ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)2024年第3四半期の財務とパイプライン概要

はじめに

 ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)は、HIV、ウイルス性肝炎、COVID-19、およびがん治療分野で革新的な治療法を提供する製薬企業です。本記事では、2024年第3四半期の財務実績およびパイプラインの進捗について解説し、今後の成長見通しを提供します。今回の報告では、HIV、肝疾患、腫瘍治療領域の売上とパイプラインの主な進展に焦点を当てています。

財務概要

2024年第3四半期、ギリアドは堅調な業績を示しました。

  • 総収益:75億ドル(前年同期比+7%)

  • 総製品売上(Veklury除く):68億ドル(前年同期比+7%)

  • 希薄化後1株当たり利益(Non-GAAP EPS):2.02ドル(前年同期比減少、2023年第3四半期は2.29ドル) 。著者追加:減少の要因は研究開発費用税金費用の増加。特にLivdelzi(seladelpar)のグローバルロイヤリティの買い取りに関連する3億2,000万ドルの費用、進行中のコラボレーションに関連する支払いによるもの。

  • 2024年度ガイダンス:製品売上は278億~281億ドル、Non-GAAP EPSは4.25~4.45ドルを見込む 。

セグメント別売上

HIV

  • 総売上:51億ドル(前年同期比+9%)。Biktarvyの売上増加と高い需要が成長を牽引。

  • Biktarvy:35億ドル(前年同期比+13%)。市場でのリーダーシップを維持し、米国シェアは49%以上に 。

  • Descovy:5億8,600万ドル(前年同期比+15%)。PrEP(HIV予防)としての需要増加が貢献 。

肝疾患

  • 総売上:7億3,300万ドル(前年同期比+4%)。ウイルス性肝炎治療薬の需要増が主な要因 。

腫瘍

  • 総売上:8億1,600万ドル(前年同期比+6%)。Trodelvyが成長を牽引。

  • Trodelvy:3億3,200万ドル(前年同期比+17%)。乳がん治療における標準治療薬としての位置付けが成長を支援。

  • Cell Therapy:4億8,500万ドル(前年同期比変わらず)。YescartaおよびTecartusの需要が引き続き高い。著者追加:CAR-Tの市場がかなり成熟してきました。コストがかかる治療薬なので、競争が激しくなると採算が大丈夫なのか心配です。

Veklury(COVID-19治療薬)

  • 総売上:6億9,200万ドル(前年同期比+9%)。COVID-19入院率の上昇が寄与 。著者追加:PfizerのPaxlovidも想定以上の売上でした。ワクチン忌避の恩恵?

パイプラインの進捗


HIV

  • Lenacapavir:Capsid阻害薬という新しい作用機序のHIV治療薬。年2回(!)の投与でHIVの感染を予防する薬物としてフェーズ3試験PURPOSE 2にて高い有効性を確認。年内の米国での承認申請を計画。著者追加:Q2でも触れましたが、驚異的な有効性を示しています。さすが抗ウイルス薬のGileadですね。

肝疾患

  • Livdelzi:原発性胆汁性胆管炎(PBC)の新規治療薬として、2024年8月に米国で迅速承認を取得し、発売開始。欧州での規制当局の決定は2025年初頭に予定 。先ほど記事にしました。

腫瘍

  • Trodelvy:進行性乳がんの治療薬として成長。肺がんの適応拡大に向けた新たなフェーズ3試験も開始 。膀胱癌と非小細胞肺がんに対する治験は中止。

  • Anito-cel(iMMagine-1試験):改良型のCAR-T。再発・難治性多発性骨髄腫の治療薬としてフェーズ2試験で有望な結果を発表。フェーズ3試験も開始予定 。

業績と展望

 ギリアドは2024年通年で製品売上を278億~281億ドル、Non-GAAP EPSを4.25~4.45ドルと予測しています。特にHIV治療薬や肝疾患製品の堅調な売上増加が全体を支え、がん治療薬や細胞療法分野での積極的な展開も続けられています。Lenacapavirの商業化準備や、乳がん治療薬Trodelvyの拡販が今後の成長に寄与する見通しです 。

結論と今後の展望

 2024年第3四半期において、ギリアドはHIVおよびがん治療領域の売上増加、並びにパイプラインの進展により堅調な業績を達成しました。LenacapavirやLivdelziなどの新製品の承認・発売が期待される中、今後も患者や医療提供者に対し、革新的な治療法を提供することを目指しています。

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