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ノボノルディスク(Novo Nordisk)2024年第4四半期および通年の財務とパイプライン概要

はじめに

ノボノルディスク(Novo Nordisk)は、糖尿病、肥満、希少疾患、心血管・新興治療分野に焦点を当てたグローバル製薬企業です。GLP-1受容体作動薬を中心とした治療薬で市場をリードし、2024年には約45.2百万人の患者に治療を提供しました。本記事では、2024年第4四半期および通年の財務実績とパイプラインの進捗について詳細に解説します。

財務概要

2024年第4四半期の業績

  • 総収益:DKK 856.83億(前年同期比+30% at CER)

  • 営業利益(EBIT):DKK 367.37億(前年同期比+37% at CER)

  • 純利益:DKK 282.3億(前年同期比+29%)

  • 希薄化後EPS:DKK 6.34(前年同期比+29%)

2024年度通年の業績

  • 総収益:DKK 2,904億(前年比+25%、CERベース+26%)

  • 営業利益:DKK 1,283.39億(前年比+25%、CERベース+26%)

  • 純利益:DKK 1,009.88億(前年比+21%)

  • 希薄化後EPS:DKK 22.63(前年比+22%)

  • フリーキャッシュフロー:DKK -14,707百万(前年は+68,326百万)

売上の大幅な成長は、特にGLP-1ベースの糖尿病および肥満治療薬によるものです。一方で、CDMO(医薬品開発製造受託機関)であるCatalentの買収により、ノボノルディスクの生産能力が拡大する一方で、買収に伴う費用がフリーキャッシュフローに影響を与えました。また、この買収に関しては業界内での競争環境への影響を懸念する声もあります。

分野別売上

糖尿病・肥満治療

  • 糖尿病および肥満ケア全体:Q4: DKK 79,978百万(前年同期比+31% at CER)/ FY: DKK 2,718億(前年比+26% at CER)

  • GLP-1糖尿病治療薬:Q4: DKK 42,173百万(前年比+12% at CER)/ FY: DKK 1,491.25億(+22% at CER)

    • Ozempic(GLP-1受容体作動薬):DKK 33,853百万(前年比+12% at CER)/FY: DKK 1,203.42億(+26% at CER)

    • Rybelsus(経口GLP-1受容体作動薬):DKK 6,917百万(前年比+18% at CER)/ FY: DKK 233.01億(+26% at CER)

  • インスリン製品(Total insulin): Q4: DKK 15,887百万(+36% at CER)/FY: DKK 553.73億(+17% at CER)

  • 肥満治療薬:Q4: DKK 21,406百万(+91% at CER)/ FY: DKK 651.46億(前年比+57% at CER)

    • Wegovy(GLP-1受容体作動薬):DKK 19,866百万(前年比+107% at CER)/FY: DKK 582.06億(+86% at CER)

    • Saxenda(GLP-1受容体作動薬):DKK 1,540百万(前年比-3% at CER)/FY: DKK 69.40億(-32% at CER)

希少疾患

  • 希少疾患全体:Q4: DKK 5,705百万(+25% at CER)/ FY: DKK 186.39億(前年比+9% at CER)

    • 希少血液疾患:Q4: DKK 3,398百万(前年比+16% at CER)/FY: DKK 121.38億(+3% at CER)

    • 希少内分泌疾患:Q4: DKK 1,923百万(前年比+53% at CER)/FY: DKK 49.93億(+31% at CER)

糖尿病・肥満治療領域ではGLP-1受容体作動薬が引き続き売上の主要ドライバーとなっており、特に肥満治療薬市場での急成長が目立ちます 。

期待されるパイプライン

糖尿病・肥満・代謝領域

  • CagriSema(GLP-1/GIP二重作動薬):2型糖尿病および肥満症に対する第3相試験が進行中。REIMAGINE-4試験では、CagriSemaとEli LillyのMounjaro(チルゼパチド)を直接比較するhead-to-head試験が実施されています。

  • Amycretin(GLP-1/アミリン受容体作動薬):2型糖尿病および肥満症に対する第2相試験が進行中。

希少疾患領域

  • Mim8(凝固因子第IXa/X二重特異性抗体):血友病Aを対象とした第3相試験がFRONTIER 2試験が完了しています。ヘムライブラ(emicizumab)と同じ作用機序の薬剤です。

  • Etavopivat(選択的赤血球ピルビン酸キナーゼ活性化薬):鎌状赤血球症を対象とした第3相試験が進行中です。

心血管・新興治療分野

  • Ziltivekimab(抗IL-6抗体):MASH、動脈硬化性心血管疾患、慢性腎不全、心不全、急性心筋梗塞などを対象とした第3相試験が進行中です。第2相試験では、動脈硬化や炎症に関与するバイオマーカーであるhsCRPの顕著な低下が確認されました。

  • Semaglutideの適応拡大を目指した心血管疾患やMASH、アルツハイマー病に対する有効性を評価する複数の第3相試験が進行中です。

業績と展望

ノボノルディスクは2024年において、糖尿病および肥満治療市場での優位性をさらに強化しました。特に肥満治療薬Wegovy®の急成長が業績の鍵を握りました。糖尿病領域ではOzempic®およびRybelsus®が引き続き堅調に成長し、新規製品のAwiqli®が市場に投入されました。Eli LillyのMounjaro/Zepboundとの競争が続いており、特に北米市場では市場シェアを巡る競争が激化しています。

結論と今後の展望

ノボノルディスクは、糖尿病・肥満治療領域でのリーダーシップを維持しながら、心血管や希少疾患領域にも進出を続けています。特に肥満治療薬市場の成長が今後の業績を牽引すると考えられます。一方で、急速な成長に伴う生産能力の拡張と供給安定性の確保が課題となる可能性があります。Catalent買収による生産能力の拡張が、供給制約の解消や市場成長にどのように貢献するかが注目されます

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