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Bristol Myers Squibb(BMS)2024年第4四半期および通年の財務とパイプライン概要
はじめに
Bristol Myers Squibb(BMS)は、腫瘍学、免疫学、心血管、神経科学、血液疾患などの治療領域に注力するグローバルなバイオ医薬品企業です。同社は革新的な医薬品を開発・提供することで、重篤な疾患と闘う患者を支援しています。本記事では、BMSの2024年第4四半期および通年の財務実績とパイプラインの進捗について詳細に解説します。
財務概要
2024年第4四半期の業績
総収益:123.4億ドル(前年同期比 +8%、為替調整後 +9%)
純利益(GAAPベース):7200万ドル
GAAP EPS:0.04ドル(前年同期比 -95%)
調整後EPS(Non-GAAP EPS):1.67ドル(前年同期比 -2%)
第4四半期の収益増加は、成長ポートフォリオ(Opdivo、Reblozyl、Breyanzi、Camzyos、Yervoy、Opdualag など)の高い需要によるものでした。
2024年度通年の業績
総収益:483億ドル(前年比 +7%、為替調整後 +9%)
GAAP EPS:-4.41ドル(前年の3.86ドルから赤字転落)
調整後EPS(Non-GAAP EPS):1.15ドル(前年の7.51ドルから -85%)
通年の業績では、成長ポートフォリオの売上拡大が貢献した一方で、Revlimid、Pomalyst、Sprycel、Abraxane などのレガシー製品へのジェネリック競争の影響が収益減少の一因となりました。
セグメント別売上
腫瘍領域
Opdivo(抗PD-1抗体、様々ながん):Q4: 24.8億ドル(前年同期比 +7%)/ FY: 93.0億ドル(前年比 +7%)
Yervoy(抗CTLA-4抗体、様々ながん ):Q4: 6.8億ドル(前年同期比 +22%)/ FY: 25.3億ドル(前年比 +16%)
Opdualag(抗LAG-3抗体 + 抗PD-1抗体):Q4: 2.5億ドル(前年同期比 +34%)/ FY: 9.3億ドル(前年比 +48%)
Revlimid(セレブロン E3 リガーゼモジュレーター、多発性骨髄腫他):Q4: 13.4億ドル(前年同期比 -7%)/ FY: 57.7億ドル(前年比 -5%)
Pomalyst/Imnovid(セレブロン E3 リガーゼモジュレーター、多発性骨髄腫):Q4: 6.9億ドル(前年同期比 -7%)/ FY: 35.5億ドル(前年比 +3%)
OpdivoとYervoyの併用療法が特に成長を牽引し、新たにOpdivo Qvantig(皮下投与製剤)が米国で承認されたことも今後の収益向上要因となります。
血液領域
Reblozyl(TGFβ結合タンパク(赤血球成熟促進)、骨髄異形成症候群に伴う貧血):Q4: 5.5億ドル(前年同期比 +72%)/ FY: 17.7億ドル(前年比 +77%)
Breyanzi(CD19 CAR-T、B細胞リンパ腫):Q4: 2.6億ドル(前年同期比 +162%)/ FY: 7.5億ドル(前年比 +106%)
心血管領域
Eliquis(血液凝固第X因子阻害、抗凝固薬):Q4: 31.9億ドル(前年同期比 +11%)/ FY: 133.3億ドル(前年比 +9%)
Camzyos(選択的ミオシン阻害、肥大型心筋症治療薬):Q4: 2.2億ドル(前年同期比 +153%)/ FY: 6.0億ドル(前年比 +161%)
免疫領域
Sotyktu(TYK2 阻害、乾癬):Q4: 0.8億ドル(前年同期比 +32%)/ FY: 2.5億ドル(前年比 +46%)
Orencia(CD80/86結合タンパク、関節リウマチ治療薬):Q4: 10.0億ドル(前年同期比 +3%)/ FY: 36.8億ドル(前年比 +4%)
Sotyktu は2025年以降、乾癬に加えて関節リウマチやシェーグレン症候群などの適応拡大が期待されます。
神経・精神領域
Cobenfy(M1/M4ムスカリン受容体作動薬、統合失調症):Q4: 0.1億ドル(新)
売上はまだ小さいですが、統合失調症治療に数十年ぶりに出現した新薬なので掲載します。BMS社はアルツハイマー病や双極性障害、自閉症スペクトラム障害などへの適応拡大を計画しており、「十年以上にわたり数十億ドル以上の売り上げをあげる可能性がある」と考えています。従来の統合失調症治療薬と差別化できる長期予後のデータが待ち望まれます。
期待されるパイプライン
AR-LDD(選択的アンドロゲン受容体分解薬・拮抗薬):転移性の去勢抵抗性前立腺がんに対する第3相試験が進行中です。
Golcadomide/Iberdomide/Mezigdomide(セレブロン E3 リガーゼモジュレーター):多発性骨髄腫に対する第3相試験が進行中です。Revlimid, Pomalyst, Imnovidの後継薬という位置付けです。
Milvexian(血液凝固第XI因子阻害薬):虚血性心疾患、心房細動、脳卒中二次予防を目的とした複数の第3相試験が進行中です。
Admilparant(LPA1拮抗薬):特発性肺線維症に対する第3相試験が進行中です。
Obexelimab(抗CD19/Fcγ受容体IIb二重特異性抗体):IgG4関連疾患に対する第3相試験が進行中です。
Arlo-cel(GPRC5D CAR-T):多発性骨髄腫に対する第3相試験が進行中です。
業績と展望
BMSは2024年を通じて、成長ポートフォリオの拡大に成功し、特にReblozyl、Breyanzi、Camzyos、Opdualag の売上増加が顕著でした。
Opdivoは依然としてBMSの主力製品ですが、MSDのKeytrudaが特に肺がん領域で圧倒的なシェアを維持し、競争が激化しています。免疫療法市場の成熟に伴う価格圧力も課題です。
BMSは、Yervoyとの併用療法やLAG-3阻害薬Opdualagの推進に加え、皮下投与製剤Opdivo Qvantigの承認を取得し、利便性向上を図っています。さらに、消化器がんや腎細胞がんへの適応拡大を進め、成長の維持を目指しています。さらに、Revlimid、Pomalyst、Sprycel などのレガシー製品へのジェネリック圧力が続いており、2025年も厳しい市場環境が予想されます。
2025年の業績ガイダンス においては、総収益が455億ドル(前年比-6%) とやや減少する見込みが示され、これは主にレガシー製品の売上減少の影響とされています。
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