作ってしまったので、後のバンドはラモーンズのフォロワーみたいなものです。メロディアスなヴォーカルと攻撃的なギターリフや2分ほどで終わる短い曲をまとめたこのアルバムの音をパンクロックと呼ぶのです。ラモーンズの特徴としては歌メロがなかなかいいというものがあって、乱暴ではない、まぁまぁ健全なラブソングをやっています。不器用さも垣間見えますし、パンクらしい不完全さによる良さがでていて個人的に好きです。
また、とても不良っぽいファッションや、だるそうなアートワーク、アンダーグラウンドなかっこよさは、概念としてのパンクそのままです。パンクの煩さは、ロンドン的の理屈っぽさというよりは、感覚が鋭いニューヨークのファッション的だなぁと感じてしまいます。
この人らの攻撃性に比べると、60年代のロックはまだ優しいムード音楽かも知れません。
1. 衝撃 ☆☆☆☆
2. 快さ ☆☆☆☆
3. インスピレーション ☆☆☆
4. 心地いい空間 ☆☆☆
5. 残留 ☆☆☆
(6.パンク ☆☆☆☆☆)
10位 : The Wild, The Innocent & The E Street Shaffle (1973年)
記念すべきかも知れない第10位は、アメリカのシンガーソングライターのブルーススプリングスティーンと、彼のバックバンド、Eストリートバンドによるアルバム、『The Wild, The Innocent & The E Street Shaffle』を選出します。
70年代から現在に至るまでアメリカで活躍している、しゃがれ声がカッコいいブルーススプリングスティーンが発表した2ndアルバムです。
70年代にはさまざまなミュージシャンが生まれましたが、ブルーススプリングスティーンが他とは違っていたのは、ジャズの楽団のようなブラスバンドを率いていて、彼らとともに演奏するのは、豪快なロックサウンドだったというところです。しかし、いくら派手なバンドを拵えていても50年代のような古くさい曲を演奏しているようじゃ、ただ大袈裟で陳腐なバンドとなってしまいますが、ブルーススプリングスティーンのロックは、全く新しいパワフルなものでした。
一曲が7〜8分と、割と長いのに、聴いてて飽きさせないエネルギッシュな歌と、芯のあるバックの演奏は物凄くロックです。曲の構成も単なるAメロBメロの繰り返しではなく、めまぐるしく展開しまくる構造で、一曲が一つの物語のようです。一つの曲にいろいろなアイデアが組重なっていて、アップテンポなリズムに乗せてコーラスのフレーズを歌うシーンと、呟くように歌うバラードのシーンが共存している、
"Incident on 57th Street"のような曲はとてもドラマチックで、単なるポップ曲にとどまりません。アルバム全体を通して、フリージャズやクラシックのピアノ曲もフューチャーしていて、なおかつパワフルなロックと共存している凝ったアレンジは、下手なプログレロックバンドのアルバムよりもプログレッシブだと思います。第2のボブディランというイメージを超越している、錚々たるアルバムです。
彼はポピュラー音楽界きってのエンターテイナーの1人でしょう。
1. 衝撃 ☆☆☆☆☆
2. 快さ ☆☆☆☆☆
3. インスピレーション ☆☆☆☆
4. 心地いい空間 ☆☆☆☆
5. 残留 ☆☆☆☆☆
(6. 豪快さ ☆☆☆☆☆)
9位 : Ambient 1 : Music For Airports (1978年)
第9位は、元ロキシーミュージックのメンバーブライアンイーノ制作、『Ambient 1 : Music For Airports』を選出します。
ブライアンイーノが打ち立てた、アンビエントというジャンルはこのアルバムで産声を上げました。そして、知名度、曲のメロディアスさから、その頂点に位置するアルバムだと思います。その内容は、ピアノの演奏やコーラスの多重録音、シンセサイザーを組み合わせて作られていますが、音へのこだわりが相当強いです。この奏でられる音が新鮮で面白いのです。
ピアノ曲といっても、古典的なクラシックの形式でも、ジャズピアノの響きでもない、異なるベクトルの曲調です。ロックバンドの元シンセサイザー奏者で、ソロアルバムの初めの頃はキャッチーなロック曲を作曲していた、ロック畑でのキャリアを持つブライアンイーノが辿り着いたというのが感慨深いです。
アンビエントという音楽ジャンルの明確な特徴は、ビートが非常にゆったりとしているところにあると思います。聴くと心が穏やかになる、と言ったらスピリチュアルな文句になりますが、アンビエントミュージックと名乗るならばリスナーを穏やかな気持ちにさせるという心気があるということです。
