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イーライリリー(Eli Lilly)2024年第4四半期および通年の財務とパイプライン概要

はじめに

イーライリリー(Eli Lilly and Company、以下リリー)は、糖尿病、肥満、神経科学、自己免疫疾患、腫瘍学などの領域で革新的な医薬品を開発・提供するグローバル製薬企業です。本記事では、2024年第4四半期および通年の財務実績とパイプラインの進捗について詳細に解説します。

財務概要

2024年第4四半期の業績

  • 総収益:135.3億ドル(前年同期比+45%)

  • 営業利益:51.5億ドル(前年同期比+116%)

  • 純利益:44.1億ドル(前年同期比+101%)

  • GAAP EPS:4.88ドル(前年同期比+102%)

  • 調整後EPS(Non-GAAP EPS):5.32ドル(前年同期比+114%)

売上の大幅な成長は、糖尿病・肥満治療薬 Mounjaroおよび Zepbound の需要増加によるものです 。

2024年度通年の業績

  • 総収益:450.4億ドル(前年比+32%)

  • 営業利益:128.9億ドル(前年比+100%)

  • 純利益:105.9億ドル(前年比+102%)

  • GAAP EPS:11.71ドル(前年比+102%)

  • 調整後EPS(Non-GAAP EPS):12.99ドル(前年比+106%)

通年の成長も Mounjaro、Zepbound の販売増が主因であり、Verzenio(乳がん治療薬)などの売上増加も寄与しました 。

セグメント別売上

糖尿病・肥満領域

  • Mounjaro(GLP-1/GIP受容体作動薬、2型糖尿病)Q4:35.3億ドル(前年同期比+60%)/FY:115.4億ドル(前年比+124%)

  • Zepbound(GLP-1/GIP受容体作動薬、肥満・体重管理)Q4:19.1億ドル(前年同期比NM)/FY:49.3億ドル(前年比NM)

  • Trulicity(GLP-1受容体作動薬、2型糖尿病)Q4:12.5億ドル(前年同期比-25%)/ FY:52.5億ドル(前年比-26%)

腫瘍領域

  • Verzenio(CDK4/6阻害剤、乳がん)Q4:15.6億ドル(前年同期比+36%)/ FY:53.1億ドル(前年比+37%)

  • Jaypirca(BTK阻害薬、マントル細胞リンパ腫)Q4 :1.14億ドル

免疫領域

  • Taltz(抗IL-17A抗体、乾癬・関節リウマチなど)Q4:9.5億ドル(前年同期比+21%)/FY:32.6億ドル(前年比+18%)

  • Omvoh(抗IL-23p19抗体、クローン病)Q4:0.57億ドル

  • EBGLYSS(抗IL-13抗体、アトピー性皮膚炎)Q4: 0.2億ドル

神経科学

  • Kisunla(抗アミロイド抗体、アルツハイマー病)Q4:0.08億ドル

その他

  • Humalog(インスリン製剤)Q4:6.2億ドル(前年同期比+69%)/FY:23.2億ドル(前年比+40%)

  • Jardiance(SGLT2阻害剤)Q4:11.9億ドル(前年同期比+50%)/FY:33.4億ドル(前年比+22%)

期待されるパイプライン

  • Imlunestrant(選択的エストロゲン受容体分解薬):Verzenioと併用した場合のER+/HER2-乳がんに対する有効性が示され(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2410858)ました。2025年の承認申請が予定されており、市場投入が期待されています。

  • Orfoglipron(非ペプチドGLP-1受容体作動薬):2型糖尿病、肥満症に対する第3相試験が進行中です。

  • Retatrutide(GIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬):2型糖尿病、肥満症に対する第3相試験が進行中です。第2相試験の結果からはGLP-1受容体作動薬におけるクラス最強の有効性が期待されます。

  • Olomorasib(KRASG12C阻害薬):KRASG12C変異陽性非小細胞肺がんに対する第3相試験が進行中です。

  • Remternetug(抗アミロイドβ抗体):初期アルツハイマー型認知症に対する第3相試験が進行中です

そのほか、Mounjaroの閉塞性睡眠時無呼吸症候群、心不全、心血管疾患予防をはじめとした承認済み薬剤の適応拡大を目的とした臨床試験が多く実施されています。

業績と展望

リリーは2024年に Mounjaro と Zepbound の急成長に牽引され、大きく売上を成長させました。Mounjaroの売り上げは2024年に100億ドルを突破しました。Mounjaroの影に隠れていますが、Verzenio や Jardiance も安定した成長を見せました。GLP-1受容体作動薬市場の競争激化が予想される中、リリーはOrfoglipron(経口GLP-1作動薬)やRetatrutide(GIP/GLP-1/グルカゴン作動薬)などの差別化されたパイプラインを展開し、競争優位性を確保する戦略を進めています。


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