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GRAFAPEX (treosulfan)が同種造血幹細胞移植の前処置レジメンとしてFDAに承認された
2025年1月21日にGRAFAPEX (treosulfan)が同種造血幹細胞移植の前処置レジメンとしてFDAに承認されました。
造血幹細胞移植における前処置
造血幹細胞移植(HSCT)は、血液悪性疾患をはじめとする様々な疾患に対する根治療法として確立されています。HSCTの成功は、移植した造血幹細胞がレシピエントに生着し、造血機能を再構築できるかにかかっています。そのためには、HSCTの前に、拒絶反応の原因となるレシピエントの免疫系を弱めるための前処置(preparative regimen)が不可欠となります。
従来の前処置は、大量化学療法や全身放射線照射(TBI)を組み合わせるのが一般的でした。これらの治療法は、強力な腫瘍細胞の除去効果と免疫抑制効果を発揮する一方で、重篤な副作用を伴うものでした。近年では、より毒性の低い前処置レジメン(reduced-intensity conditioning: RIC)が開発され、高齢者や合併症を持つ患者さんにもHSCTの適応が広がっています。
GRAFAPEXとは
GRAFAPEX (treosulfan) は、ドイツの製薬企業であるmedac GmbH社が開発・販売している薬剤です。1歳以上の小児および成人患者における急性骨髄性白血病(AML)および骨髄異形成症候群(MDS)に対する同種造血幹細胞移植の前処置レジメンとして、フルダラビンとの併用が承認されました。
作用機序
Treosulfanはアルキル化剤です。アルキル化剤は、DNAのグアニン塩基にアルキル基を付加し、DNA鎖の架橋形成や切断を引き起こすことでDNA複製や転写を阻害します。その結果、細胞周期が停止し、最終的にはアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮します。
Treosulfanは、他のアルキル化剤とは異なり、プロドラッグとして作用します。投与されたtreosulfan自体は活性を持たず、体内で代謝されることによって活性を持つ化合物へと変換されます。
臨床試験
GRAFAPEXの有効性は、オープンラベルのランダム化第3相試験(MC-FludT.14/L試験、NCT00822393)によって検証されました。この試験では、AMLまたはMDSの成人患者570人を、GRAFAPEX+フルダラビン併用群(n=280)と、ブスルファン+フルダラビン併用群(n=290)にランダムに割り付けて前処置を行い、同種造血幹細胞移植を実施しました。
GRAFAPEX群は、ブスルファン群と比較して、全生存期間(OS)において有意な改善を示しました(ハザード比0.67、95%CI:0.51-0.90)。この結果は、層別解析においても一貫しており、GRAFAPEXがalloHSCTの前処置として有効であることが示唆されました。
安全性・副作用について
臨床試験において、GRAFAPEX投与群で多く見られた有害事象(20%以上)は、筋骨格系の痛み、口内炎、発熱、吐き気などでした。また、グレード3または4の非血液系の臨床検査値異常としては、γGTP、ビリルビン、ALT、AST、クレアチニンの上昇が報告されています。PRESCRIBING INFORMATIONに記載されているデータからは有害事象の発生率は、ブスルファン投与群と大きく変わらない可能性があります。
まとめ
GRAFAPEXは、AMLおよびMDSに対するalloHSCTの前処置として、新たな選択肢となる可能性を秘めています。臨床試験の結果は、GRAFAPEXが従来の治療法と比較して、生存期間の改善をもたらす可能性があることを示唆しています。
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