日々の生活の中で、僕なんかは、風や、金属の音や動物の音を無視して生きているのだろうなと思うのですが、そのようなノイズとも意識をしない、聞こえているのに聞こえていない音をピアノで表現しているのかなと、このアルバムを聴くと感じます。"音楽"とは一部のスピーカーの周りに限らず、地球上のどこにでもあるのだと想像できます。自然の中にも、また社会人たちが慌てふためく空港のような空間にも無意識にあるでしょう。
集中して聴くのもいいし、聴こえてくる家具のように無視してもいい音楽だと定義されるそうです。伝統、文化的な存在であることを勘案されるムード音楽よりも、無条件でムードに浸れるアンビエントミュージックは、どこか大人な雰囲気の人工的自然音です。
1. 衝撃 ☆☆☆☆☆
2. 快さ ☆☆☆☆☆
3. インスピレーション ☆☆☆☆☆
4. 心地いい空間 ☆☆☆☆☆
5. 残留 ☆☆☆☆☆
(6. 感覚的 ☆☆☆☆☆)
8位 : Still Crazy After All These Years (1975年)
第8位は、アメリカのシンガーソングライター、元サイモン&ガーファンクルのポールサイモンのソロアルバム、『Still Crazy After All These Years 』です。
まぁ、これこそが70年代の成熟したルーツロックの名盤ですよ。知る人ぞ知る的なアルバムです。彼の十八番であるカントリーっぽい弾き語り曲だけではなく、民族音楽風のリズム感を取り入れた曲や、落ち着いた一級品のジャズナンバーもある大変バラエティ豊かなアルバムです。
70年代には、邦楽でもアメリカンロックの影響を受けた作品が沢山発表されていて、その内のいくつかは今でも名盤と呼ばれているものがありますが、正直に感想を言えば、このジャンルで本場アメリカンロックには、とても敵わないですね。日本のアーティストがそれらしいものを作っても、ムードが全然違います。アメリカのトラディショナルソングの重みがこのアルバムには誇示されていて、それでも謙虚なサウンドは、感動的です。
これは夕暮れのムード音楽かなぁ、と頭をよぎります。時の過ぎ去りをテーマにした表題曲の儚さは少し寂しいです。
1. 衝撃 ☆☆☆☆
2. 快さ ☆☆☆☆☆
3. インスピレーション ☆☆☆☆
4. 心地いい空間 ☆☆☆☆☆
5. 残留 ☆☆☆☆
(6.パーカッション ☆☆☆☆☆)
7位 : The Return Of The 5000 Lb.Man (1976年)
第7位は、ジャズのマルチプレイヤー、ローランドカークのリーダーアルバム、『The Return Of The 5000 Lb.Man』を選出します。
70年代のジャズといえば、マイルスデイヴィスやその周辺のアーティストが追求した、電子キーボード主体のエレクトロニックジャズやファンクっぽいジャズにまず手が上がるでしょうが、昔ながらのオーガニックジャズもいい作品が生まれています。この大御所ジャズ奏者、ローランドカークのこのアルバムは、そんな70年代の聴きやすいジャズの代表作です。しかし、50年代のシーンとまんま同じではありません。
ピンクフロイドっぽいSEもあれば、人の話し声が聞こえたりします。口笛も楽器の一つとして達者に演奏されています。
こういうアメリカの田舎っぽいジャズは、いかにも集中して聴くことを推奨されるような、「これはジャズという名の芸術作品です!」みたいなアルバムとは違って、気楽に聴けると思います。どこか心のゆとりがあって、気休め程度に楽しめていいです。いかにも、ムード音楽として花丸です。
1. 衝撃 ☆☆☆
2. 快さ ☆☆☆☆
3. インスピレーション ☆☆☆☆
4. 心地いい空間 ☆☆☆☆☆
5. 残留 ☆☆☆
(6.休日感 ☆☆☆☆☆)
6位 : The Wall (1979年)
第6位は、ピンクフロイドの2枚組アルバム、『The Wall』を選出します。
70年代の終わりが近づいたころに、突如現れたやばいブツです。一言でいうなら、完成度の鬼です。70年代最高のロックンロールアルバムでしょう。
コンセプトアルバムだとか、ロックオペラだとかそういう側面より、デヴィッドギルモアの、ありきたりな調和を回避したようなギターの演奏と、ロジャーウォーターズの、カリスマ性のあるヴォーカルこそが評価されるべきしょう。いや、されてるかもですが。そこがとても凄いからザウォールの、一大叙事詩としての風格を保っているのです。破裂しそうでしない、しかしどんどん膨らんでいく風船のような2人の関係性はこのアルバムに緊張感を与えています。物語とは異なり、実際にはピンクは2人いるようです。どちらも曲を書いていて、どちらも優れたソングライターであるためバンド内で実力が拮抗しているのです。どっちか1人が居なかったら、ピンクフロイドは成り立たないはずでしたが、強引に成り立たせているのが面白いです。
