LIVDELZI (seladelpar)が原発性胆汁性胆管炎(PBC)の治療薬としてFDAに承認された

2024年8月14日、LIVDELZI (seladelpar)が原発性胆汁性胆管炎(PBC)の新規治療薬としてFDAに承認されました。

原発性胆汁性胆管炎(PBC)について

 原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、肝臓内の小胆管に炎症が発生し、それに伴う胆汁のうっ滞が引き起こされる自己免疫疾患です。病態が進行すると、肝細胞の破壊、線維化、最終的には肝硬変や肝不全を引き起こします。PBCの主な症状は、胆汁の鬱滞による痒み、疲労感、黄疸などです。倦怠感や掻痒感のために生活の質が著しく低下します 。
 PBCの治療の第一選択薬であるウルソデオキシコール酸(UDCA)は、胆汁酸の流れを改善し、肝臓への毒性を緩和する効果があるとされています。しかし、UDCA単独では十分な治療効果を得られない患者も多く、そうした患者には追加の治療が必要となります。

LIVDELZIとは

 LIVDELZI(一般名:seladelpar)は、CymaBay Therapeutics社が開発したPPARδアゴニストです。CymaBay社は現在、Gilead Sciences社に買収され、LIVDELZIの製造販売はGilead Sciences社が行います。適応は、UDCAに対する反応が不十分なPBC患者に対してはUDCAとの併用で、UDCAを使用できない患者に対しては単剤で利用されます。

作用機序

 Seladelparは、PPARδ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-デルタ)を活性化します。PPARδの活性化は、肝臓での胆汁酸合成の抑制をもたらし、胆汁酸が過剰に蓄積するのを防ぎます。具体的には、Seladelparの作用によって肝細胞から線維芽細胞成長因子21(FGF21)が放出され、胆汁酸生成の鍵となる酵素CYP7A1の発現を抑制するメカニズムが報告されています(J Biol Chem. 2022 Jul;298(7):102056.)。また、PPARδの活性化がマクロファージやKupffer細胞を抗炎症的なM2表現型に誘導することで、肝臓の慢性炎症の抑制にも寄与するメカニズムも報告されています。

臨床試験

 LIVDELZIに有効性と安全性は、RESPONSE試験と呼ばれる第3相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験で評価されました(NCT04620733)。
この試験には、193名のPBC患者が参加しました。93.8%の患者がUDCAを治療薬として利用していました。主要評価項目である血清中のALP(アルカリホスファターゼ)値改善は、LIVDELZIを投与された患者の61.7%で認められ、プラセボ群の20.0%と比較して有意に高い割合でした。また、ALPの値が25%の患者で正常化しました(プラセボ群は0%)。
 さらに、LIVDELZI投与群では掻痒感(かゆみ)の有意な軽減が認められました。特に掻痒感が中等度から重度の患者においては、LIVDELZI投与群では6か月時点で−3.2ポイントのスコア改善が確認されたのに対してプラセボ群では−1.7ポイントに留まりました。
 先日紹介したIQIRVOの記事でも記載しましたが、LIVDELZIは有意な「かゆみスコアの改善」が認められている点が大きいのではないかと思います。

安全性・副作用

 LIVDELZIは、一般的には良好な安全性プロファイルを示しました。主な副作用として頭痛、腹痛、吐き気、腹部膨満感、めまいが報告されています。重篤な副作用の発生率はプラセボ群と同等であり、重大な安全性上の懸念は認められませんでした。
 IQIRVOでは筋障害の指標として利用される血液中のクレアチンキナーゼ値の上昇が多くの患者で認められましたが、LIVDELZIではそのような報告は認められませんでした。

LIVDELZIは、PBC患者に新たな治療の希望をもたらす薬剤です。従来の治療で効果が不十分であったり、強い掻痒感に苦しむ患者に対して有効な治療選択肢として期待されます。

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