EBGLYSS (lebrikizumab-lbkz)がアトピー性皮膚炎の新規治療薬としてFDAに承認された

EBGLYSS (lebrikizumab-lbkz)がアトピー性皮膚炎の新規治療薬としてFDAに承認されました。

アトピー性皮膚炎について

 アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis:以降AD)は、慢性的で再発性の炎症性皮膚疾患で、強いかゆみを伴う皮膚病変(紅斑、丘疹、掻きむしることによるびらん、苔癬化)が特徴です。
 ADの病態生理には皮膚バリアの異常と免疫系の活性化が重要な役割を果たしています。ADの病態に特に関与する免疫系細胞はII型ヘルパーT(Th2)細胞で、インターロイキン(IL)4やIL5, IL13などのサイトカインを放出して炎症を惹起します。これにより好酸球や肥満細胞、好塩基球などの炎症細胞が皮膚に動員され、かゆみや組織の損傷を引き起こすヒスタミン、プロテアーゼ、その他の炎症性メディエーターを放出します。Th2が放出するサイトカインにはかゆみの発生に重要なIL31も含まれています(NEMLUVIO (nemolizumab)参照)。
 IL13は、ADの病態において中心的な役割を果たすサイトカインです。IL-13は、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンなどの皮膚バリアタンパク質の発現を抑制することで、皮膚バリアの完全性を損ないます。IL-13はまた、皮膚細胞や周囲の線維芽細胞、免疫細胞に作用して炎症を増幅させます。

EBGLYSSとは

 EBGLYSS(lebrikizumab-lbkz)は、Eli Lilly社で開発されたIL-13を標的としたモノクローナル抗体です。12歳以上で体重が40kg以上の中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者に使用されます。従来の外用薬による治療で効果が不十分な場合や、外用薬が使用できない場合に適応されます​。

作用機序

EBGLYSSの作用機序は、IL-13のシグナル伝達を阻害することに基づいています。
 LebrikizumabはIL-13に高い親和性を持って結合し、IL-13受容体への結合を阻害します。IL-13による皮膚バリアの障害や炎症の増幅が抑制され、症状を軽減させます​。
 ADが適応疾患のIL13抗体薬としては他にSanofi/Regeneronが開発したDUPIXENT(デュピクセント、dupilumab)、LEO Pharmaが開発したADTRALZA(アドトラーザ、tralokinumab)が既に承認販売されています。  
 DUPIXENTはインターロイキン受容体IL4Rαに対する抗体です。IL4RαはIL4受容体複合体とIL13受容体複合体の両方に含まれているため、IL4シグナルとIL13シグナルの両方を阻害します。ADTRALZAはEBGLYSSと同じIL13に対する抗体です。LebrikizumabはtralokinumabよりIL13への親和性が高くて離れにくく、IL13シグナルをより効果的に抑制します。いという特徴があります。また、lebrikizumabはIL13と結合した後でIL-13Rα2に結合し、細胞内にとりこまれて分解されるというユニークな作用も示されています(Dermatol Ther (Heidelb). 2023 Jul; 13(7): 1535–1547.:Lillyの研究者が著者なのでCOIに注意が必要です)。

臨床試験

EBGLYSSの有効性と安全性は複数の臨床試験(ADvocate1(NCT04146363)、ADvocate 2(NCT04178967)、ADhere(NCT04250337))で検証されています。

 ADhere試験は211人のAD患者を対象として行われたランダム化二重盲検プラセボ対照試験です。Lebrikizumabまたはプラセボが16週間にわたって投与され、低〜中強度の外用ステロイドと併用した場合の有効性が評価されました。主要評価項目である、医師による皮膚病変の全般的評価尺度 Investigator’s Global Assessment scale for AD (IGA) score(IGAスコア:0から4までで4が最も重症)が0、1または2ポイント以上の改善を認めた患者はlebrikizumab群で41.2%に達したのに対し、プラセボ群では22.1%にとどまりました。また、皮膚症状が認められる面積と重症度のスコアであるEczema Area and Severity Index (EASI)スコアが75%以上改善(EASI-75)した患者の割合はlebrikizumab群で69.5%に達したのに対し、プラセボ群では42.2%にとどまりました。

 ADvocate1とADvocate2試験は同じデザインのランダム化二重盲検プラセボ対照試験で、lebrikizumabを16週間投与した後の有効性がプラセボ群と比較されました。ADvocate1試験では、lebrikizumab群の患者の43.1%がIGAスコア0または1または2以上の改善を示し、EASI-75も58.8%に達しました。一方のプラセボ群ではそれぞれ12.7%および16.2%でした。ADvocate2試験でも、同様にlebrikizumab群の33.2%がIGAスコア0または1または2以上の改善を示し、EASI-75も52.1%に達しました。一方のプラセボ群ではそれぞれ10.8%および18.1%)でした。

 なお、lebrikizumabの投与間隔を16週目以降、4週間へと延長しても十分な有効性が確認されました。こちらも既承認薬と比べた優位性といえるでしょう。

安全性・副作用

臨床試験における主な副作用は、結膜炎(4.8%)、頭痛(4.8%)、高血圧(2.8%)、注射部位反応(2.8%)、およびヘルペス感染(3.4%)でした​。いずれも軽度から中等度であり、重大な副作用は稀でした。Lebrikizumab群で特に多く認められた副作用は、角膜炎・結膜炎、好酸球血症などで、これは他のIL13を標的とした薬物でも認められる副作用です。安全性は他のアトピー性皮膚炎治療薬と同等かそれ以上であると考えられています​​。

アトピー性皮膚炎は多くの分子標的薬の開発が進んでいます。EBGLYSS (lebrikizumab)がその中でどのようなプレゼンスを示すことができるか楽しみです。

いいなと思ったら応援しよう!

PharmaUpdates
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!