ノバルティス(Novartis)2024年第3四半期の財務とパイプライン概要

はじめに

ノバルティス(Novartis)は、心血管・腎・代謝、免疫学、神経科学、がん領域の4つの治療分野を中心にイノベーティブな医薬品を開発・提供する企業です。2023年には後発薬部門サンドズ(Sandoz)をスピンオフし、純粋なイノベーティブ医薬品企業へと転換しました。本記事では、2024年第3四半期の業績と主要パイプラインの進捗を取り上げ、成長ドライバーとなった製品や今後の戦略を投資家の視点から分析します。

財務概要

ノバルティスの第3四半期は、主要製品の成長により好調な結果となりました。

  • 総売上: 128億ドル(前年同期比+9%、為替一定換算で+10%)

  • 営業利益: 36.27億ドル(前年同期比+106%、為替一定換算で+123%)

  • 純利益: 31.85億ドル(前年同期比+111%、為替一定換算で+121%)

  • 1株当たり利益 (EPS): 1.58ドル(前年同期比+116%、為替一定換算で+127%)

  • フリーキャッシュフロー: 59.65億ドル(前年同期比+18%)

  • コア営業利益: 51.45億ドル(前年同期比+17%、為替一定換算で+20%) 。

セグメント別売上

  1. 心血管・腎・代謝領域

    • Entresto: 18.65億ドル(前年同期比+26%、為替一定換算で+26%) - 心不全治療薬として米国や欧州、中国で成長が続く。

    • Leqvio: 1.98億ドル(+120%、為替一定換算で+119%) - LDL-Cを効果的に低下させる新薬として世界での展開が進む。siRNA薬です。

  2. 免疫学

    • Cosentyx: 16.93億ドル(+27%、為替一定換算で+28%) - 米国や欧州、成長市場で需要増加。主要適応症に加え、新たに化膿性汗腺炎や静脈内(IV)投与の適応を取得 。

  3. 神経科学

    • Kesimpta: 8.38億ドル(+28%、為替一定換算で+28%) - 自己管理が可能な多発性硬化症治療薬として成長。

    • Zolgensma: 3.08億ドル(前年同期比+1%) - SMA治療薬として55か国で承認、4000人以上の患者に治療提供。

  4. オンコロジー(がん治療)

    • Kisqali: 7.87億ドル(+40%、為替一定換算で+43%) - 乳がん治療薬として米国および国際市場で高い成長。

    • Pluvicto: 3.86億ドル(+51%、為替一定換算で+50%) - PSMA陽性去勢抵抗性前立腺がん治療薬として米国や欧州で成長 。前立腺を認識する抗体に放射性同位体を結合させた新しいタイプの抗癌薬です。注目しています。

パイプラインの進捗

  1. がん領域

    • Kisqali: HR+/HER2-早期乳がん(eBC)での適応がFDAにより承認され、CHMPからもポジティブ意見を獲得。早期乳がんの高リスク患者を対象とした追加適応で、市場拡大が期待される。

    • Pluvicto: 米国でのpre-taxaneのPSMA陽性前立腺がん患者を対象とした適応拡大申請を完了。2025年の新たな市場投入を見込む。

  2. 免疫学

    • Fabhalta: 成人IgA腎症治療薬としてFDAの迅速承認を取得。IgA腎症は患者数が非常に多い疾患ですね。急速な市場展開を目指す。こちらで紹介しています:https://note.com/an_an908/n/n1e05602e68e2 

  1. 神経科学

    • Kesimpta: 自己注射で投与可能なB細胞療法として、需要拡大中。

  2. 心血管・腎・代謝領域

    • Leqvio: LDL-C低下作用が持続する治療薬として、急速に普及。2年で2回の投与で患者管理が可能となり、医療教育も進行中 。

業績と展望

ノバルティスは心血管、がん、免疫学分野での主要製品の成長により、強固な収益基盤を構築しています。2024年のガイダンスはさらなる成長を見込み、売上は二桁成長、コア営業利益はティーンズ後半の成長が予想されています。製品の適応拡大と市場投入の準備が進む中、同社の成長ドライバーは引き続き強力です。

結論と今後の展望

2024年第3四半期、ノバルティスは堅調な業績を記録し、特にがんや心血管領域での成長が顕著でした。KisqaliやPluvicto、Fabhaltaなど新規適応の拡大が進み、主要市場での競争力が高まる中、今後も長期的な成長が見込まれます。

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