Imdelltra (tarlatamab-dlle)が進展型小細胞肺癌の治療薬としてFDAに承認された
Imdelltra (tarlatamab-dlle)が進展型小細胞肺癌の治療薬としてFDAに承認されました。
進展型小細胞肺癌(extensive stage small cell lung cancer, ES-SCLC)とは
小細胞肺癌(SCLC)は、非常に進行が早く、治療が困難な肺癌の一種です。特に進展型(extensive stage)においては、診断時にはすでに他の臓器へ転移していることが多く、予後が非常に悪いとされています。従来の治療法では、初期治療に対する反応があっても、再発することが一般的で、セカンドライン以降の治療選択肢は限られています。
Imdelltra(tarlatamab-dlle)とは
Imdelltraは、Amgenが開発したtarlatamab-dlleを有効成分とする抗体薬です。2024年にFDAに承認され、プラチナ製剤ベースの化学療法後に進行した進展型小細胞肺癌の治療に使用されます。この薬剤は、腫瘍の増殖を制御し、腫瘍のサイズを縮小することが期待されています。
作用機序
Tarlatamabは、DLL3(delta-like ligand 3/デルタ様リガンド3)とCD3をターゲットとする二重特異性抗体です。DLL3は小細胞肺癌細胞に高頻度で発現しており、正常細胞にはほとんど発現しません。TarlatamabがDLL3(癌細胞)とCD3(T 細胞)の両方に結合することで、T細胞を癌細胞に近づけ、T細胞による腫瘍細胞の溶解を誘導し、癌細胞の増殖を抑制します。
臨床試験
Tarlatamabの有効性と安全性は、多施設共同の国際的な第2相試験(DeLLphi-300および301試験)で評価されました (NCT05060016)。この試験では、220名の以前に治療を受けた進展型小細胞肺癌患者が対象となりました。患者は10 mgまたは100 mgのtarlatamabを2週間ごとに静脈内投与されました。
主要評価項目は客観的奏効率(ORR)であり、10 mg群では40%、100 mg群では32%の患者が奏効を示しました。奏効期間の中央値は、10 mg群で4.9ヶ月、100 mg群で3.9ヶ月でした。最も一般的な副作用はサイトカイン放出症候群(CRS)で、10 mg群では51%、100 mg群では61%の患者に発生しました。主に治療サイクル中に発生し、大部分は軽度から中等度の重症度でした。
副作用と注意事項
Tarlatamab治療中に最も一般的な副作用には、サイトカイン放出症候群(CRS)、食欲減退、発熱、便秘、貧血などがあります。重篤な副作用としては、CRSおよび免疫効果細胞関連神経毒性症候群(ICANS)が報告されており、治療中は定期的なモニタリングと適切な管理が必要です。
まとめ
Imdelltra(tarlatamab-dlle)は、進展型小細胞肺癌に対する新たな治療オプションとして注目されています。DLL3をターゲットとするこの免疫療法は、従来の治療法に対して効果が乏しかった患者にも新たな希望をもたらす可能性があります。現在、第3相試験(DeLLphi-304, NCT05740566)が行われており、有効性と安全性がさらに確認されることが期待されます。
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