Iqirvo (elafibranor)が原発性胆汁性胆管炎(PBC)の治療薬としてFDAに承認された

Iqirvo(elafibranor)が原発性胆汁性胆管炎(PBC)の治療薬としてFDAに承認されました。

原発性胆汁性胆管炎(PBC) とは

PBCは、肝臓内の胆管に炎症が起こり、破壊される疾患で、女性に多く認められます。胆管に炎症が起こる仕組みとしては自己免疫学的な機序が考えられています。胆管が破壊されることで胆汁が胆管を通じて流れなくなり、周囲の肝細胞が破壊されます。
PBCの主な症状には、胆汁の鬱滞による痒み、疲労感、黄疸などがあります。病気が進行すると、肝硬変や肝不全に至る可能性があります。胆汁の成分でもあり、様々な肝疾患で利用されているウルソデオキシコール酸が第一選択薬ですが、効果が十分でない場合はフィブラート系の薬物が利用されていました。

Iqirvoとは

Iqirvoは、Ipsen社が開発したelafibranorを有効成分とする経口薬です。ウルソデオキシコール酸の効果が不十分、または忍容性のないPBC患者が適応です。現時点では胆汁鬱滞の生化学的マーカーである血液中のアルカリホスファターゼ(ALP)値を低下させる作用が確認されています。

作用機序

Elafibranorとその主要な代謝物であるGFT1007は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニストとして機能します。具体的には、PPAR-α、PPAR-γ、およびPPAR-δを活性化します。PPARは体内の代謝を正常に保つ機能があります。Elafibranorには、肝臓内マクロファージに作用して炎症を抑制する作用、線維化を抑制する作用、胆汁酸の合成を抑制する作用などの様々な作用を通じてPBCの病態を改善させると考えられています。

臨床試験

Elafibranorの有効性は、多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験(NCT04526665)で評価されました。この試験にはウルソデオキシコール酸の効果が不十分か、忍容性のないPBC患者161人が参加し、Elafibranor 80mgまたはプラセボを少なくとも52週間投与されました。エンドポイントとして生化学マーカーとしてALPの改善、および生化学マーカーの正常化、痒みの改善が設定されました。生化学マーカー(ALP)の改善が認められたのはelafibranorを投与された患者で51%、プラセボ群で4%でした。またALPの正常化がelafibranorを投与された患者の15%で認められたのに対し、プラセボ群では0%でした。WI-NRSスコアで評価した痒みの改善はelafibranorとプラセボで優位な違いは認められませんでした。
 Elafibranorを投与された患者では消化器系の副作用(腹痛、下痢、悪心・嘔吐)が多く認められましたが、その程度は軽度でした。筋障害の指標として利用される血液中のクレアチンキナーゼ値の上昇がelafibranorを投与している患者で多く認められました。全体としてはelafibranorの安全性プロファイルは良好でした 。

結論

Iqirvo(elafibranor)は、ウルソでは効果が不十分なPBCの新たな治療オプションとして、患者の生活の質を向上させる可能性があります。
 同じ論文中のback-to-backでCymabay社のPPARδ特異的アゴニストseladelparが同様の結果を示しており、seladelparは痒みスコアも有意に改善したことが発表されています。こちらの薬物は以前、NASHの治療薬として開発された際に肝障害作用がある可能性が示されていますが、その点がクリアできたら非常に有望と考えられます。

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