それはさておき、ピンクフロイド流のハードロックがここにきて爆発したこのアルバムですが、その内容は谷と山の連続で、とにかくリスナーを振り回します。アクセルとブレーキを上手い具合に交互に踏むのです。聴いてると酔ってしまうような感覚になりますが、その代わり加速度が気持ちいいのです。
ハードロックよりも疾走感がありつつ、ヘヴィメタルより不穏で、とても凶暴なアルバムです。
1. 衝撃 ☆☆☆☆☆
2. 快さ ☆☆☆☆☆
3. インスピレーション ☆☆☆☆☆
4. 心地いい空間 ☆☆☆☆☆
5. 残留 ☆☆☆☆☆
(6.険悪 ☆☆☆☆☆)
これよりTop 5です。
5位 : Chicago Ⅴ (1972年)
第5位には、シカゴ出身のブラスロックバンド、シカゴのスタジオアルバム『Chicago Ⅴ』を選出します。
うーん過小評価されすぎです。このアルバムが名盤ランキングとかに載っているところを一度も見たことがないです。そもそも『シカゴ5』自体聴いたことない人が多数なのではと思います。警鐘を鳴らします。
70年代のロックアルバムの中でとんでもなくプログレッシブです。はい。シカゴはただのポップ曲生産バンドではないですよ。どれくらい凄いかというと、このアルバムを聴いてて途中、プログレロックかジャズかわからなくなるのです。ジャンルの融合どころか、超越です。そんなことがありえました。それがブラスロックの定義だと思います。
今はコロナ下ですけど、今後僕がアメリカを観光に訪れることがあれば、ジャズバーなんかに行きたいと思っていますが、シカゴみたいなロックバンドのライブを見る機会があれば、ブラスロックを体感してみたいなと思った次第です。この音楽はジャズかジャズではないかで、会話が弾むこと間違いなしかと...
1. 衝撃 ☆☆☆☆☆
2. 快さ ☆☆☆☆☆
3.インスピレーション ☆☆☆☆☆
4. 心地いい空間 ☆☆☆☆☆
5. 残留 ☆☆☆☆☆
(6.祝日感 ☆☆☆☆☆)
4位 : Bright Size Life
(1976年)
第4位はジャズギタリスト、パットメセニーのリーダー作『Bright Size Life』を、選出します。
このアルバムも、70年代の4位にふさわしいアルバムです。フュージョンというジャンルで最高峰だと思います。とにかく緻密で、爽やかな澄み切った音が印象深いです。ギターの技術革新が感じられるアルバムなのですが、このアルバム以外にこのエフェクトを使ったギターを聴いたことがなくて、この音は何処に行ったのでしょうか。
収録されている曲は、いかにも"ジャズ"の構成で、即興のパートがあったり、ベース、ドラムソロパートを取り合ったりしていて、ジャズっぽい演奏をしているなと感じられながらも、リードする楽器がトランペットなどの管楽器でないだけで、ムード音楽的要素が普通のジャズとまったく違いますね。受ける印象が別ジャンルのようです。
エレキベースの音もコントラバスとは明らかに異なっていて、めちゃくちゃ新鮮です。ジャコパトリアスがそもそも上手いですし、ハウリングなど、アンプにつないだ楽器にしかできない技術をふんだんに使っていて面白いです。
僕のイメージとしては、朝のムード音楽です。目覚まし時計のアラームに表題曲を設定したいです。クラシック音楽より頭がすっきりしそうな音像です。
3位 : Tubular Bells (1973年)
第3位は、イギリスのミュージシャン、マイクオールドフィールドによる音楽作品、
『Tubular Bell』を選出します。
世俗では"プログレ"とレッテルを貼られていますが、この音楽はプログレではないし、アンビエントでもないし、強いて言うならば、現代クラシックでしょう。レコードのベストセラーに名を連ねるほどの人気で、多分、最も売れた現代音楽のアルバムです。
音色、リズム、メロディが全て独特です。バッハの時代まで遡っても、今まで誰も体感したことも無いムードです。ほんとに背筋がゾクっとします。やばい音楽です。
そもそもチューブラベルとかいう、クラシック音楽での脇役の楽器を主役に添えて、大胆に使ったマイクオールドフィールドのやばいセンスはどうなっているのかと感心しました。シンセサイザーのような新しい機材ならまだしも、古い楽器を使っているのです。
ぶっ飛んだ発想がないと作れない前例のないサウンドで、変なメロディを思いついたのも天才たる所以です。
1. 衝撃 ☆☆☆☆☆
2. 快さ ☆☆☆☆☆
3. インスピレーション ☆☆☆☆☆
4. 心地いい空間 ☆☆☆☆☆
