YORVIPATH (palopegtertiparatide)が副甲状腺機能低下症に対する治療薬として承認された

副甲状腺機能低下症とは

副甲状腺機能低下症は、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌が不十分になる内分泌疾患です。PTHは、骨や腎臓に働きかけて体内のカルシウムとリンのバランスを維持する役割を持っており、その不足により、低カルシウム血症と高リン血症が出現します。低カルシウム血症は筋肉の痙攣や不安・うつなどの精神症状を引き起こします。また、血液中のリン濃度の増加により、カルシウムリン酸塩が脳や血管壁、皮膚、腎臓などで石灰化を引き起こします。
 副甲状腺機能低下症の従来の治療法は、活性型ビタミンDを投与することでカルシウムの消化管での吸収を促進することでした。一方、PTHの作用が不足したままで血液中のカルシウム濃度が正常化することで、尿中のカルシウム濃度が増加し、尿路結石や腎機能低下を引き起こすことが問題になっていました。

YORVIPATHとは

YORVIPATHはAscendis Pharmaによって開発されたPTHのアナログ(一般名:palopegteriparatide)です。副甲状腺機能低下症が適応疾患です。1日1回の皮下注射で投与され、持続的にPTHが放出されることで24時間体内で安定したPTH濃度を保つことができます。

作用機序

YORVIPATHの作用機序は、副甲状腺ホルモン(PTH)の不足を補うことで、血液中のカルシウムとリンの濃度を正常化させることです。PTHは、直接的に骨からのカルシウム放出と腎臓でのカルシウム再吸収を促進し、腎臓におけるビタミンD活性化を介して間接的に腸でのカルシウム吸収を増加させます。従来の活性型ビタミンDと異なり、PTHの生理的効果を模倣することで、腎臓への副作用のリスクを低減しつつ、血中カルシウム濃度を正常範囲内に維持します。

既存のPTHアナログとの違い

PTHアナログとしてはこれまでもteriparatide(フォルテオ)やabaloparatide(オスタバロ)が骨粗鬆症の治療薬として承認され、臨床で利用されています。PTHはYORVIPATHのように持続的に作用させた場合と、骨粗鬆症治療薬として断続的に作用させた場合には、人体に与える作用が異なります。特に骨に対しては持続的に作用させた場合には骨からのカルシウムの遊離を促進して血中カルシウム濃度を増加させるのに対し、断続的に作用させた場合には骨へのカルシウムの沈着を促進して骨粗鬆症に有効です。
YORVIPATHはその一般名にteriparatideが入っていることからもわかるように、teriparatideにTransCon技術でPEG(ポリエチレングリコール)を可逆的・一時的に結合させた構造です。体内に投与された後、PTHが徐々に放出されて血中に移ることで持続的にPTHの血中濃度を保つことができます。

臨床試験

YORVIPATHの有効性と安全性は、PaTHway試験というランダム化二重盲検プラセボ対照試験で評価されました (NCT04701203)。
この試験は、慢性副甲状腺機能低下症の成人を対象に、52週間YORVIPATHまたはプラセボが投与されました。投与開始時点で活性型ビタミンDの投与には介入せず、その後の血中カルシウム濃度によって活性型ビタミンDの投与量が調整されました。
 YORVIPATHを投与された患者では、95%の患者が従来の活性型ビタミンDまたはカルシウム補充による治療が必要なくなり、86%の患者で正常な血中カルシウム濃度を維持できました 。
 また、YORVIPATHを投与された患者では平均して9.3 mL/min/1.73 m²の推定糸球体濾過量(eGFR)の増加が見られ、特に腎機能が低下している患者ではさらに大きな改善が認められました 。

安全性・副作用

YORVIPATHの主な副作用には、注射部位反応(39%)、血管拡張関連の症状(28%)、頭痛(21%)、下痢(10%)などが挙げられます。また、高カルシウム血症(8%)が報告されており、特に治療初期にリスクが高いことが示されています 。その他、ラットに投与した場合、teriparatideには骨肉腫のリスクがあることがわかっています。ヒトでのリスクは観察されていません 。

YORVIPATHは慢性副甲状腺機能低下症に対する有効な治療法であり、従来の治療法よりも患者の生活の質を向上させる可能性があります。

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