アッヴィ(Abbvie)2024年第3四半期の財務とパイプライン概要

はじめに

アッヴィ(AbbVie)は、免疫、腫瘍、神経科学、および眼科領域を含む医薬品開発で世界的にリーダーシップを発揮している製薬企業です。本記事では、2024年第3四半期の財務実績および開発パイプラインの進捗について解説し、同社の投資家に向けた将来展望を明らかにします。今四半期の報告では、製品別の売上分析に重点を置き、主要な製品群ごとにパフォーマンスを評価します。

財務概要

2024年第3四半期において、アッヴィは堅調な成長を示しました。

  • 総収益:144億6,000万ドル(前年同期比+3.8%)

  • 純利益:15.61億ドル(前年同期の17.78億ドルから減少)

  • 1株当たり利益 (EPS):調整後希薄化EPSは3.00ドル(前年同期は2.95ドル)

  • 2024年度EPS見通し:調整後希薄化EPSのガイダンス範囲を10.90ドル~10.94ドルに引き上げ

セグメント別売上

  1. 免疫領域

    • Humira:22億2,700万ドル(前年同期比-37.2%)。特に米国市場での売上が41.6%減少しましたが、国際市場では比較的安定。

    • Skyrizi:Risankizumab(抗IL23A抗体)。日本ではスキリージとして販売されています。32億500万ドル(+50.8%)、新規適応症の追加により需要が増加。

    • Rinvoq:Upadacitinib(JAK阻害薬)。日本ではリンヴォックとして販売されています。16億1,400万ドル(+45.3%)、関節リウマチやアトピー性皮膚炎の適応拡大が影響。

  2. 腫瘍領域

    • Imbruvica:8億2,800万ドル(前年同期比-8.8%)、米国での価格競争と国際市場での利益配分により売上が低下。

    • Venclexta:6億7,700万ドル(+14.8%)、血液がん治療においての市場拡大。

    • Elahere:1億3,900万ドル、2024年からの新製品で、好調なスタートを切りました。

  3. 神経科学領域

    • Botox Therapeutic:8億4,800万ドル(+13.4%)、ボトックス治療薬の需要が引き続き堅調。

    • Vraylar:8億7,500万ドル(+16.6%)、新たな適応症と市場での普及により成長。

    • UbrelvyおよびQulipta:4億4,500万ドル(+15.3%)、片頭痛治療薬としての需要が安定。

  4. エステティクス(美容)

    • Botox Cosmetic:6億7,100万ドル(+8.2%)、美容医療分野での強い需要が続く。

    • Juvederm:2億5,800万ドル(-19.7%)、特に国際市場での競争激化により売上が低下。


パイプラインの進捗

  1. 神経科学

    • Tavapadon:パーキンソン病治療薬として、TEMPO-1試験において主要エンドポイントを達成し、さらなる承認申請の準備が進行中。

    • Vyalev:進行性パーキンソン病患者向けの新しい経皮投与治療薬としてFDA承認を取得。

  2. 腫瘍領域

    • Elahere:卵巣がん治療薬として、欧州での販売承認を取得。

    • Teliso-V:非小細胞肺がん治療薬としてFDAへの生物製剤ライセンス申請を実施中。

  3. 免疫および皮膚科

    • Skyrizi:潰瘍性大腸炎の新たな適応症として欧州で承認を取得。市場におけるさらなるシェア拡大が期待されています。


業績と展望

アッヴィは免疫、腫瘍、神経科学分野での成長により、2024年通年の収益ガイダンスを引き上げています。総収益は約610億~640億ドル、調整後1株当たり利益は10.90ドル~10.94ドルを見込んでおり、堅実なコスト削減プログラムによる利益率改善も視野に入れられています。また、Cerevel社の買収完了により、神経科学ポートフォリオのさらなる拡充が進む見込みです。


結論と今後の展望

2024年第3四半期、アッヴィは主要製品の強い成長、特にSkyriziやRinvoqの売上増加、神経科学ポートフォリオの強化を背景に堅実な業績を示しました。新薬の開発進展および国際展開の推進によって、長期的な成長基盤が強化されています。投資家にとっては、アッヴィの今後の拡張と新製品投入による収益向上が期待される状況です。

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