5. 残留 ☆☆☆☆☆
(6.不気味さ ☆☆☆☆☆)
2位 : Killing Me Softly
(1973年)
第2位は、アメリカのR&B歌手のロバータフラックのアルバム、『Killing Me Softly』を選出します。
ま、あれよ、オットナ〜な、R&Bのアルバムってことよ。
1. 衝撃 ☆☆☆☆
2. 快さ ☆☆☆
3. インスピレーション ☆☆☆☆☆
4. 心地いい空間 ☆☆☆☆☆
5. 残留 ☆☆☆☆
(6.嗜む ☆☆☆☆☆)
1位 : 52nd Street (1978年)
第1位は、アメリカのシンガーソングライター、ビリージョエルのアルバム、
『52nd Street』です。
僕が70年代のアルバムランキングの1位に選んだアルバムはビリージョエルです。どうでしょうか、これこそが順当な判断なのではと、個人的に納得するところなんですけども。別に個人的な思い入れがあるわけではないです。好きな女の子がビリージョエル聴いてた、みたいな思い出は別にないです。ロックで、普遍的な美メロのポップ曲こそが僕は正義だと思うし、この『ニューヨーク52番街』はそれに加えて、ジャズのアレンジが輝いているし、曲が死ぬほどいいので1位にしました。個人的にこのアルバムを聴くと元気が出ます。くどすぎないロックとジャズがミソですかね。まぁ、音楽はフィーリングで好き嫌いがありますので。
特に"My Life"は名曲です。ピアノリフが最高です。聴いてみて下さい。
こういう2段にイントロが組まれている曲をビリージョエルは作るのが上手いんですけど、リフのパーツを組み合わせて作曲をするなんて、建築家のようです。ロックの指標だと思います。ぜひ、聴いたことがない人はどこかで、ここぞとベストなタイミングで聴いて見て下さい。それはさておき、ニューヨークはやはり最高です。
1.衝撃 ☆☆☆☆
2.快さ ☆☆☆☆☆
3.インスピレーション ☆☆☆☆☆
4. 心地いい空間 ☆☆☆☆☆
5. 残留 ☆☆☆☆☆
(6.ポップさ ☆☆☆☆☆)
あとがき
どうも、こんにちは。ムード音楽がなんとかの初心を一応貫いて作った70年代アルバムランキングです。純粋に聴いてて爽快なアルバムを選んだつもりです。ただ、このブログのアルバムランキングは70年代の音楽すべてを網羅しています!なんていうタイトルの割に全然70年代の空気感っぽくないリストになってしまいました。なんていうか、たまたま70年代に発表された、時代背景に左右されないサウンドの、個人やバンドによる天才アルバム集。みたいなものなんですよね。ある意味タイムレスな価値があるような気はします。キースジャレットのピアノ演奏は現在でもまったく錆びていないし、ボブマーリーのメッセージは半世紀後でも全然通用します。なのでノスタルジアとか言ってる場合じゃなかったです。70年代とか昔の音楽は、今この世界で、音質がクリアになったこともあり、当時より輝いている気さえします。
80年代のアルバムランキングもいつか.....
了
当ブログ、70年代アルバムランキング一覧表
1位 52nd Street (Billy Joel)
2位 Killing Me Softly (Roberta Flack)
3位 Tubular Bells (Mike Oldfield)
4位 Brite Size Life (Pat Metheny)
5位 Chicago Ⅴ (Chicago)
6位 The Wall (Pink Floyd)
7位 The Return Of The 5000 Lb.Man
(Roland Kirk)
8位 Still Crazy After All These Years
(Paul Simon)
9位 Ambient 1 : Music For Airports
(Brian Eno)
10位 The Wild, The Innocent & The E Street Shaffle (Bruce Springsteen)
11位 Ramones (Ramones)
12位 McCartney (Paul McCartney)
13位 Houses Of The Holy
(Led Zeppelin)
14位 The Köln Concert (Keith Jarrett)
15位 Boston (Boston)
16位 A Song For You (Carpenters)
17位 Aghartha (Miles Davis)
18位 Young Americans (David Bowie)
19位 Burnin' (Bob Marly & The Wailers)
20位 Berlin (Lou Leed)